療法士に見る新たなキャリア支援のかたち
言語聴覚士(Speech and Language Therapist:ST)を目指す学生や新人療法士たちは、新生児の摂食障害から成人の嚥下障害まで、幅広い専門分野の中から自分の進路を選ぶ必要があります。しかし、限られた実習機会では、これらの多様な領域を十分に体験することは困難です。
イギリスの研究者たちはこの課題に対し、スピードデート*1の手法を応用した「メンタリング・サーキット」という革新的なアプローチを考案しました。オンラインで実施されるこのプログラムでは、学生や新人療法士が短時間で複数の専門家と対話し、様々な臨床領域への理解を深めることができます。
「従来の臨床実習では、学生が幅広い専門分野を体験し、知識を交換する機会が限られていました。これに対処するため、私たちは学生と新人療法士がインサイトを得て人脈を広げるためのオンラインの機会を提供する『メンタリング・サーキット』を試験的に実施しました」と研究者たちは説明しています。
*1スピードデート:短時間(通常数分間)で多数の異性と次々に会話する出会いの場。参加者は一定時間ごとに相手を変えて会話を続け、多くの人と短時間で知り合う機会を得る。この概念をキャリア支援に応用したのが「メンタリング・サーキット」である。
6つの専門領域を巡る「10分間の旅」
2021年8月に実施されたこのパイロットプログラムでは、Zoomプラットフォームを活用し、成人急性期ケア、コミュニティサービス、主流および特別支援学校、新生児嚥下障害、トランスジェンダー音声支援*2といった6つの異なる専門分野で働くSTが「メンター」として参加しました。
それぞれのメンターには個別のブレイクアウトルームが割り当てられ、学生や新人療法士からなる「メンティー」グループが10分ごとに各ルームをローテーションする形式で行われました。メンティーは専門家の日常業務、その分野の課題や魅力、キャリア準備のアドバイスなどについて質問できます。
*2トランスジェンダー音声支援:トランスジェンダーの方が自認する性別に合った声や話し方を獲得するための専門的支援。声の高さの調整やコミュニケーションスタイルの訓練などが含まれる。
参加者の声から見えた効果
プログラムには15名のメンティー(67%が学生、33%が新人療法士)が参加し、