29日、第24回「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」を開催し、大学附属病院本院における特定機能病院制度の見直しに向けた具体的な基準設計の検討を本格化させることを確認しました。
前回議論の整理を概ね了承、次段階へ
今回の検討会では、第23回検討会(2月26日)で提示された「特定機能病院のあり方に関するこれまでの議論の整理」について概ね了承を得たことを受け、今後の進め方について具体的な道筋が示されました。
整理案では、大学病院本院について「基礎的基準」と「発展的(上乗せ)基準」の2段階評価を導入する方向性が確認されました。基礎的基準は現在の承認要件を基本としつつ、医師派遣機能を新たに評価軸として追加します。発展的基準では、各病院が自主的に実施している高度な取り組みを評価し、結果を公表する仕組みを構築します。
医師派遣機能の重要性を強調
検討会では、複数の委員から医師派遣機能の重要性が強調されました。
吉村健佑委員(千葉大学医学部附属病院次世代医療構想センター長)は、「4本柱の中で医師派遣、医師配置の観点が新たに盛り込まれたことは注視すべき」と評価しました。「大学病院本院以外は今日示された様々な資料からある程度質が異なると見て取れる。基礎的基準の重みづけが重要な論点」と指摘しました。
神奈川県健康医療局の山崎元靖委員は、都道府県の立場から「大学病院本院といわゆるナショナルセンターや他の病院との位置づけは分けて考えていく方向でよい」との見解を示しました。
地域実情を踏まえた複合指標の検討
今後の基準設計では、地域の実情によって基準達成が著しく困難とならないよう配慮することが重要な論点となります。
福岡国際医療福祉大学の松田晋哉座長は、「地理的な広がりや疾病的な広がり、治療圏の評価なども入るのかもしれない。多軸で評価することを検討していただければ」と述べ、複合的な評価指標の必要性を強調しました。
支払い側からは制度の厳格化を要求
健康保険組合連合会の松本真人委員は書面意見で、「大学病院本院かどうかにかかわらず、特定機能病院は広域の拠点として他の医療機関では対応困難な医療を幅広く提供し、先進性と網羅性の両方を満たすことが重要」と基本姿勢を示しました。
その上で、「保険者が思い描く特定機能病院のあるべき姿に必ずしも合致しない病院が散見される」として、大学病院本院の基礎的基準と同じレベルで高度な医療技術の開発評価、研修機能を兼ね備えることが不可欠との厳格な見解を表明しました。
代理出席した健康保険組合連合会の伊藤参考人も、「絶対値だけでなく割合で見るとか、切り口を変えるといった工夫で対処することもある」としつつ、「制度見直しにより地域医療に支障が出てはいけないが、経過措置は必要最低限の期間と内容に限定すべき」と、保険者の立場から制度の実効性確保を求めました。
"はしごを外さない"配慮も議論
制度見直しにあたっては、既存の取り組みへの配慮も議論されました。
名古屋大学医学部附属病院の長尾能雅委員は、特定機能病院の医療安全監査委員長としての経験から、「特定機能病院で仮になくなったとして、安全面を縮小して良いというメッセージにならないようにしていただけると監査をしてきた者としてはありがたい」と述べ、経過措置等での丁寧な対応を求めました。
九州大学名誉教授の尾形裕也委員は、「新たな地域医療構想の詳細が明らかになった後に検討する必要があるものも含まれる」との事務局説明について、具体的なタイムラインを確認し、2026年度以降の再検討の可能性が示されました。
次回以降、具体的基準案を提示
厚労省は今後、「基礎的基準」の具体案を提示するとともに、「発展的(上乗せ)基準」の具体的指標も示す予定です。その際、地域等における前提条件を勘案した値の算出や、複数の値を統合した指標等の考え方も併せて検討します。
また、指標算出に必要な実績報告等についても見直しを行い、必要に応じて国による特定機能病院を対象とした調査を実施し、結果の公表も検討するとしています。
今回の制度見直しは、2040年頃を見据えた医療提供体制の変化に対応するもので、大学病院本院の地域医療における役割をより明確化し、適切に評価する制度設計を目指しています。
なお、同日会議では大学病院本院「以外」の特定機能病院の実態や承認要件の再検討も本格的に議論された。次の記事ではその議論の詳細を紹介します。