厚生労働省が発表した「最近の医療費の動向(MEDIAS)」令和6年度1月分のデータによると、リハビリテーション関連の医療費が3か月連続で全体医療費を大幅に上回る伸び率を示しています。本記事では、11月・12月からの継続的なトレンド分析を踏まえ、PT・OT・STおよび医療機関経営者にとって重要な最新動向を解説します。
※本記事では公開データに基づく客観的分析に加え、一部推定値を含みます。推定値については根拠を明記しています。
医療費全体の動向とリハビリテーション料の継続的高成長
令和7年1月の概算医療費総額は3.8兆円(前年同月比+3.8%) となり、12月の+3.3%から伸び率が上昇しました。
リハビリテーション料は推定+4.8%の高い伸びを維持。3か月連続で全体医療費の増加率を大幅に上回っています。
リハビリテーション料と全体医療費の月次推移比較
月 | リハ料伸び率 | 全体医療費伸び率 | 差 |
---|---|---|---|
11月 | +7.2% | +2.2% | +5.0pt |
12月 | +5.4%(推定) | +3.3% | +2.1pt |
1月 | +4.8%(推定) | +3.8% | +1.0pt |
【注】リハビリテーション料の推定について: 1月の推定値(+4.8%)は、11月確定値(+7.2%)を基準とし、関連指標(筋骨格系疾患+3.2%、整形外科診療所+4.1%、後期高齢者医療費+5.2%)および季節変動パターンを総合的に勘案して算出しています。
基礎的診療指標の改善継続
1日当たり医療費: 前年同月比+2.1%(12月:+1.7%、11月:+1.5%) 受診延日数: 同+1.7%(12月:+1.6%、11月:+1.4%)
両指標ともに3か月連続で上昇傾向 にあり、医療機関全体の稼働率向上が継続していることが確認できます。
リハ対象疾患の推移
疾病分類別医療費において、リハビリテーション対象疾患は以下のような推移を示しています。
筋骨格系および結合組織の疾患
- 1月: +3.2%(入院外)
- 12月: +2.5%(入院外)
- 11月: 堅調な伸びを維持
損傷・中毒・外因の影響
- 1月: +3.8%(入院外)
- 12月: +2.8%(入院外)
- 11月: +10.7%(入院)で最大の伸び率を記録
特に注目すべきは、損傷・外因分野で11月の入院での大幅増(+10.7%)の影響が、外来にも波及していることです。 冬季の転倒・骨折増加に加え、平均在院日数の短縮化(11月データで23.9日)により、入院から外来への継続的なリハビリテーション需要が高まっています。
高齢者医療費の構造的変化と年齢層別分析
後期高齢者医療費は前年同月比+5.2% と高い伸び率を維持し、11月の+7.3%からは若干鈍化したものの、依然として全体平均を大幅に上回っています。
年齢層別の詳細分析では、85-90歳層で顕著な変化 が見られます:
年齢層別医療費の前年同月比較(1月分析)
年齢層 | 1月伸び率 | 12月比較 | 特徴 |
---|---|---|---|
75-80歳 | +5.8% | +0.5pt上昇 | 安定的な高成長 |
80-85歳 | +6.1% | -0.6pt低下 | 高水準を維持 |
85-90歳 | +4.9% | +4.4pt上昇 | 大幅な急増 |
90歳以上 | +4.2% | +1.2pt上昇 | 継続的な増加 |
85-90歳層での+4.4ポイントの急激な上昇 は、超高齢者層における医療ニーズの質的変化を示しており、従来の機能回復中心から、生活の質(QOL)向上と地域生活継続支援へのパラダイムシフトが求められています。
医療機関種類別動向:入院医療への集約化傾向
医療機関種類別の動向では、11月から継続する入院医療への集約化傾向 が1月も継続しています。
病院部門
- 医科病院計: +3.9%(12月:+3.4%、11月:+4.9%)
- 200床以上病院: 継続的な微増傾向
診療所部門
- 医科診療所計: +2.3%(12月:+1.7%)
- 整形外科診療所: +4.1%(12月:+3.6%)
- 個人診療所: 11月に-7.0%の大幅減から回復傾向
入院・外来の二極化現象の変化
11月に「入院+4.9%、外来-0.7%」という明確な二極化が見られましたが、1月には状況が変化しています。
- 入院医療費: 引き続き高い伸び率を維持
- 外来医療費: マイナス成長からプラス成長に転換
出典・参照資料
- 1.厚生労働省「最近の医療費の動向(MEDIAS)」令和7年1月分
- 概算医療費総額:3.8兆円(前年同月比+3.8%)
- 1日当たり医療費:+2.1%、受診延日数:+1.7%
- 2.厚生労働省「最近の医療費の動向(MEDIAS)」令和6年12月分
- リハビリテーション料推定+5.4%(基準データ)
- 3.厚生労働省「最近の医療費の動向(MEDIAS)」令和6年11月分
- リハビリテーション料確定値+7.2%
- 損傷・中毒・外因の影響(入院)+10.7%
- 4.推定値算出根拠
- リハビリテーション料1月推定値(+4.8%):11月確定値、関連指標との相関関係、季節変動パターンを基に算出
- 今後の確定値発表により数値の修正が生じる可能性があります
※本記事の推定値は、厚生労働省公表データを基にした独自分析であり、今後の正式発表により修正される可能性があります。
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