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リハ等の専従要件を緩和へ──中医協総会

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2025年12月3日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会が開催され、次期診療報酬改定に向けた議論が本格化しています。今回は、医療現場の働き方改革に直結する「専従要件」の緩和や、健康診断後の受診ルールの明確化、そして先日公表された医療経済実態調査結果に対する支払側・診療側双方の見解など、今後の医療経営を左右する重要テーマが集中的に審議されました。

当日の議論の様子を、主要な論点とダイジェストに分けてお伝えします。

「専従要件」緩和へ議論進む、検診同日の「再診料算定不可」も明確化

医療現場の負担軽減と効率化を目指し、施設基準における「専従要件」の見直しが議論されました。

厚生労働省は、医療安全対策加算や感染対策向上加算などの専従者について、業務に支障がない範囲で院内の他業務に従事することを可能にする案や、地域包括ケア病棟などの専従リハビリ職が退院支援業務を行う場合に院外活動を認める案を提示しました。

江澤委員は、医療安全や感染対策は責任を持った対応が不可欠だとした上で、「一切他の業務をしてはいけない」「他の人と分担してはいけない」といった硬直的な理解は適切ではなく、必要な範囲内で柔軟に判断すべきだと述べました。太田委員は、専従者が担える業務の拡大や、複数人で専従業務を分担できるようにする提案に賛成し、人口減少下での医療提供体制維持の観点から、より大胆な見直しも検討すべきだと主張しました。点数ごとに「算定に必要な業務」を定義し、その実施を軸に評価する「プロセス・アウトカム評価」への転換にも言及しました。

また、松本委員は、限られた人材の有効活用や業務分担の重要性を認めつつ、加算で評価している業務に支障が出ないことや責任の所在が曖昧にならないことなど、運用面での配慮を求めました。

そのほか、健康診断と同日に保険診療を行う場合のルールについても整理案が示されました。健康診断で異常が見つかった場合などに、同日に同じ医療機関で治療を開始した場合、「初診料だけでなく再診料も算定できない」ことを明確化する方針です(後日の受診であれば算定可)。

支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「検診に引き続き関連する疾患で保険診療を行った場合には、初診料だけでなく再診料も算定できないことはぜひ明確化していただきたい」と賛意を示しました。

医療経済実態調査への見解:支払側「メリハリある対応を」、診療側「存続の危機」

11月26日に公表された第25回医療経済実態調査の結果を受け、支払側・診療側双方が見解を発表し、次期改定に向けたスタンスの違いが浮き彫りとなりました。

支払側は、一般病院が赤字である一方、診療所や保険薬局は黒字を維持している点に着目しました。松本委員は、「病院と診療所・薬局では損益差額や費用構造に差がある」と指摘し、「令和8年度診療報酬改定では、こうした経営状況の差異や、機能分化・連携を通じた経営の健全化を念頭に、メリハリのある対応が不可欠である」と述べ、一律の引き上げを牽制しました。

対する診療側は、物価高騰と賃上げの影響による経営の厳しさを強調しました。日本医師会の長島公之委員は「病院・診療所ともに経営の悪化は深刻であり、存続が危ぶまれる状況が明白になった」と強い危機感を表明。「病院はすでに瀕死の状態。診療所も約4割が赤字であり、これ以上少しでも逆風が吹けば経営が立ち行かなくなる」と述べ、緊急かつ十分な対応を求めました。

また、日本薬剤師会の森昌平副会長は、薬局について「3割弱が赤字に陥っており、極めて厳しい経営状況にある」とし、日本歯科医師会の大杉和揚常務理事も歯科診療所の厳しい実態を訴えました。

【ダイジェスト】入院時食費・光熱水費の引き上げ案、薬価調査速報など

その他の重要トピックをダイジェストでお伝えします。

入院時の食費・光熱水費引き上げ案 昨今の物価高騰を受け、厚生労働省は入院時の食費基準額を「1食あたり40円」、光熱水費(居住費)を「1日あたり60円」引き上げる案を提示しました。診療側の小坂真琴委員(日本医療法人協会副会長)は「40円上がれば今回は妥当かもしれないが、あと2年これで持つのか予見できない」と懸念を示しました。

薬価調査速報:平均乖離率4.8% 令和7年度薬価改定の基礎となる薬価調査の速報値が公表され、平均乖離率は約4.8%でした。

歯科用麻酔が過去最大の「逆ザヤ」 診療側の大杉委員は、歯科用薬剤の平均乖離率がマイナスとなっている現状を指摘。「特に歯科用局所麻酔剤は平成27年から乖離率がマイナスで、いわゆる『逆ザヤ』状態。令和6年は過去最大のマイナス12.5%だ」と窮状を訴えました。

▶︎中央社会保険医療協議会 総会(第632回)

リハ等の専従要件を緩和へ──中医協総会

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