目次
- 4.4年から8.4年へ
- 15年間の推移を並べる
- 他職種と比べてどうか
- この増加は何を意味するのか──4つの仮説
- 年齢階級別に分解する
- 「見かけ上」では説明できない変化
- この記事の限界と注意点
- 参考文献
4.4年から8.4年へ
リハビリテーション専門職の平均勤続年数が、着実に伸びています。
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によれば、2010年(平成22年)に4.4年だった理学療法士・作業療法士の平均勤続年数は、2025年(令和7年)に8.4年に達しました。15年間でほぼ倍増しています。
一般労働者全体の平均勤続年数が約12年であるのに対し、リハ職は長らくその半分以下でした。しかし、その差は着実に縮まっています。
この記事では、15年分の推移データを並べ、他職種と比較し、そして「この増加が本当に何を意味するのか」を統計的に慎重に検証します。
15年間の推移を並べる
まず、データを一覧にします。
賃金構造基本統計調査 一般労働者・企業規模計(10人以上)
H22〜R1は「理学療法士,作業療法士」(2職種)のデータです。R2以降は「理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,視能訓練士」(4職種合算)に区分が変更されており、労働者数の急増は主にこの変更によるものです。勤続年数・平均年齢についても、厳密には同一母集団の連続データではありません。
勤続 4.4年 / 年齢 30.9歳 / 約9.0万人
勤続 4.6年 / 年齢 30.7歳 / 約11.0万人
勤続 5.0年 / 年齢 31.2歳 / 約9.9万人
勤続 4.8年 / 年齢 30.7歳 / 約10.3万人
勤続 4.8年 / 年齢 31.3歳 / 約12.0万人
勤続 5.3年 / 年齢 31.5歳 / 約13.1万人
勤続 5.3年 / 年齢 31.8歳 / 約14.4万人
勤続 5.7年 / 年齢 32.7歳 / 約13.6万人
勤続 6.1年 / 年齢 32.9歳 / 約13.2万人
勤続 6.2年 / 年齢 33.3歳 / 約15.7万人
※R2(2020)より職種区分が変更:「PT・OT」→「PT・OT・ST・視能訓練士」の4職種合算に。調査方法・推計方法の変更も行われています。
勤続 6.5年 / 年齢 33.9歳 / 約23.3万人
勤続 7.4年 / 年齢 35.1歳 / 約23.3万人
勤続 7.3年 / 年齢 34.7歳 / 約22.3万人
勤続 7.4年 / 年齢 35.6歳 / 約25.6万人
勤続 7.8年 / 年齢 35.5歳 / 約25.3万人
勤続 8.4年 / 年齢 36.2歳 / 約28.0万人
出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」各年版。H22〜R1は「理学療法士,作業療法士」、R2以降は「理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,視能訓練士」。労働者数は原統計の「十人」単位を概数に換算。

いくつかの特徴が読み取れます。
第一に、H22からR1までの10年間(4.4→6.2年)より、R2からR7までの5年間(6.5→8.4年)の方が伸びが急です。ただしR2で調査の職種区分が変更されているため、単純な連続データとしては扱えません(後述)。
第二に、平均年齢も30.9歳から36.2歳へと5.3歳上昇しており、勤続年数とほぼ並行して推移しています。グラフで2つの線が連動して見えるのは偶然ではありません。同じ職場に1年留まれば、年齢も勤続年数も1年増える。つまり個人レベルでは両者は構造的に連動します。集団レベルでも、母集団の平均年齢が上がれば、平均勤続年数も上がるのが自然です。これはリハ職に限らず、あらゆる職種で観察される基本的な関係です。
問題は、この連動が「年齢が上がったから勤続年数も自動的に上がっただけ」なのか、それとも「年齢の上昇では説明しきれない定着率の改善がある」のか。この問いに答えるには、年齢階級別の分解が必要です(後のセクションで検証します)。
第三に、労働者数が大きく変化しています。H22〜R1(PT・OTの2職種)では約9万人から約15.7万人に増加し、R2以降はST・視能訓練士が加わった4職種合算で約23万〜28万人となっています。R2前後の急増は職種区分の変更によるものであり、母集団自体が途中で変わっていることに留意が必要です。
他職種と比べてどうか リハ職だけを見ていても、この増加が「普通」なのか「特異」なのかわかりません。同じ賃金構造基本統計調査から、他の医療専門職と一般労働者全体の推移を並べます。 勤続年数の推移 職種間比較(賃金構造基本統計調査) 出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」各年版、JILPT「長期労働統計」。リハ職はH22〜R1が2職種、R2以降が4職種。看護師のR2以降は調査方法変更の影響を含む。 注目すべきは、一般労働者全体の勤続年数がこの15年間でほぼ横ばい(11.8→12.4年)であるのに対し、リハ職は4.4→7.8年(R6時点)と大きく伸びている点です。看護師も7.3→9.4年と伸びていますが、リハ職の伸び幅(+3.4年)の方が大きい。 ただし、ここで平均年齢を無視してはなりません。 平均年齢の推移 職種間比較 リハ職の平均年齢は15年間で4.6歳上昇しており、看護師(+3.7歳)や一般労働者(+約2歳)より大きい。つまり、勤続年数の伸びが大きいのは、平均年齢の上昇幅が大きいことと無関係ではない可能性があります。 これだけでは「勤続年数の増加は年齢構成の変化による見かけ上のものか、それとも実質的な定着率の改善か」は判断できません。この問いに答えるには、年齢階級別の分解が必要です。 この増加は何を意味するのか──4つの仮説 平均勤続年数の増加には、少なくとも4つの解釈がありえます。データを見る前に、これらを整理しておきます。 仮説1:業界の自然な成熟 PT国家資格の制定は1966年ですが、養成校の急増は2000年代以降。有資格者数はこの十数年で大きく増加しており、若い業界が年月を経て平均年齢・勤続年数を高めていく「成熟効果」が生じている可能性があります。 仮説2:定着率の実質的な改善 処遇改善や職場環境の向上により、同じ職場に長く留まる人が増えた可能性。もしこれが主因なら、同一年齢階級でも勤続年数が伸びているはずです。
リハ職 4.4年 / 看護師 7.3年 / 薬剤師 6.5年 / 一般労働者 11.8年
リハ職 4.8年 / 看護師 7.4年 / 薬剤師 7.0年 / 一般労働者 12.1年
リハ職 5.3年 / 看護師 8.0年 / 薬剤師 7.4年 / 一般労働者 12.0年
リハ職 6.2年 / 看護師 8.2年 / 薬剤師 7.9年 / 一般労働者 12.2年
リハ職 7.3年 / 看護師 9.1年 / 薬剤師 9.1年 / 一般労働者 12.3年
リハ職 7.8年 / 看護師 9.4年 / 薬剤師 8.8年 / 一般労働者 12.4年
リハ職 30.9歳 / 看護師 37.5歳 / 一般労働者 約42歳
リハ職 33.3歳 / 看護師 39.5歳 / 一般労働者 約43歳
リハ職 35.5歳 / 看護師 41.2歳 / 一般労働者 約44歳
リハ職 +4.6歳 / 看護師 +3.7歳 / 一般労働者 +約2歳






