自分の本質とは
ー先生が理学療法士になったきっかけを教えていただけますか?
古澤先生 中学生の時にバレーボールで岩手県の代表メンバーになって、そのままバレー目的で高校に進学したのですが,バレーボールばかりやってたもので、いざ部活を引退したときに将来どうするか迷い、先輩が医療系の学校に進学していたことで,自分も医療系に興味を持ちました。
就職して、元々3~5年東京で臨床したら地元(岩手)に帰ろうと思っていたんです。
3年目で帰ろうかどうか迷っているときに、「どうせ辞めるのならば、辞める前に海外のボバースアプローチを見てみよう」となったんです。
ボバース記念病院で働かれていて、その後スイスに渡りクリニックバレンツに勤務され、現在も徒手療法で活躍されている長谷川淳先生が窓口になってくれました。
初めての海外で英語もままならない状況でしたし、何だか迷いながらのクリニックバレンツへの訪問でした。
長谷川先生の治療見学の際になので,「落ち込んでいるのならば山にでも登ってこい!」と言われてバッド・ラガッツのロープウェイ乗り場に行き,大自然を味わったという経験があります。
その時の自分は、本当にとても落ち込んでいたんですよね。
自分の治療が上手くいかないとか、何をしたいのかとか、何だかよくわかんない状態でした。
長谷川先生の勤務するクリニックバレンツを訪問した後、ボバースのシニアインストラクターであるルイス・ラッピッツ先生の病院を訪問しました。
ルイス・ラッピッツ先生とディスカッションをしている際に、「日本はこうです・・・」とか、はっきりしない自分に対して、ドン!と机をたたいて、
「How do yourself think about it ?(お前自身はどう思うんだ?)」と言われました。 怖かったですよ。
自分は自分の出来ることを精一杯やりたい「I want to do my best」と答えたんです.
そしたら,笑顔で「そうだろ?」と.「若いんだからどんどんトライしなさい」と言っていただいて,自分の本質に戻れた感じになったんです.
手技同士の対立
古澤先生 クリニックバレンツで感動したのは,ボバース・PNF・マッケンジー等,それぞれの治療手技の考え方を持った人が同じ施設にいるんですね.
一見,各々の治療手技の意見がぶつかって喧嘩しそうだと思うじゃないですか.
私もそう思ってその病院の職員に質問したんです.
そしたら,「患者さんを良くしたい気持ちはみんな一緒なんだから,喧嘩するわけ無いじゃないか」 と笑いながらの回答が返ってきました。
その時私はまだ3年目だったので,本来はこうあるべきだなと純粋に感じたんです.
その後改めて日本の理学療法を見ていると,小さなことで争っているような気がしてならないんです.
同じカンファレンスをするのであれば,もっといろんな手技主張の中でその患者さんに当てはまったものを提供していくべきだし,ただの自己満足で終わりかねないですからね.
今回の診療報酬改定も,理学療法士による介入効果が評価されるのはFIMだけなのでしょうか.
FIMって基本的な生活の自立度を測る指標ですよね.
じゃあ理学療法士が患者さんに関われるのはそれだけなんですか?
生活を変えていくのも理学療法士の責務のひとつではありますが,それ以外にももっと関われる部分は多いと思います.
なので,ボバースやPNFといった治療手技にかかわらず,もっと広い視野で取り組んでいかなければいけないと思います.
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古澤 浩生先生経歴
平成7年リハビリテーション天草病院入職
平成22年リハビリテーション天草病院リハビリテーション部副部長
平成27年リハビリテーション天草病院院長補佐 リハビリ事業本部部長
埼玉県理学療法士連盟副会長
越谷市リハビリテーション連絡協議会会長
IBITA/JBITA国際ボバースインストラクター