川平法とは | どうしたら麻痺は改善するのか【川平和美先生 | 促通反復療法研究所】

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図21

ボバース・PNFなどを試してみたが...

—— まず、促通反復療法(川平法)について、 知らない読者の方もいるかもしれませんので、簡単にご説明いただけますか?

 

川平先生促通反復療法(川平法)とは患者さんが麻痺した手足を動かそうと努力する時に、その手足の運動に関連した神経路を治療者の事前の操作によって、興奮水準を高めて楽に患者さんが意図した運動を実現できるようにする治療法です。

 

基本100回ずつ行い、反復する興奮伝達によって神経路を強化するということを治療内容に含んでいます。

 

—— 先生が、川平法に辿り着いたきっかけは?

 

図1

 

川平先生:私は、約40年前から脳卒中のリハビリテーション(以下、リハ)に携わってきました。その中で、いわゆる神経筋促通法には、ボバース・PNFなど色々な方法がありますが、それらを色々試しました。

 

色々とやっていく中で、私自身は、これは使えると思ったやり方がある反面、とても使えないと実感したものも幾つもありました。それらを上手く使い分けたつもりでしたが、トータルの成績として見てみると良い成績は得られませんでした。

 

つまり、期待したほど麻痺がよくなりませんでした。約20年ほど前のことですが、その理由はよく分かりませんでした。しかし、京都大学の霊長類研究所あるいはアメリカの国立衛生研究所(NIH)に行って、サルの実験を色々とやる中でヒントを得ました。

 

サルは毎日、実験用の課題を何百回と訓練するんです。毎日訓練して、その課題ができるようになったら色々なデータを取ることをやっていました。それらの経験を通じて、学習、つまり目標の神経路を強化するためには、多くの繰り返しが必要だということを実感しました。

 

当時、一つのパターンを20-30回やればいいとの考えでした。サルの実験を経験して、これは相当な回数をやらないと改善は得られないと気づいて、アメリカ留学から帰った後は一つのパターンにつき100回ずつ反復することにしました。

 

100回を選んだ理由は、1時間の治療時間内に5~6パターンの訓練ができること、運動改善の急性効果が見られることでした。そこまでやると、従来よりずっと治療成績が良く、麻痺の改善もよくなるし、歩行も上手になりました。

 

図2png

 

そういったことから、運動学習、特定の神経路を強化するためには、目標の神経路に興奮を伝える手法(促通)、それを繰り返す手法(反復)の組み合わせが必要になります。

 

だから、操作する治療者も楽に操作できて、患者さんも楽に動かせる方法を工夫しないといけません。現在の促通反復療法はそのような形になっています。

 

NHK番組「脳がよみがえる~脳卒中・リハビリ革命」

—— 私自身、川平法を知ったのが、5年以上前に放送された、NHK「脳がよみがえる~脳卒中・リハビリ革命」という番組でした。あの番組に出演された後、反響はどのようなものだったのでしょうか。

 

川平先生:放送直後から、反響は多くいただきました。

 

分かりやすく言えば、鹿児島大学付属大学病院(本院)、霧島リハビリテーションセンターの電話回線がパンクするほどの問い合わせがありました。それぐらい大変でした。

 

どうしても、霧島リハセンター(回復期26床、一般24床)の受け入れ態勢の中で入院適応を判断しますから、陳旧例の入院の方ですと1ヶ月~1ヶ月半くらいの期間で治療効果が得られそうな患者さんを優先的に対象としています。

 

ですから、重度例で数カ月治療すれば良くなりそうな患者さんであっても、霧島リハセンターとしては、現時点では入院適用はありませんとお断りしています。

 

しかし、入院でない形態でのリハの適用がないと述べているのではありません。

 

促通反復療法のエビデンス

—— 脳卒中治療ガイドライン2015でも、促通反復療法はグレードBと表記されていますね。

 

図3

 

川平先生:はい。

 

エビデンスの中で信頼度が高いのは客観的でバイアスの少ないランダム化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial)です。そういうランダム化比較試験をしても、急性期の患者さんでも促通反復法を持続的電気刺激下でやったほうが通常の治療をやるより麻痺の回復が良い。

 

図4
 

あるいは、回復期病棟の例で比較しても、促通反復法を行ったほうが麻痺も良くなり、FIMで評価したADLの改善も大きい。

 

さらには発症後6ヶ月~1年以上のいわゆる慢性期の症例で比較しても(これはランダム化比較試験はやっていないが)、通常治療よりもはるかに麻痺が良くなる。これらの研究で明らかなように客観的な検証でも、間違いなく促通反復法のほうが従来の治療より優れています。

 

電気刺激や振動刺激の併用で、より麻痺が改善する

—— 促通反復療法(川平法)は、電気療法や振動刺激療法と併用して行っていると伺ったのですが?

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川平先生 促通反復療法(川平法)は強力な治療法なんです。30-40分の治療で麻痺が改善します。しかしながら、さらに強力な治療を作ろうということで、電気刺激や振動刺激を併用する治療を試して効果を確認しています。

 

その併用の理由は二つあります。

 

促通反復療法は目標とする神経路に興奮を繰り返し伝えて神経路の強化を目指していますが、更に効率良く強化するために二つの手法が必要だと考えています。まず、大脳皮質からの興奮を伝えたいわけですが、途中で神経路が切れているわけですよね。

 

そこを超えてきちんと興奮が伝わるようには、一つは大脳からの興奮を強める手法、もう一つは、脊髄など受け手側の興奮水準を高めて反応を良くする手法です。目標の神経路のウォーミングアップです。

 

図6

 

それで、受け手側の興奮水準を上げるという意味で、電気刺激を用いています。運動閾値の電気刺激を入れっぱなしにして感度を上げておけば、弱い大脳からの興奮でもきちんと運動が起こる条件が生まれます。

 

これによって、患者さんが楽に運動することが可能になります。これが持続的電気刺激下の促通反復療法です。これは急性期患者さんで検討しても通常のリハより麻痺の改善が優れています。

 

急性期は脳浮腫や脳血流の変化で麻痺が大きく影響されますから、リハの内容で麻痺の改善に差が付くことはありません。この治療の強力さを裏付けていると考えています。

 

振動刺激を使う理由は、振動刺激を入れると筋紡錘が発火しますから上手く使えば痙縮筋の神経路の興奮を抑え、抑制されていた拮抗筋の神経路の興奮を高めることが出来ます。

 

そうすれば痙縮筋の拮抗筋が弱い大脳からの興奮でも反応してくれます。このようなメカニズムで電気刺激と振動刺激でのウォーミングアップは効果的で、併用下の促通反復療法は非常に強力な治療だと考えています。

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—— どうしても電気療法や振動療法といいますと高価な機器などを使用するイメージがあります。

 

川平先生:リハで用いている機器は様々で、数千万を越える高いものもあるでしょう。しかし、私たちが使っている機器は、まず振動刺激用だと3千円ぐらいです。

 

電気刺激用だと、7万~10万円くらいですね。

 

もちろん、医療用はそれくらいの値段はしますが、家電量販店に売っている家庭用の電気刺激(1万円くらい)でも、医療用ほどではありませんが、効果はあります。

 

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ですから、電気刺激や振動刺激を使って、いかに効率良くウォーミングアップするか。そして、いかに狙った神経路に興奮を伝えるか。この二段階で考えると、そんなに高価な機器を使わずとも効果的な治療は可能です。

 

—— 非常に安価でできる治療だということですね。例えば、回復期病棟ですと、今後、促通反復療法(川平法)+電気療法や振動療法が当たり前になっていくことは考えられますか?

図10

 

川平先生:当たり前になっていくというよりも、私自身、当たり前にしなくてはいけないと思っています。そうではないと、良い治療をしたといえません。間違いなく、この療法を併用したほうが成績が良いのですから。

 

これからは、特に感覚障害を伴う運動障害に対する治療は電気・振動刺激などを併用して治療することが、スタンダードであって、それをしないと「効果的な治療をしていないですね」と言われる時代にしないといけないと思っています。

 

療法士がロボットに置き換わる時代が来る?

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—— 昨今リハビリにロボットを使用するケースが増えてきていますが、その点どうお考えでしょうか?

 

川平先生:ロボットはですね、使う人間が優秀であれば、ロボットを使うと効果があがります。現在のロボットはまだ不十分な点が多いので、使うほうが上手く使いこなせば、相当良い効果が出ると思います。

 

その操作が不十分だと、どんなロボットでも良い効果は出せません。ですから、療法士がロボットに置き換わる時代が来るかといれば、まったくの間違いです。

 

治療者が優秀になってロボットを活かす、そして治療者にとっても、大量の回数を要する運動補助などは、ロボットに任せて、より微細な調整が必要な点を治療者がおこなうといった使い分けが出来れば良いと思います。

 

もう一つは、どうしてもロボットは、「正常」な運動をベースに作られます。しかし、脳卒中や脊髄損傷の患者さんに正常な運動はできません。

 

「正常」ではなく、その人にとって必要な運動へ近づけようとロボットを細かく操作し、同時に患者さんにも指示して、治療者がそれぞれの患者さんに合わせて使いこなすことが重要だと思います。

 

さらには、不具合な点が出てきたら、開発者や研究者に修正の意見を言えることも大事ですね。現状では「使う or 使わない」の選択しかありません。これからは、患者さんの個別性に合わせて、絶妙にロボットを使いこなすことがとても重要になってくるかと思います。

 

この研究所にも、安川電機の促通機能付き上肢訓練装置が導入されています(上写真左)。

 

次のページ>>脳卒中片麻痺患者における非麻痺側リハビリの重要性

 

川平 和美先生 ご略歴

1974年 鹿児島大学医学部 卒業

1988年 鹿児島大学医学部 リハビリテーション医学講座 助教授 (併任 : 霧島リハビリテーションセンター)

1990年 京都大学霊長類研究所 神経生理部門 留学

1991年 National Institute of Health (NIH) 留学

2005年 鹿児島大学大学院 リハビリテーション医学分野 教授

2013年 定年退職

現在:

促通反復療法研究所(川平先端リハラボ) 所長

鹿児島大学 名誉教授

鹿児島大学大学院 客員研究員


国際医療福祉大学大学院 特任教授

藤田保健衛生大学 客員教授

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