プロフェッショナルとは?
ーー 教員の立場として周知していくというのは、一つの武器ですね。
大内先生 そうですね。それが出来る立場にいるということは、ありがたいなと思う部分です。
現役の方もそうですし、これからPTになる人も早いうちに情報を知ってほしいですね。私も卒前からそういう事を知っておきたかったです。
泌尿器と理学療法が遠い世界ではなく、身近な分野であるという認識をもつこと。そういえば授業で「大内が言っていたな」と、学生時代の授業をかけらとしてでも、頭の片隅に置いておいてもらいたいと思っています。
理学療法士の臨床場面では、脊損の排尿・排便障害やパーキンソン病などの中枢疾患の患者さんと出会いますし、その方がトイレが近いなどの問題があることに気がつきます。
泌尿器科に関わる問題が、理学療法士の身近にあることを理解することが大切なのだと思います。
そして、少なくとも排尿、排泄動作の部分ではPTが積極的に介入し、医師、看護師などとチームとして関わることが必要なのだと思います。
ーー これまで、ウィメンズ・メンズヘルス分野を勉強されてきた中で、大内先生のお勧めの参考書は何かありますでしょうか?
大内先生 この分野の参考書は、日本語になっている情報として数が限られています。少しでも、興味があるのであれば英語の参考書にチャレンジしてみることがいいと思います。
オーストラリアにいた頃、第一版を買い、最近第二版が出版されたのですが、骨盤底筋体操の集大成と言われている参考書があります。「Women’s Health in Physical Therapy」という参考書です。
筋骨格系の話や尿失禁の話だけでなく、抱っこの話や昔から語られている情報などを知るツールになると思います。ただ、結構労力がいります(笑)
次に「Evidense-based Physical Therapy for the Pelvic Floor」という参考書です。これも英語ですが、基本的な尿失禁や骨盤臓器脱がなぜ起きるのか、それに対する評価、治療などが書かれています。
最後に「排泄リハビリテーション-理論と臨床」という参考書です。これは日本語です。これは、泌尿器の参考書ですが、排尿・排泄と理学療法、骨盤底筋体操の方法、管理などについて書かれています。
ウィメンズヘルスではなく、排尿・排泄という事に対しての参考書です。これは勉強になるのではないかと思います。
ーー ありがとうございます。最後に、臨床・研究・教員を経験された先生にとって、プロフェッショナルとはなんですか?
大内先生 まだプロフェッショナルの領域には達していないと思いますが、自分がこうありたいと思うことがあります。それは、どんな状況の時も「Do My Best」です。
物事が上手くいっている時は勢いで出来たりする事もありますが、苦境の時でも自分のベストを尽くす。毅然とした態度で、目の前の事に対して自分のベストを尽くせる事がプロフェッショナルではないかと思いますし、そうありたいと思います。
ーー 「そうありたい」という姿勢は、先生の人柄を感じます。色々な経験をされている先生だからこそ、たくさんの人や学生が集まってくるのではないかと感じました。
お知らせ
大内先生 最後に一つ良いですか?
ウィメンズ・メンズヘルス分野において、草の根を広げていく事を考えますと、周知が必要だと思っています。学校に所属している分、学生に知ってもらうのは勿論ですが、今のPTにもっと知ってもらいたいと思っています。
北海道からですと少し遠いですが、H29年度幕張の学術大会では「排尿自立指導料」についての講演が行われます。
排尿指導をチームで関わる事で、保険点数が取れるようになりました。そのチームには、常勤の理学療法士も含まれています。実際に、病院で関わっている先生に講演をしていただきます。学会に来る機会がありましたら、ぜひ聞いていただきたい内容です。
実は、自分の中で決め事がありまして、前泊代はケチらないという事です。名古屋は交通の便が非常に良かったのですが、北海道ではそうもいきません。
前泊代を払ったとしても、それよりさらに大きいものが返って来るのではないかと思っています。書籍代と飛行機代はケチらないぞと(笑)
北海道では、現在小さなグループで「どさんこスタディ」という名前の勉強会があります。月1回くらいの頻度で行っていますので、是非ご参加して頂ければと思っています。
ウィメンズヘルスを現在進行形で、バリバリやられている方を身近に知ってもらえると思います。
目次
【第一回】尿失禁は女性だけの問題ではない
【第二回】腹圧性尿失禁や妊産婦のケア。世界のスタンダードは?
【第三回】なぜ臨床ではなく教員の道に?