東ティモールの住環境
東ティモールには、マンション等はほとんど存在しておらず、木造の平家が多くを占めています。
自分達で材料を集めて家を手作りする場合が多く、家屋内の床は舗装されずに土間となっており、どの家庭にも階段や段差が存在します。
床に座ることは少なく、椅子やベッドを使用します。基本的にトイレとお風呂場が併設されており、屋外に設置されていることも多いです。
浴槽・シャワーのない家がほとんどで、予め水をタンクに溜めておき、そこから洗面器などですくって水浴び(入浴)をします。
トイレも和式のことが多く、用を足した後にタンクからすくった水で流す必要もあります。障害を抱えると生活に苦労する住環境になっています。
現在、国内に障害者支援制度を利用した住宅改修制度はありません。そのため住宅改修は地域の人たちが集まって行う場合があります。
しかし、地域の人々が新しく綺麗な階段などを作っても、一段が約40cmの急勾配のものを作ってしまったり、手すりは設置されなかったりと、障害に即した住環境整備というものは行えておりません。
今後、リハビリ専門職の介入が期待されています。
〔ハリス・ファティンと呼ばれ、トイレとお風呂が併設。タンクに溜めた水を使って水浴び(入浴)・トイレ・洗濯等をこの場所で行う。断水することも多い(佐藤隊員の自宅)〕
東ティモールの福祉用具事情
現在、東ティモールで福祉用具を貸与する場所は、病院またはリハビリテーション施設、地域にある社会局になり、国民は無料で貸与できます。
現在、東ティモール国内には福祉用具を製作・修理している企業はなく、福祉用具の多くは寄贈や輸入に依存していることから、流通の発達していない東ティモールでは首都に施設や福祉用具が集中し、地方に届かないということに多く遭遇します。
特に車椅子は一度故障するとメンテナンスができるスタッフがいないため、地方ではホコリをかぶって使用されていない場面によく遭遇します。
福祉用具の使用例
街中ではポリオや脳卒中の患者を見かけることが多く、ほとんどの人は車椅子や松葉杖・一本杖などを使用して移動しています。
道路状況があまり良くないため、路肩の段差・工事中の穴なども多く、現実的な移動手段としては松葉杖・一本杖が選ばれることが多いです。
首都はまだ比較的道路が整備されているため、車椅子(三輪や手漕ぎのもの)で移動しながら煙草等を売って生活の助けにする人もいます。
障害を抱える人達は、首都にある国立リハビリテーションセンターで車椅子や杖・義肢装具などの福祉用具を無償で貰うことができますが、国内拠点が一か所しかなく地方の必要な患者さんの元に福祉用具は十分に行き渡っていません。
下肢切断の患者でも義足がなく松葉杖を使うことや、脳卒中片麻痺の患者が木を削って作った一本杖で移動することも多くあります。
大家族を抱え、冠婚葬祭といった行事にお金を掛け経済的なゆとりもまだ少ない東ティモールの人達にとって、地方では中々手に入らない福祉用具の優先順位は高くありません。
日本のように既製の福祉用具を使用するよりは、自分達の身の回りに或るものを工夫して使って生活している場合がほとんどです。
〔車椅子を利用して国立リハビリテーションセンターの総務課で働くスタッフのアカイ(ポリオにより3歳から両下肢が麻痺)。舗装されていない道も多く、東ティモールでは上写真のような3輪タイプの車椅子が使用されることが多い〕
〔3輪に改造したバイクを利用して通勤〕
〔プラスチック製の椅子の座面に穴を開け、簡易ポータブルトイレを作成〕
〔自宅の庭の木を切り、一本杖として使用する脳卒中片麻痺患者〕
今回の投稿において、平成28年度1次隊、国立リハビリテーションセンター配属の佐藤央基隊員(作業療法士)に投稿の協力を受けました。
また今回の連載において、PT/OT/POの先輩隊員の方々および東ティモール隊員の協力を受けています。ここに感謝します。
目次
第1弾:東ティモールってどんなところ
第2弾:四肢切断のリハビリが多い理由
第3弾:東ティモールの義肢装具事情
第4弾:東ティモールの住環境
タイ医療現場見学ツアーのお知らせ
【催行日】2017年6月24日~28日
【料金(1名様分)】70,000円 / ホテル4泊
【募集定員】10名様
【申し込み〆切】2017年5月21日
【概要】
日本ではあまり知られていませんが、タイの医療技術は世界的に見てもかなり先進的です 。特に政府主導のメディカルツーリズム推進の効果から、先進医療を求める中東や欧州の富裕層が多くタイを訪れています。
都市部の私立病院では、高級ホテルと見まごうばかりの内装に最先端の医療機器を取り揃え、JCI認証(医療品質や衛生管理に関する国際医療評価機関)を取得している病院は国内で実に37。これは日本の13を大きく超え、アジア最多の数字です。
しかし一方で、圧倒的な医療スタッフの不足や資源の偏りにより、公立病院や地方の病院等、タイ人自身が受診する病院では、決して満足な医療サービスが機能しているとは言えない現実もまたあります。
このツアーをとおして、都市部と地方、私立と公立のそれぞれの病院を見学していただき、実際の格差を肌で感じて頂ければ思います。
経歴
2012年 広島国際大学保健医療学部理学療法学科卒業(現総合リハビリテーション学部リハビリテーション学科理学療法専攻)
2012年 広島赤十字・原爆病院へ入職。
2016年 平成28年1次隊JOCVとして東ティモールバウカウ県のバウカウ県病院にて現在活動中。
2014年 YMCA米子のマレーシアスタディツアーへ参加。
2015年 タイスタディツアーへ参加。