自分よりランクの上の人と会え
ー 中々行動に移せない人も多いと思うのですが、行動に対するマインドは何かありましたか?
石田:まったくなかったです。起業自体が考えていなかったので。今考えたら、そのタイミングごとにいい指導してくれた方がいました。
指導者ってとても大事だと思うんです。起業前は「毎日2人に会え」「週末は4人から5人に会え」と言われ、徹底して取り組みました。
「自分が何をしたいのかを知らない人に0から伝えられるように話せ」「会えないときもあるからそのときは本を読め」とも言われましたね。本は過去にさかのぼって対話できる財産、本であれば坂本龍馬やソクラテスでも話せるだろと。
なので、ノウハウ本よりも自分が好印象を持つ人の本をよく読んでいました。とにかく人に会って、自分の思いを話していました。
また、「なるべく自分よりランクの上の人と会え」と言われていたのを思い出します。
ー かなりの人数とお会いしたのですか?
石田:300人とは直接会って話していると思います。名刺交換だけなら1000人は超えているかもしれません。
できる限り同業種じゃないほうがいい
ー つまり行動しようと思ったとき、自分の思いを確固たるものにするためにいろんな人に会って伝える。結局はアウトプットすることで自分を創り上げていく?
石田:そう考えてます。相手が詰めてくれるんです。「これどうするつもり?」「お金どうするつもり?」「メンバーどうするつもりなの?」など。
そうするとその場で頭にない事をひねり出してでも、思いを伝えることになる。すると氷山の一角のものからどんどん上に上がってきて、全体がみえてくる。「自分はこう思ってたんだ」と話している中で自分で気づく。
むりやりでもいいから、「僕、こういう人と仕事したいと思ってるんです」と自分の中から引っ張り出すんです。その後メモする。こうした発見があり、話した相手には「ありがとうございます、今日すごい気づかせてもらいました」と。お礼してきたのを覚えています。
だから、人に会って、対話したほうがいいと思います。そして、できる限り同業種じゃないほうがいいです。同業種だと「それいいよね」「できたらいいよね」で止まってしまいます。
また同業者だと出来ない理由を諭されるほうが圧倒的に多いので、どうしたらできるんだろうというアドバイスは見方が違う人から聞いた方がいいと思います。
ー 人に会うこと、異業種に思いを伝えること、本を読むこと、この3つが行動に対してのマインドになるのですね。
石田:はい。自動車と一緒で、左のタイヤと右のタイヤが同じように動くからまっすぐ進むように、技術力上げて、人間力も上げていくからまっすぐ進めると考えています。両方必要なんです。
対人の仕事で、技術を提供している。どちらが必要なの?ではなく、どちらも必要なんですよ。そして自分の中でどちらが足りないんだろうと考えること。
技術だけ磨くとどうしても傾いていって職人になっていくし、言い方が変ですが、人間力だけついていっても「でもあいつ口八丁だからな」という風になってしまう。
トレーニングするバランスを考えた方が良いと思います。
病院は、営業しなくても入院で来ますよね?だから知ってもらう営業努力をしなくていい。だから最初がもう壊れてる。否が応でも技術提供する事ができる。
でも社会での仕事は技術提供するときに「僕こういう風な人間ですよ、こういうことしていきますよ、どうですか?」という営業が最初なんです。病院だとそこがないんです。だから技術を高めればいいと思ってしまいやすい点だと思います。
デイサービス=理学療法士のいるところに
ー 実際に立ち上げる時に考えた方法とその理由は?
石田:考え方については3つありました。1つめは、チームで仕事したかったんです。一人の限界をわかってるのに、一人で起業するのは意に反すると感じていました。
2つめは、お金の計算なんて出来ないと思っていました。だから介護保険のほうが有難かったんです。制度も決まっており、ルールがあるのでお金のこと考えなくてよいですから。
3つめは地域に出ているPTが少なかったということです。病院で普通のPTであっても地域に出たら「体のことをみれる人」と、そこでもう差別化ができてます。要はどう地域を限定してもいいから、ナンバーワンじゃなくてもいいから、その地域でオンリーワンだったらいいと考えたほうが良いんです。
自分の能力と社会のニーズを比較すればいい。代表の仕事ってチームリーダーみたいな仕事です。僕は思い返せばずっとリーダーをしていたことに気づきました。
これまでやってきたことを思い出して、自分の得意を伸ばそうと考えました。できる限り多くの人に理学療法を知ってほしいという気持ちもありましたね。
デイサービス=理学療法士のいるとこでしょ?というように。社会認知される一手段だと思っています。
あとは、自分が大学1期生だから、後輩たちに向けて、「理学療法士ってこんなに良い仕事なんだよ。こんないろんな働き方があるんだよ」というのをモデルの1つとして、みせる形にしたかったんです。
こども食堂ってなに?
ー 現在の活動として「こども食堂」に取り組まれていますが、始めたきっかけや苦労、喜びなどがあれば教えてください。
石田:地域の高齢者に対して行なっている仕事(デイサービス)をしているうちに、高齢者だけでいいのか?と思ってきたんです。自分の会社では、ママと高齢者と子供にリーチすることを考えていて、なにかそういうことできないのかなと以前から考えていました。
訪問看護を立ち上げようと看護師さんと話していて「石田さん、こども食堂って知ってますか?」と教えてもらったんです。「あぁこれだ!」と思ったんです。
ご飯を一緒に食べるという形でコミュニティーにすれば子供にもリーチできるじゃないか、やってみよう!というところが単純な動機です。ここ(リカバリータイムズの前の道)小学校の通学路なんです。元気に帰ってくる姿を見てるからそう思うんでしょうね、きっと。
なんか面白いこと、みんなでワクワクできることやりたいというきっかけですよね。安全・安心の中での溜まり場にしたかったんです。
テレビでやってる貧困対策のためにというよりも、夜に友達とご飯食べてワイワイしてたらちょっとワクワクしませんか?
だからうちでやってるこども食堂は最初来たら宿題をやって、ご飯を食べてからみんなで遊ぶという流れで2時間くらい行なっています。もちろん毎回ものすごく疲れますよ(笑)元気がいいので。
苦労した事よりも、気づいたことがいっぱいあって。防犯のことや、ここでの子供達の会話を小学校の校長とやり取りできたりしました。
ー それでまた地域と繋がれる?
石田:そうなんです。何を作ったら、一つ思いついて考えてて、話が来てガチっときたときに形にする。それがまた次に転がっていくという感じで今はやってます。
悶々としているときでも、一歩踏み込んでやってみるという感覚。最近本を見て、そうだなと思うことは、内容は一流じゃなくても良いということ。
「二流の考え、一流の行動力」要するにベターだなと思ったら出来る限り早く行動する。
行動力が一流のほうがいいと思っています。良いこと思いついたとネットで検索したら、三ケ所くらいは既存にありますからね。
何が違うかと言ったら早く取り組んだかどうかです。
ー こども食堂の今後の展望は?
石田:今は月に一回しかやっていません。コミュニティーとしては弱いなと感じているので、これを毎週やるように動いています。場所も隣に空いてる店舗を借りてます。定期的に立ち寄る事ができるスペースにしていこうと考えています。
そのスペースがこどもだけじゃなく、お母さんも高齢者も気兼ねなく、気軽に相談できる立ち寄り場になっていく。そこまで掛け算したらおもろいだろうなと現在思索中です。
*目次
第一回:大学院の博士課程中に起業したワケ
第三回:物ではなく事の時代
石田輝樹先生 プロフィール
・職歴
2007-2013 横浜労災病院 リハビリ中央部 理学療法士
2013- ㈱リカバリータイムズ 代表取締役
・学歴
2007 神奈川県立保健福祉大学 リハビリテーション学科 卒業(理学療法士)
2009-2011 神奈川県立保健福祉大学大学院 修了(リハビリテーション学修士)
2011- 2015 東京医科大学大学院博士 修了 博士(医学)