昨今、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が個人ブログを発信したり、勉強会団体が論文の内容を転載して集客したりするケースが増えてきているように思います。
アウトプットは最大のインプットと言うように、考えを整理するキッカケにはなりますし、個人が発信することはとてもいいことだと思います。
一方で先日、知人が作成した画像が、本人と全く関係のない勉強会団体のブログに使われているという事件が起きました。
このケースに関しては、誰が聞いても著作権法違反だと分かるとは思います。
しかし、著作権法に関して調べれば調べるほど、リハビリ業界は、グレーどころか黒と言っていい著作権法違反が多く存在すると感じました。
今回は、この著作権について少し整理していきたいと思います。
※ 私自身は法律の専門家ではありませんし、法律や権利に関してはさまざまな解釈の仕方があります。もし内容等に誤りがございましたら、ご指摘ください。
リハビリ業界に多すぎる画像の著作権法違反
まず画像の引用について。
プロメテウスなどの解剖学書から画像を写メして、それをfacebookやブログに載せている人を散見しますが、これは完全にアウト。
商用利用、私的利用を問わず、他人の著作物をSNSやブログといった媒体に無断でアップロードすることは、著作権法違反に引っかかります。
著作権法では引用に関して、次のように明記されています。
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
2 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。
引用:著作権法第三十二条
このルールに乗っ取っていない引用に関しては、基本的に著作権法違反となることを心得ておきましょう。勿論、ネットに既に落ちているからといって、教科書の画像と知って(気づかなかったふりをして)使用するのも違反です。
画像の"ロイヤリティフリー"は"著作権フリー"?
ネットには有料のものから、無料のものまで、数多くの画像Stockサイトがありますね。
▶︎【PTOTSTのためのデザイン講座】スライドや資料制作のための画像素材サイトまとめ
勉強会の発表資料などに利用する人も多いことでしょう。
ただ、これに関しても、よく分からず利用してしまっている人多いのではないでしょうか。
ロイヤリティフリー(RF)の場合にも当然ですが、著作権は存在します。「フリー」なのは「ロイヤリティ」、一度使用を許諾されれば、使用許諾の範囲内で何度でも複数用途に使用できるというライセンスです。つまり、契約で定められた条件の範囲内であれば使用が可能ですが、それ以外の場合で使用すると違反となります。
それに対し、使用のたびに、申告と支払いが必要な「ライツマネージド(RM)」というライセンスもあります。有料の画像stockサイトだとロイヤリティーフリー(RF)とライツマネージド(RM)この二つが明記されていますので、必ず確認が必要です。
また、無料でダウンロード可能と書かれているフリー素材サイトにも、利用規約に、使用方法が書かれています。画像の使用にはそのサイト名を書く必要があったりするケースが多いので注意しましょう。
©←コピーライトマークが書いてないから大丈夫?
「Copyright © 2017 ●●company All Rights Reserved.」といったコピーライト表示が書かれている画像を見たことはないでしょうか。
これは、「所有者は私です」といった宣言のようなもので、このコピーライト表記が書かれていないものにも、当然ですが著作権はあります。
つまり、無断で使用すると著作権法違反に引っかかります。
文の引用、どこまでがセーフ?
昨年のWelq問題で浮き彫りになった、文のパクリ問題。ただ、これはあくまで氷山の一角で、多くのサイトやブログに当てはまるのではないかと思います。
著作権侵害とならないよう、引用ルールについておさらいしていきましょう。
引用・参考・出典の違い
よく「引用・参考・参照・出典」という言葉を目にしますが、それらの使い方がごっちゃになって使用している人が多いように思います。
引用:著作物などからそのままの形で文書などの内容を引くこと。
参考:著作物などから内容を自分なりに要約して引くこと。
出典:引用または参考の元となった著作物の詳細を記すこと。
引用に関しては詳しく後述しますが、引用するためのルールが決められており、それを一つでも破ってしまっているものは著作権侵害となります。参考に関しては、論文や本、勉強会資料やネットなどに限らず、人から教えてもらった内容や言葉なども対象となりますので注意が必要です。
引用ルール。抑えるべき点はこの4点!
文化庁のHPに引用における注意事項がつぎのように明記されています。
他人の著作物を自分の著作物の中に取り込む場合,すなわち引用を行う場合,一般的には,以下の事項に注意しなければなりません。
(1)他人の著作物を引用する必然性があること。
(2)かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。
(3)自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
(4)出所の明示がなされていること。
(第48条)(参照:最判昭和55年3月28日 「パロディー事件」)
【1に関して】
例えば論文や本の内容に関してブログに書く場合であれば「必然性はある」と言えますが、その内容に全く関係のないゲームや食べ物の写真を引用するのはNGです。
【2に関して】
例えば上のように「”」で囲ったりして、引用している部分とオリジナルの部分を明確にする必要があります。今はどのブログサイトにもblockquoteタグが設置されておりますのでそれを使用するといいでしょう。逆にblockquoteタグが使用されていない引用は、Googleのペナルティーを受け検索順位が下がる可能性がありますので気をつけてください。
【3に関して】
オリジナル記事をどの程度引用していいのか。それに関しては、様々な議論があり、「オリジナル記事の2割程度」という意見や「引用部分が全体の半分未満」など諸説あります。とにかく、必要最低限の量に抑える努力が必要でしょう。また、文の量だけではなく内容についても主従関係が問われるそうなのでご注意ください。
【4に関して】
ホームページやブログから引用する場合は、そのサイト名とURLを記載しアクセスできるようにする必要があります。これに関しては著作権法第48条にも書かれています。
※追記
引用する文章は一文字一句変えてはいけません。勝手に文章を削除したり、言い回しを変えたりする行為は、NGです。必要ない部分は、(前略)(中略)などと記載し、略したことを明記する必要があります。
また、翻訳に関しても、著作権法第四十三条に書かれており、上記の4つの点に注意する必要があります。つまり、英論文を和訳したものをそのまま転載し一つの記事にすることは、3の主従関係に引っかかるのでアウトです。気をつけてくださいね。
最後に
色々書いてきましたが、その他にも知っておかなければならないことはあります。もっと知りたい人におすすめはこの二つ。
▶︎著作権法
▶︎ メディア関係者が著作権について考えるときに読むべきウェブサイト・ブログ記事15選
一つ目は、著作権法の原文です。二つ目のブログの筆者 朽木誠一郎氏は、医学部卒のライターで医療系記事を多く執筆されています。
知らなかったでは済まされない、著作権。気づかないうちに犯罪者にならないよう、発信の仕方には十分に注意しましょう。