最終回:腰痛であればRDQ、腰痛であればRDQ、上肢であればQuick DASH【甲南女子大学 理学療法学科 准教授|西上 智彦 先生】

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【8/18】治りにくい(臨床で困る)疼痛に対するリハビリテーション

セミナー詳細は >> https://1post.jp/3414

 

―――整形外科クリニックに来院される方はADLの点数が高い人がほとんどだと思います。そうなると「能力障害がない」と判定され、疼痛の改善が難しくなるのでしょうか?

 

西上先生:それはBarthel indexで評価した場合、そうなります。しかし、実際には疾患別の評価をしなくてはいけません。腰痛であればRDQ(Roland-Morris Disability  Questionnaire)*1。

 

腰痛であればRDQ(Japanese Knee Osteoarthritis Measure)*2。上肢であれば、Quick DASH*3。これらの評価表から能力障害を評価し、アプローチをしていく必要があります。

 

*1 RDQ(Roland-Morris Disability  Questionnaire)

 患者自身が直接回答する腰痛特異的QOL尺度のこと。腰痛により、QOLを障害される程度を評価するための尺度であり、24項目の質問に対してClosed questionで回答し、「Yes」と回答した項目の数を加算して得点を算出する。

 

*2 JKOM(Japanese Knee Osteoarthritis Measure)

 膝OAのQOL評価に対して、世界的にWOMACが用いられてきた。しかし、質問における生活様式が日本に適しておらず、日本に適した膝OAに対するQOL評価尺度としてJKOMが開発された。信頼性、妥当性に関してはSF-36やWOMACとの比較検討からも認められている。

 

*3 Quick DASH

 上肢疾患のADL評価で世界的に用いられるDisability of the arm, shoulder and hand(DASH)の縮約版である。DASHでは30項目の質問に5段階で回答するが、Quick DASHでは30項目のうち11項目から成る。この他、スポーツや芸術活動を追加で加える場合もある。

 

―――臨床心理士はペインリハの中で、どういった立ち位置なのでしょうか?

 

西上先生:私がオーストラリアで、整形の病院を見学した時、臨床心理士がいました。「ここ以外の病院でも臨床心理士はいるのか?」と、尋ねましたが、そもそも臨床心理士の数も少なく、臨床心理士がいる病院は理想だけど、いないのが現状のようです。おそらく、アメリカは数多くいると思います。

 

同僚のイタリア人の臨床心理士に聞いたところ、イタリアでも少ないそうで、世界的にみても実はそこまで幅広くやっていないというのが現状です。日本で見ると、臨床心理士の数も少ないし、痛み専門の臨床心理士というのはほとんどいません。

 

 

―――物理療法は痛みに対する治療としてはどうなんですか?

 

西上先生:効かんちゃう。逆に聞くけど、物理療法やっていて効いていると思う?

 

―――私はある一定の効果はあると思っています。

 

西上先生:では、例えばどんな人にどんなことをやったら効果的?

 

―――腰痛の人にホットパックをすれば、心理的であっても効果があるように感じた経験は今までにあります。

 

西上先生:だからそれを“効く”とはいわない。医学用語として。研究報告で多くの物理療法が否定されている中で、何が適応で、何が適応ではないのかをしっかりと提示すべきだと思います。

 

私たちの感覚でいうと、“良くなる”とは、「一瞬良くなるのか」「持続的に良くなるのか」「逆になぜそんなに痛かったのか」と、いうのを考えなくてはいけません。

 

―――これまでのお話をお聞きすると、慢性疼痛は心理的なものが問題にあるということですか?

 

西上先生:“痛み”というのはもともと主観的なもので、ここが非常に難しい問題なのですが、例えば患者さんに「痛みには脳が関わっている、心理的な問題もある」と伝えてしまうと、「私は脳が悪いのか。精神病なのか」と、怒ってしまいます。

 

患者さんへの説明としては、器質的な問題=痛みではないということを伝えます。患者さんの考え方を変える必要はありますが、理学療法士の考え方も変えていく必要があります。

 

例えば、腰痛の患者さんにはコアトレが必要、正しい座り方があるなど、患者さんに間違った情報として伝わっていくこともあります。

 

例えば、腰痛患者さんが正しい座り方があると間違って思い込んだ患者さんは、過度に背筋を伸ばすようにして、脊柱起立筋群が過緊張になり、結果的に腰痛が発生しまいます。誤った理解を修正しながら、動作も変えていく必要があります。

 

患者さんの認識を変えていくことが重要ですが、それを「メンタル」といってしまうと、誤解を招くことがあります。

 

ペーシングといいますが、運動習慣が身についていない人であれば、運動継続の重要性を伝え、仕事によって、調子を悪くするような人であれば、「少し休みましょう」など、自己管理の方法を教えることが必要です。

 

理学療法士は、身体を診るスペシャリストですから、そういったことを体感させるというのがベストなやり方なのではないかと思います。

【8/18】治りにくい(臨床で困る)疼痛に対するリハビリテーション

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―――先生の今後の展望を教えてください。

 

西上先生:一つのミッションは、自分よりも優秀な人間を育てること。自分自身、オーストラリアに留学して挫折を経験しました。「世の中にはやはり賢い人間はたくさんいる」と強く感じました。しかし、海外の人間全員が賢いわけではなく、やはりトップの数名が、めちゃくちゃ賢い。

 

海外では、その数%の賢い人がリーダーとなり、その他の人を引っ張っています。ですから日本でも、もっと優秀な人を育てないと、と考えています。自分はそこまで優秀ではないので、自分を遥かに超える優秀な人間を育てることが大事なのかなと思います。

 

―――どうやって育てるんですか?

 

西上先生:一つは大学院でしょう。まだ、ここ(甲南女子大学)にはありません。現状であらゆる場所を飛び回り、やる気のある人材に教えることはありますが、「優秀な人間を育てる」ということが非常に難しく、いまどのようにするべきか考えている段階でもあります。

 

 

―――先生は20代前半から30代になるまでに、どんなことを考えていたんですか?

 

西上先生:とにかく研究がしたいと思い、論文をたくさん書いていました。自分のできないことにチャレンジしていたかったです。海外での発表や英語の論文を書いていました。それを積み重ねていました。

 

今現在、論文は全て英語で書くことを自分に課しています。論文を書いていると、できない自分に出会います。今では、ある程度、英語の論文の本数もありますので、無理して、できない自分に出会い辛い思いをして論文を書く必要も無くなってきています。

 

でも、論文も書かずにえらそうに講演しているダサい大人にになりたくないので、今は、そんなダサい大人になりたくないから努力するという感じで、論文を書いています。変な目標ですが、実際の行動も、そうなっていると思います。

 

―――20代・30代で悩まれている同職の人が多いのですが、そういう人たちはどういう気持ちでいればいいんでしょうか?

 

西上先生:人が遊んでいるとき、いかに努力できるかですね。また、仲間内で集まるだけでなく、外に出ていくことです。とにかく地道にやる。一攫千金を狙わず、地道にね。

 

―――先生が大学院の進学を相談されたらオススメしますか?

 

西上先生:どっちでもって感じです。なぜなら、その人の人生にとって大学院が必要かどうかは、自分で決めることです。例えば、「教員になる」という目標があるなら、間違いなく「行きなさい」と伝えます。

 

そうでない人には、大学院に行って学べることがあるなら行きなさいと伝えます。大学院を卒業して、修士、博士を取得すること自体に大した価値はありません。その経験をもとに、自分がどうありたいのか。何をするのか、という目的に対して、修士、博士を取得すべきか否かを考えるべきでしょう。

 

―――やる気がないわけではないけど、何をやったらいいのかわからないのが、現状なのだと思います。

 

西上先生:この原因は、学部教育の問題にもつながりますが、上からの指示によって動いている人が多いということでしょう。もちろん指示を聞くことは大切ですが、その理由を考えることもなく淡々とこなすだけ。「やる気」も何をもってやる気とするかは不明ですが、大半は覚悟の問題だと思います。

 

やる気があって、行動するためには「苦しみ」が同時につきまといます。まずは、その覚悟があるかどうかです。この覚悟がないのであれば、「やる気がある」とは言えないのでしょう。

 

例えば、私とともに研究している子や後輩は、大分苦しんでいると思います。「学会発表をする」となれば、何回も直されるし、「データを取れ」となれば臨床の合間をぬってデータ取りをします。

 

「苦しい事は御免」と、いう覚悟では困るわけです。それは何も、研究をしなさいということだけではありません。チャンスの場に足を運んだのかということも重要でしょう。

 

今回のこのインタビューが実現したのも、普通だったら絶対取材なんて受けないけど、たまたま飲み会に行って話して、2次会、3次会まで付き合って腹割って話したからこそだと思います。ただ、あの日は飲みすぎ。笑 あんなに飲んだらあかん。笑

 

こんなことでも積み重ねていくべきですけどね。

 

問題は、本人たちも問題ですけど、それを正してくれる大人がいないことも問題ですね。仲間内で集まって終わる。上司と飲みに行っても家庭の愚痴ばかり。

 

勉強にならない大人も沢山います。私の場合、幸いにもそれを正してくれる先輩や勉強になる上司が沢山いますので、よく飲みにいきますし、呼ばれればなんとしても参加します。

 

―――先生が上司や先輩から言われた人生の転機となった言葉はありますか?

 

西上先生:牛田享宏先生(愛知医科大学病院痛みセンター教授)に言われた、「しゃべることは誰でもできる、論文に残すことが大事」「立ち止まるのは抜かされているのと同じ」「留学するのは当たり前」色々な教訓がありますね。

 

―――最後に先生にとってプロフェッショナルとは?

 

西上先生できない自分に出会って心は折れても、前に向かって歩くことができる人のことだと思います。

 

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*目次

第一回:痛み研究のきっかけとなった患者との出会い

第二回:疼痛へのアプローチは患者教育に重点を置く

最終回:腰痛であればRDQ、腰痛であればRDQ、上肢であればQuick DASH

 

西上先生オススメ書籍

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「患者さんからの電話相談をまとめた本です。痛みで苦しんでいる患者さんがどのように考えているかわかります」

 

西上 智彦先生のプロフィール

学歴 

平成14年 広島県立保健福祉短期大学保健福祉学部理学療法学科 卒業               

平成20年 高知大学大学院医学系研究科医科学専攻修士課程 修了     

平成26年 愛知医科大学大学院医学研究科臨床医学系専攻博士課程 修了           

職歴

平成14年 医療法人永広会島田病院リハビリテーション科                                                   

平成16年 高知大学医学部附属病院リハビリテーション部

平成22年〜現職 甲南女子大学看護リハビリテーション学部理学療法学科 准教授

平成25年 大阪大学医学部附属病院疼痛医療センター 非常勤理学療法士

平成27年 Sansom Institute for Health Research, University of South Australia

      Postdoctor

学会活動

日本ペインリハビリテーション学会 理事 

日本運動器疼痛学会 評議委員

日本疼痛学会 評議委員

 

社会活動

NPO法人いたみ医学研究情報センター 理事

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