近年、精神遅滞や統合失調症等の精神・神経疾患において、神経細胞の樹状突起にあるスパインと呼ばれる小さな突起の密度や形態に異常が生じることが知られている。
今回、理化学研究所は、運動をつかさどる小脳内の神経回路を正しく維持するために必要な分子メカニズムを発見した。
研究チームは、「カルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼβサブユニット(CaMKIIβ)[3]」が、運動の学習・記憶を担う小脳[4]の神経細胞の一つであるプルキンエ細胞[5]におけるスパインの形成と伸長を促すことを発見しました。また、このCaMKIIβのスパインに対する効果は、タンパク質リン酸化酵素の一つであるプロテインキナーゼC(PKC)[6]によるCaMKIIβの「リン酸化[7]」により制御されていることが分かりました。
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スパインは、脳機能の発達や成熟に伴って成長し、成熟後も脳の経験や刺激に応じ数や形態が変化させる。
また、脳の学習・記憶によりもたらされたシナプスの可塑的変化を長期的に保持するために、スパイン形態の刺激頻度依存的変化が起こる。
今回の発表は精神・神経疾患の原因解明や治療法の確立につながる大きな一歩だ。
なお本研究成果は、米国科学アカデミー紀要『Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America(PNAS)』のオンライン版へ掲載される。