言語聴覚士の実際のニーズは?
日本における言語聴覚士のニーズを色々な角度から考察してみた。
今回は、「嚥下」という切り口に注目して調べた結果を述べていこう。
【全国における死亡原因】
人口動態統計によると、肺炎が死因の第3位となっており、日本呼吸器学会では「高齢者の肺炎の70%以上が誤嚥に関係している」と明記している。
(平成27 年の死亡数を死因順位別にみると、第1位は悪性新生物で37 万131 人、第2位は心疾患19 万5933 人、第3位は肺炎12 万846 人。肺炎は昭和55 年に不慮の事故にかわって第4位となり、その後も増加傾向が続き、平成23年には脳血管疾患にかわり第3位となり、平成27 年の全死亡者に占める割合は9.4%となっている。厚生労働省HPより)
(厚生労働省HP:http://www.mhlw.go.jp/)
平成27年度の65歳以上の肺炎死亡者数11万7,707人(不詳を除く)であるため、高齢者の誤嚥性肺炎死亡者数は約8万2,395人であり、誤嚥性肺炎の予防をすることは非常に重要なポイントである。
地域における誤嚥性肺炎
ここでは、地域密着という点で、わが社が統計調査を行ったデータを参考に、
地域での「誤嚥」に対するニーズを紹介する。
以下は、当社にリハビリテーション依頼があった際の、依頼目的を示すグラフである。
ここで、言語聴覚士が専門領域としている項目は、「失語 6%」「嚥下 4%」「構音 3%」という結果になっている。
つまり、リハビリテーション依頼数の約13%が言語聴覚士の専門とする内容となる。
(過去の記事参照:https://1post.jp/1901)
第1章で紹介した内容にもあるように、「全国に言語聴覚士は、29225人」や、「10つの事業所あたり言語聴覚士は1名在籍」といったデータを考えると、とてもカバーしきれない。
この現状の中で「誤嚥性肺炎※にならないように予防しよう!」と声をあげても、専門家なしではなかなか難しいものである。
※誤嚥性肺炎
一度、誤嚥性肺炎を発症してしまうと、肺炎が完治したとしても臥床期間が長くなる。その結果、廃用症候群のリスクが増大し、臥床期間が長期化するため歩行困難になる方や、認知機能の低下を呈する事も多くなる。炎症症状による発熱が続き、咳や痰による呼吸器の負担が増え、基礎体力の低下が顕著となります。慢性化もしやすいため、予後不良となることもあります。
訪問現場で誤嚥性肺炎と戦う女性言語聴覚士
以下に、当社の言語聴覚士からの取り組みを紹介する。
病院から在宅の現場へ
私は6年間の病院勤務を経て現在は訪問看護ステーションに勤務していました。実際に訪問の現場で働いてみると、思うよりも利用者が危険な食べ方をしていることや、嚥下能力に対して難易度が高い食材を摂取しているケースが非常に多く感じました。
例えば、口腔機能が悪い方がキザミ食を食べ、口腔内に残渣しムセていたり…
トロミ無しの水分を一気飲みしてムセてしまっていたり…
それでもギリギリのところで誤嚥することなく食べているが、現状の食べ方を続けてしまうと将来的には誤嚥性肺炎や窒息に繋がるのではないかと考えられるケースを見かけます。
そのような場合には食形態の変更やトロミ剤の使用、食べ方の注意点等を伝え変更して頂かなければならない。また、病院とは違って看護師に24時間みまもってもらえる事はないため、本人や家族が自由に好きなものを食べてしまうことも多いです。
(好きなものであれば誤嚥しないというお話をご家族から聞いたりもしますが。)
私自身も、自宅に大好物なステーキがあったら食べたくて仕方なくなってしまいます。嚥下障害の方は、本人が食べたいものと本人が食べられるものと相違が出てくる場合が多く、ご本人や家族になぜその食べ物を食べることは危険なのかをしっかりと理解してもらう必要があります。訪問リハビリテーションの対象になる方は、在宅では好きなものを好きなように食べているので、言語聴覚士の専門性として介入する余地がまだまだ多くあり、誤嚥性肺炎を予防できる方々が多くいると感じます。
食=栄養摂取=身体機能
「食事がとれない」となると、はじめに思い浮かぶのは、「食の楽しみが失われる」となりがちですが、人間も生き物である以上、栄養摂取が困難になると身体機能の低下が起こります。
在宅でのケア会議などでは、やはり家族は「楽しみ」としての食事を中心に話される事が多いですが、「栄養摂取」が毎日確実にできるか、に関しては驚くほど訴えとして挙がることが少ない現状にあります。
ミキサー食などの介護食を用意する事で、誤嚥リスクは軽減できますが、結果的に家族の負担は増え、食事介助をすることになると、朝・昼・晩と付き添わなければならなくなってしまいます。そうすると、家族の自由時間が制限されてしまうため、可能である限り安全で自己摂取できる方法を見つけ出すことも重要だと考えます。
また、食事は褥瘡の発生にも関係しています。皮膚を生成するタンパク質やビタミン類等を摂取できていないと、皮膚が軟弱化し褥瘡のリスクが高まってしまいます。
そのため、十分な食事の量を摂取し栄養を確保することは重要です。その他のリスクとしては、栄養不足のため筋肉量が減少することにより、二次性サルコペニアを招いてしまう恐れがあります。
栄養が摂れないと身体が衰え、身体が衰えると嚥下機能も低下してしまい、さらに栄養が摂れないという悪循環に陥ってしまいます。安全に食事をして栄養を確保することは、基礎となる身体を作るために必要不可欠なのです。
病院勤務から在宅の現場へと転職し、生活に密着したリハビリテーションをより肌で感じられるようになりました。病院で勤務していた際にはご家族に会う回数が限られていたが、これからはご家族と関わることは多くなるでしょう。
介護のために精神的にも身体的にも疲労しているご家族もいらっしゃるため、精神面でのサポートもしっかりとしていきたいと思っています。新しいフィールドで患者さんや家族の力になれるように積極的に研修に参加し、新たな資格にも挑戦したいと思います。
結果的に、高い専門性を持ったサービスを利用者に還元できれば、在宅生活の質を向上できるのでは、と考えています。
私が「訪問リハビリ」を選んだ3つの理由
上記を執筆した言語聴覚士に、「なぜ訪問で働こうと思ったか?」を聞いてみた。
1.病院ではできない生活に密着したリハビリテーションを絶対にやりたいと思っていた
-医療機関での専門的な検査やサービス提供が、在宅ではどうやっているのか疑問がありました。入院中と在宅では環境の差が大きすぎるため、入院患者にリハビリテーションを行っていて、ふと「この患者さんは、家でどうやって生活していくのか想像がつかない…」と感じ、いつかは絶対に在宅でみてみたい!と思うようになりました。
2.社会の流れが「入院→在宅」へシフトしている為
-地域包括ケア病棟などが出来たこともあり、数年で在宅へのシフトを感じ、時代の流れに乗り遅れないように、先に動いておきたいという面もありました。
3.待遇が良い場合が多く、現場でのニーズが感じられる
-元々言語聴覚士は少ないと言われていますが、介護保険領域では更に少数となるようです。そのため、地域で重宝されることもあり、ある意味目立つ存在になると思い、高いモチベーションが保てると勝手に思っていました。
(実際に勤務してみると、待遇としては「休みの取りやすさ」や「総合的なキャリアアップ」に関しては、比較的満足しています。)
まとめ
●日本における言語聴覚士のニーズは年々増加している
●誤嚥性肺炎の予防は訪問の現場でも必要性が高い
●「退院後の生活が知りたい」という一心で、在宅の現場に飛び込んできた言語聴覚士がいる
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