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ADOCを通して意味のある作業療法を追求する【友利幸之助】

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全く違う研究していた院生時代

ー よろしくお願い致します。いきなりですが、友利先生はなぜ作業療法士になられたのでしょうか?

友利先生 何もやりたいことがなくて浪人していた時に親戚の方が勧めてくれました。本当はPTを目指していたんですが、元々僕が心理学に興味を持っていることから、面倒見のいい親戚が19歳のときに作業療法士になるように勧めてくれました。

 

ー そういった経緯があったんですね。では、実際にOTの学校に入って、アクティビティの授業でひたすら革細工を作ったりしたと思いますが、どう思われましたか?なぜかと言うと、僕は、意味を理解しないままあの作業をすると、『作業療法って何なの?』となってしまうなぁと思ったんですよね。学生時代に。

 

友利先生 僕の性格だと思いますが(笑)、なんでも違和感ないんですよね。そういった授業もそうですけど、全てにおいて言われたことを一生懸命やってきた人生なんですよね。

 

ー それは、でもある意味すごく武器になりますよね。では、友利先生は最初にどういったところに就職されたんでしょうか?

 

友利先生 ん~これといった就職先も自分で決めていなくて(笑)。当時はインターネットもあまり普及してなかったので、学校の先生に勉強できるところに行きたいから先生選んでくれと頼みました。さっきもいいましたが言われた所に行って一生懸命やるのは全然苦痛じゃないので、どうせやるなら高いレベルでやりたいとは思っていましたね。それで学校の先生が鹿児島の老健を選んでくれたんですが見事に試験に落ちて、就職が決まっていた同級生と同じところに行きました。 そして就職後に紹介で、今長崎大学にいらっしゃる沖田先生と出会い、仕事に慣れてきてから研究室に入った。といった感じですね。

 

ー 当時の研究のメインテーマは何だったんでしょうか?

友利先生 修士と博士は動物実験をしていて、脱神経筋の研究をしていました。末梢神経損傷後の脱神経筋が萎縮に対して、電気刺激を使ってどれだけ予防できるかという研究をしていました。

 

ー 今とはまったく違う研究をされていたのですね。それらは神奈川に来られてからですか?

 

友利先生 神奈川に来たのは、修士の2年目のときですね。修士は通信がいいだろうということで、それで修士をとって。神奈川に移ったあとも基礎研究を中心にやっていました。

 

出会いは突然、偶然に

ー 先ほどお話にもあったように研究のメインテーマがラットを用いた基礎研究から「作業療法とは何ぞや」という研究にガラッと変わったと思うのですが、そのきっかけはなんだったのでしょうか?

友利先生 僕は博士課程に6年かかったんですよ。それで、もうこの分野では取れないかなと思っていて、卒論でADOC(*注:1)の前身で、Activity card sortというのがアメリカにあったのでそれを扱っていたんです。それで当時のゼミ生の友人がイラストレーターだという話がでて、それに加えて僕のいとこがプログラマーだったこともあって、その二人でコンピューターのことが何かできるんじゃないかということになり、学内の研究費をとって、Mac版のそれを作ったんですよね。

 

それで、その頃ちょうどiPadが発売されるという頃で、それならばiPadのアプリを作ろうということになりました。最終的に僕のいとこが入った会社でiPadアプリを作って1年かけて研究し、ある程度使えるだろうということで、1年後にリリースしました。

 

これが2011年のことかな。だから博士の論文を書いている時と、ADOCをリリースするときが一緒なんですよ、僕。(笑)

 

※ ADOC:(Aid for Decision-making in Occupation Choice:エードック)とは、作業療法で目標とする作業を決める面接の際、クライエントと作業療法士とのコミュニケーションを促進するためのiPadアプリ。

 

ー それはすごい。(笑)博士論文とADOCを一緒にやっているのは大変じゃなかったですか?

友利先生 もう、かなりきつかったですね。

 

ー やっぱりそうでしたか(笑)。話が変わりますが、現在「臨床作業療法学会」を起ち上げられましたけど、どのタイミングで今のメンバーと一緒にやろう!!ってなられたんですか?

 

友利先生 学会のメンバーは、例えば齋藤さん(齋藤佑樹:日本臨床作業療法学会副会長)は、ADOCを知ってくれていて研究者募集の案内に一番に応募してきてくれました。また澤田さん(澤田辰徳:日本臨床作業療法学会会長)は自分のブログにADOCのことを書いてくれていました。それで「一緒にやろうか!!」となったんですよね。

 

ー なるほど。出会いはネットだったんですね。皆さん友利先生のブログやホームページをみていたんですか?

 

友利先生 ですね。そのなかでも澤田さんが一番新しいですよ。OTIPM(作業療法介入プロセスモデル)の研修の時に澤田さんが仕切っていたんです。そこで会って、澤田さんから「ADOC作った人でしょ?見せてよ」と言われて、そこから仲良くなった感じですね。

 

ー ではADOCを一から作り上げたのは、友利先生と上江洲さん(日本臨床作業療法学会理事)と学生さんですか?

 

友利先生 あと一人親友と,大学のボスですね。だいたいその4人で最初の案は作りました。

 

ー ADOCをスタートされて3年くらい経つと思うのですが、結構広がりをみせていると思います。そして先ほども言いましたように臨床作業療法学会を作られていますが、ADOCを作り、学会を作ろうと思った経緯を教えてください。

 

友利先生 それはとてもシンブルで、「OTの楽しさをみんなでシェアしよう」というのが活動の根本なんです。学会作るのも論文を書くのも全部その理由ですね。OTって自信持っていない人が多いし、よくわかってもらえない仕事ですよね。

 

でも僕は素晴らしい仕事だと思っているんです。その楽しさをどういう風に伝えていくか。学会を立ち上げたのは基本的には、自信を持ってOTを楽しくやるためにはエビデンスが必要なんですよ。だから、ゆくゆくは作業療法の効果をきちんと研究していきたいですね。

 

ー 自分自身OTなので、すごく励みになります。そして、本当に有意義な学会だなと思っております。

友利先生 あと、僕が教わってきた教育って、『自分たち(指導者)がやってきたことを君たちは半分の年月でやらなければいけないよ』と上の人から言われてきました。

 

だから先人がやってきたことを出来るだけ短くやらなければいけないし、これを次につながないといけないんです。

 

そういう意味でも学会という形がいいのかなと思ったんです。僕自身も学会で発表して準備していく中で、勉強したり、発表してみんなに認めてもらったりして成長させてもらいましたからね。

 

ー 今後、作業療法はどのようになっていくと思いますか?

友利先生 これからリハビリテーションって生活のほうにシフトしていくので,作業療法のニーズが高まっていくと思います.生活の中で患者さんが自分で治っていくプロセスをシェアする。そういう風にシフトしていきます。今後、作業療法士が求められる領域が増えて行くと思いますし、PTの限界を超えて機能を治せると思っています。 でもどうしても振れ幅が大きいし、フレームが曖昧な部分があるんですよね、多様性があるからこそ。

 

ー 確かに、多様性は逃げ口上にもなりえますからね。  

友利先生 だから平均値を上げようというのは無理かもしれないんです、枠にはまってないので。それなので、結果的には、出来るやつは出来る、出来ないやつは出来ないという構図になっていくと思います。

 

ー 今のような二極化の懸念に対してや一般の人への周知をしていく上で、作業療法業界全体の底上げは極めて重要だと思うのですが、いかがでしょうか?

 

友利先生 はっきりとは言えませんが、ある程度まで必要なんじゃないですかね。あとは作業療法士個人個人が自分で頑張ってもらわないといけないし。そういう意味では療法士の間で差が出るから損する患者も出れば得する患者も出てきてしまいます。

 

なので、今後作業療法がどうなるかというと、作業療法はなくならない。作業療法は必要。だけど“作業療法士として”働ける人もいれば,働けない人もいると思います。あと、これに関して平均値を上げたいんだったら、学校の設置規制を強くするしかないですね。あまりに学校が多すぎると思います.

 

"熱い"学生が出てきて欲しい

 

ー なるほど。やはり教育的な要素が大きいですよね。では、これから作業療法士を目指す若者に向けてアドバイスをお願いします。

 

友利先生 高校生に向けてのアドバイスとしたら、頑張った人には未来のある仕事だと思います。僕は恩師に「作業療法士の資格を得るということは、一生作業療法の勉強をしていいですよ、という資格なんだ」と言われたことがあります。これは、いつも僕の心の中にある言葉です。だから、それぐらいずっと勉強しなきゃいけないし、それぐらい深いからどこまでも勉強できるし,どこまでも伸びることができるんですよね。

 

ー 先生自身についてお聞きしたいんですが、今後先生はどのような方向性を考えていますか?

 

友利先生 ん~あんまりこうしたいという考えではなく、目の前のことをしっかりやってきただけなんで(笑)。OTの楽しさを広めていって、それによって患者さんもセラピストも両方満足出来る社会を目指したいなと思います。学会のメンバーは、OT以外の一般の人にもOTの面白さを伝えていかないといけないですしね。また、もっと地域に出て行って他職種と触れ合って、OTの役割をビシッと示せたらいいなと思います。

 

ー では、作業療法学生に一番伝えたいことはなんですか?

友利先生 いつも学生に言っていることは、『自分の頭で考えなさい』ということですね。あとは答えはないから自分で創る。

 

ー OTは答えが見えにくいとか、フレームワークが曖昧だと先ほども言われておりましたが、一言で表現すると先生の中ではどんな言葉が当てはまりますか?

友利先生 「納得」ですかね。なんでも納得するための材料なんですよ。だって、それがその人にとって正しいがどうかはわからないですからね。色んな人が納得出来るか、納得が多いものがその時代で正解になるわけです。そして、納得を得るために説明が必要だし、納得するためにはどうすればいいのかという話は常にしていますね。

 

最近学生が少し真面目かなぁと思っています(笑)。一言で言えば、変わっている奴がいないんですよ。いい子が多いんですよね。やってやるぜ!!みたいな奴がいないかな~と思います。

 

ー 僕の周りでは、やってやるぜ!!という人が多いです(笑)。そういう意味ではやはり環境は重要ですよね。例えば、どういった特徴があるのでしょうか?

 

友利先生 例えば、就職の基準が家から通えるところとか、同期がいるところとか、休みが多いとかが先にきますね。休みが多いという選択肢は僕にはなかったですけどね。まったく否定するつもりはないですし、直接怒ったりするわけではないですけどね。

 

学生時代しか経験できないような経験や選択をしてほしいですね。僕らの先輩は道を切り開いてこられました。僕らの世代は学術的なところで地位を上げていく必要があります。学問として深く突き進んだということです。でも次の世代はどんどんそれを外に広げていくべきなんじゃないかなと思います。

 

他の部分でどういう風に生かせるのかということです。作業療法で言えば、生活に密着した部分でどういう風に役立てるのかということを僕も考えていきたいし、皆さんにも考えていってほしいです。だから作業療法をするというより、作業療法を通してどう生活や社会に広げていくのかを考えていってほしいですね。

 

2020年10月13日開催!友利先生も登壇! 

運動・作業における「行動変容」「習慣化」というテーマで、ITを活用したリハビリテーションの新しいかたちを模索していきます。

詳細はこちら

 

ADOCを通して意味のある作業療法を追求する【友利幸之助】

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