今回紹介させて頂く書籍は,すでに多くの理学療法士や作業療法士にとって動作分析の教科書として親しまれています.私自身も学生時代から実習のレポート作成で本書を活用させてもらいました.そのような書籍を改めて紹介させていただくのは,過去に読まれた方に再度読んでいただき臨床に活用してもらいたいという気持ちからでした.本書をまだ読まれていない方も一度手に取って読んでみてください.
著者は動作分析の必要性について序文で以下のように述べています.
患者の動作障害の原因を分析し,治療戦略を立案する一連の臨床意思決定のプロセスは理学療法や作業療法の根幹といってよい。学生や若手療法士の臨床教育において,動作分析の習得に多くの時間が費やされている。動作分析に対し高い関心がもたれるのは,動作分析の質が臨床成績の良し悪しに直結するということを多くの療法士が実感しているから他ならない。
出典:動作分析 臨床活用講座
このように,学生や若手療法士は動作分析が重要であること理解していますが,なかなか思うようにいかないことが多いです.それもそのはずで,動作分析能力を身につけるには解剖学や運動学,バイオメカニクスなど非常に高度な知識を要するからです.これらの知識をバラバラに学習しても,それらの知識を統合して臨床へ組み立てていくことは極めて困難です.
本書では動作分析能力を高めるために,これらの知識を体系的に学ぶことができます.非常に多くの図で示されており,視ることが中心となる基本動作分析をビジュアルで理解しやすい構成となっています.解剖・運動学的に動作を可能にするメカニズムが解説してあり,また基本動作を阻害する代表的なパターンやそれらの評価方法が書かれています.
以上のように基本動作分析に特化した一冊となっていますが,本書を学生や若手療法士以外にもオススメしたい理由があります.
それは,なぜか?
臨床経験を積んだ療法士が本書で学習することで基本動作分析において新しい臨床アイデアを発見することができるためです.経験年数が浅いと本書に書いてあることを実践することで手一杯になってしまい,そこからより深く考えることは難しいです.しかし,数年後改めて基本動作のキホンを学ぶことで経験や他より得た知識を合わせて,より精度の高い臨床推論を行うことができます.