理学療法士(PT)金成仙太郎先生 最終回 -国際スポーツ医科学研究所-

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底上げの必要性

POSTインタビュアー山口:金成先生は育成年代に対する活動にとても力を入れていらっしゃいますよね。 それはどうしてですか?

金成仙太郎先生:現在、日本のスポーツ界ではトップ選手の医科学サポートは世界トップクラスだと思います。しかし地域に目を向けると、まだサポート不足というのが現状ではないでしょうか。私自身そう感じた経験がありました。

インタビュアー山口:どんなご経験ですか?

金成仙太郎先生:それは選抜チームの選考合宿で、将来有望視されている選手に関わらせていただいた時の話しです。その選手はある地方の高校に所属し、テーピングを巻いてほしいと言ってきたので、足首を診ると、すでに腫れており、不安定性もありました。

「どこの病院に行ってるの?」と聞くと、「病院には行っていません。近くにスポーツ専門の病院がないし、1,2週間したら痛みもなくなるので行っていません」と答えました。結局その選手は手術をすることになり選抜チームには選ばれませんでした。 非常に優秀な選手であるのに、ここまで耐えているという現状。そのときに育成年代への関わりの必要性を強く感じたんです。病院紹介が簡単にできたり、子供たちが気軽に相談できる仕組みを作ったり、怪我に対して正確な知識を持てるようにしたり。 日本のスポーツ界が更に強くなっていくためには、トップ選手だけでなく、小学生、中学生、高校生などの選手たちのサポートを更に整えること、つまり「底上げ」がとても重要だと思いました。だから私は「底上げ」をするための活動にも力を入れたいと考えています。
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待つより増やす

POSTインタビュアー山口:そんな経験があったんですね。知らなかったです。 金成先生は学生やトレーナーの育成にも力を入れてますよね?

金成仙太郎先生:はい。これも理由は一緒です。スポーツ現場では幅広い知識を持ったアスレティックトレーナーの方々がいることが理想です。しかし現在、日本体育協会公認アスレティックトレーナーの資格を持っている人は全国で2000人程度しかいません。

このままではなかなか現状が変わってくれません。そこで全国に約10万人いる理学療法士の世界ではスポーツ現場で活躍したい方々が大勢います。でも活動の場が少ない事から、その夢をあきらめてしまう方も多いのではないでしょうか。 そこで微力ではありますが、そのような理学療法士の方々や学生に、活動できる現場、実習できる現場を提供していきたいと思っています。育成年代の「底上げ」だけでなく、サポートする方々の「底上げ」も大切だと考えています。 少しいい過ぎかもしれませんが、それが世界で戦えるレベルに近づくための一つの要因でもあると考えています。

インタビュアー山口:金成先生の活動は僕たち学生でもスポーツ現場での活動を体験できるのでとてもありがたいです。 では、金成先生の今後の展望を教えていただけますか?

金成仙太郎先生:我が社の企業理念の中の一つに、「多角的な方法を用いて人々の健やかな身体と心の維持、ひいては豊かな社会を実現すること」があります。私は今後も様々なアプローチをしながら、多くの方々をサポートしていきたいと考えています。

スポーツ選手、中高齢者、小中高生、また医療従事者、トレーナー、一般企業の方、一生懸命に頑張っている方々に少しでも力になれるように取り組んでいきたいと考えています。また自分自身も様々なことにチャレンジしていこうと思います。 どんなことを聞かれても答えられるように日々多くのことに挑戦し、トレーナーだけでなく、指導者、経営者、また教育者などの立場からアドバイス出来たらと思っています。

「感じる力」

インタビュアー山口:金成先生が自ら様々な現場で行動されているのはとても尊敬します。 最後に学生にむけてメッセージをお願いします。

金成仙太郎先生:はい。 スポーツの現場でも臨床でも言えることなんですが、「感じる力」というものを学生のときから磨いてほしいと思います。「感じる力」とは具体的に言うと、「あの患者さん元気ないな。」「あの選手なんとなく足を気にしているな。」

または「今のタイミングで言葉かけするのがいいかな。」「この練習のときのリスクはこれかな。」という事を感じる能力です。それによりコミュニケーションが上手くできたり、傷害予防ができたりします。 そして患者様や選手、指導者からも信頼を得られます。この能力を磨く方法としては「経験」もあるとは思いますが、私は2つの方法で鍛えられると思っています。 1つは「深く物事を考える」ことです。現在スマートフォンなど情報収集が便利な時代になっており、スピーディに仕事がしやすくなっています。しかし、始めからネットに頼るのではなく、まず「考える」という一つ手順を増やすことが重要かと思います。 なんでもかんでもすぐにネットを見て、答えを出すのではなく、「前に経験したことはなかったかな?どうすればいいのか考えてみよう!」と。物事を考えることを増やし、感じる能力を鍛えてください。 2つ目は、飲み会をいっぱいしてください。(笑)お酒が入ると、素の部分が出やすくなり、その人の本当の考え方や思いを聞くことができます。「自分はこのように思うけど、お前はどう思う?」という感じで。自分が気づいていなかった事や新しい見かたに触れることで、いろいろな「感じ方」を知ることができます。 学生時代は時間もたくさんありますし多くの人と語り、経験し、いろいろと感じてください。 「深く物事を考える!」「いろいろな人の意見を聞く(飲み会をする)!」そのような行動が「感じる力」を磨いてくれると思います。 最後に、自分がこうなりたい!と思っている目標があれば、何をすればよいのかを具体的に設定し、少しでもいいので必ず行動に移してみてください。「難しいかな!」と思考を止めないでください。 もし、簡単にあきらめてしまうということは、単純にそこまで自分の思い入れがなかったということだと思います。夢を実現させたいならあきらめないで欲しいと思います。 例えば、絶対にスポーツ選手をサポートしたい、と思うならばどのようにすればよいのか、諦めずに情報収集して、アクションを起こして、絶対にチャレンジし続けてください。 そうすれば、必ず何かが見えてくるはずです。 写真4

金成仙太郎先生ご経歴

1996年~2001年 名古屋グランパスエイト 2001年~ 勝浦整形外科クリニック 2005年~ 株式会社国際スポーツ医科学研究所 2010年~ 株式会社国際スポーツ医科学研究所 代表取締役 国際武道大学講師、東京YMCA社会体育保育専門学校講師 クーパー・アカデミー・オブ・コーチング講師 千葉医療福祉専門学校講師 〈バックナンバー〉 第1回:無休で働いたトレーナー時代はこちらから
理学療法士(PT)金成仙太郎先生 最終回 -国際スポーツ医科学研究所-

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