職場のリハビリ室を見渡すと歩行をアシストする道具や器具が多くあります。やはり患者様の歩きを再建させるために、これらは必要な設備です。1つずつ見ていくとT字杖、歩行器、免荷装置などと様々な目的や形状をしており、歩行補助具の備品で最も数の多いT字杖も細部までよく見るとそれぞれに個性があります。今まで私は杖の長さが対象者に合っていれば、他のことはあまり気にしませんでした。さらに比較的長期化しやすい脳卒中での入院期間ではその病期に応じたものを選択するべきであると理解はしていましたが、実践できていたとは言い難い状況でした。
この書籍では、歩行補助具について特集されており、セラピストとして普段の臨床であまり気にかけていない部分に触れることができます。それもそのはずで、特集のトピックスの中でいくつかは義肢装具士の先生により書かれたものであるからです。また、急性期での免荷歩行器に関する項目もあります。脳卒中の早期からの歩行は多くの方が知っているところです。しかし、免荷での歩行訓練の実際を知る機会は少ないと思います。具体的にどの程度行うべきか、注意点はあるのか等記載されています。脳卒中を発症して急性期から回復期を経て、在宅生活場面での歩行補助具の活用ポイントが書かれています。
(歩行補助具を) どのように用いるかは急性期、回復期、生活期、それぞれに関わる専門職のための知識・知恵に頼るところが大きい。だからこそ、それを必要がある。
出典:脳卒中リハビリテーション Vol.3
本書籍を一通り読み終えることで得られた臨床での変化は、普段安易に使用していた歩行補助具を一歩踏み込んで考えることができるようになりました。数多くの歩行補助具から最も対象者に合ったものを探し出すのは経験だけでは難しく、またセラピストのみの視点では偏りが生じやすくなってしまいます。そのため多職種での連携により各対象者が最も「その人らしさ」を発揮できるよう歩行補助具の選定を支援していくことが必要であると考えます。
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