触診。我々療法士にとって必須技術であり、最も基本的な技術の一つ。しかし、基本的であるがゆえ、見落としがちな技術でもある。触診がなぜ難しいのかといえば、目に見えていない筋や骨を体表面から確認しなければならない。ある意味では、視覚を遮断された状態で手の感覚に委ねられた技術であるためであろう。
また、触診を難しくしている点の一つに、「触診ができているか否か」確認するための評価がないということも要因であると思う。触診は評価でありながら、それを“評価するための評価”が必要になる。
そんな最も基本的な技術であり、ある意味では最も難しい評価に対して、答えに導いてくれる一冊がこのたび新刊された。
触診を評価するためには
触診を練習する際、「果たして今触っている組織が正解なのか不正解なのか」この点が触診の練習において難しい部分である。それに対し、上記の書籍では「運動」を活用している。
これまでの触診参考書籍の多くは、触診を達成するための「ランドマークの紹介」であったように思う。骨の配置から筋の走行を経て、触診を行う。さらに、筋の起始・停止を含んだ知識によって、触診技術の向上に努めてきたことだと思う。
それに対し、今回の参考書では触診を行うために、対象となる筋を収縮または伸長することで、触れているか否かの評価を行なっている。つまり、触診ができているか否かの判定は、対象となる筋を運動させることで、評価しているということになる。この方法であれば、教えてくれる人がいなくても、自分の身体一つで練習が可能となる。
当たり前の様で、ある意味では盲点であったこの方法を、さらに詳しく動画にて解説してくれている。
触診とエコー画像
前述した様に、触診の難しさは「目に見えていない筋や骨を体表面から確認」することの難しさである。目に見えていない物体を、触診する技術には、優れた手の感覚が必要になる。
とはいえ、本当にさわれているか否かはブラックボックスであることに変わりはない。その点に関して、本参考書では、エコー画像を多く取り入れている。
エコーによって、視覚的に筋や骨を捉え、このブラックボックスに一筋の光を灯した。現状で、勤務先にエコーを取り入れているケースは少ないと思うが、それを補ってくれるのが本参考書となるだろう。
おすすめの6ポイント
1,触診のための評価が理解できる。
2,手指・足趾の小さな筋に対しての触診が紹介されている。
3,動画にて確認できる。
4,触診写真の他、エコー写真が載っているため、目に見えない部分の解剖を確認できる。
5,前鋸筋上部線維の触診方法が書いてあったのは驚きであり、新しい知識となった。
6,胸部の触診まで書かれている点は、呼吸療法にも生かされる。
※立ち読みはこちらから
>>https://www.yodosha.co.jp/yodobook/book/9784758102407/index.html
工藤慎太郎先生インタビュー
第二回:効率よく人生を楽しむ
第三回:考え方の教育
最終回:温故知新