言葉の壁
インタビュアー:言葉の壁はどうでしたか?
岡田先生:授業はドイツ語で受けますが、医療系の専門用語はラテン語なんですね。ですからラテン語を学ぶ授業もありました。
それから文献を読むときは英語ですし、医療英語の授業もあるので、3つの言語を同時に扱わなければなりません。
最初は辛かったですね。今思えばいい経験だったと思いますが、やってもやっても目に見えた結果が出ないというか、いつになったら問題なく話せるようになるんだろうと思っていました。
養成校に入学してからの数ヶ月は、特に悩みました。語学学校では割と出来るかもしれないと思っていたんですが、養成校に入学し、6時間くらい立て続けに授業を聞いた時に、ドイツ語の専門用語を知らないので、ドイツ語が分からない。
ドイツ語が分からないので、ラテン語の説明をされても分からない。集中して聞こうとしてもどんどん授業が進んでいってしまって、ノートすら取れませんでした。
つらい経験
インタビュアー:実際学校に入って授業についていけないというときにはどうやってカバーしたのですか?
岡田先生:最初は全て録音して家に帰ってから聞き直したりとか、クラスメイトのノートをコピーさせてもらいました。授業では理解できないので、帰宅してからが勝負でしたね。
筆記試験は隅々まで丸暗記すれば何とかなるだろうと思い、一番最初の試験で「もし合格点を取れればこの先もやっていけるかもしれない」と、徹夜で挑んだらクラスで1位になってしまったことがありました。
でも私、しゃべれないじゃないですか。その次の日には実技口頭試験があったんですよ。その実技口頭試験は散々で、何を言っているのかも分からなければ、言いたいことも表現できないということで赤点でした。
そうすると周りからおかしいと怪しまれ、カンニングの疑いをかけられてしまい、次の筆記試験から私だけ身体検査を受けさせられたなんてこともありましたね。それはちょっと辛かったですね。
ドイツ理学療法士国家試験
インタビュアー:国家試験は日本と同じような感じなのですか?
岡田先生:全く違いますね。州によって多少の違いはありますが、私がいた州は比較的厳しいと言われていたようで、全部で42試験ありました。
3週間半かけて、日曜日以外は毎日が試験という日々でした。42回も試験を受けるんです。単純な選択問題もあれば、数時間かける論述試験もありましたし、もちろん実技試験も。
グループ指導の試験や、病院で実際のカルテをみて治療計画を立てて実践するという試験もありました。色々なパターンがありましたね。
合格率は学校によって様々だと思いますが、6割前後かと思います。卒業試験が国家試験なんです。ところが、その国家試験は人生で2回までしか受けられません。
2回落ちてしまったら、違う州で一から養成校をやり直し、そちらで再受験することは可能なようですが。
講習会情報
【目次】
第二回:ドイツの教育システム
第三回:留学のお金事情
第四回:ドイツ理学療法士国家試験
第六回:人に認めてもらう方法
最終回:ドイツと日本でPT免許を取得
岡田瞳先生経歴
経歴:
1982年10月31日生まれ、茨城県出身。 筑波大学在学中に女子バスケットボール部に所属しながらスポーツ医学を専攻し、アスレチック=トレーナーの基礎を学ぶ。
卒業後は単身ドイツに渡り、フィジオセラピスト(理学療法士)の国家資格を取得。その後アスリートのコンディショニングに特化したスポーツクリニック『スポーツリハ=ベルリン』にてブンデスリーガやナショナルアスリートの治療、リハビリ、トレーニング指導に携り、同時に様々なブンデスリーガ加盟クラブの専属フィジオとしても活動。
2012年、約7年半のドイツ生活に終止符を打ち、2012 FIFA U-20女子ワールドカップをきっかけに帰国。同大会ではFIFAメディカルスタッフの一員として国際レフェリーのコンディショニングをサポートした。
2013年 厚生労働省より特例認定を受け、日本でも理学療法士の免許を付与される。
2014年、株式会社アレナトーレに入社し、さらに活動の幅を広げる。
【所属】
【資格】
理学療法士(ドイツ/日本)
国際スポーツ理学療法連盟公認スポーツフィジオセラピスト(ドイツ)
マニュアルセラピー(ドイツ)
医療徒手リンパドレナージ(ドイツ)
高等学校保険体育教員免許(日本)
赤十字救急法救急員(ドイツ/日本)
キーワード
♯国試 ♯ドイツPT ♯実習