褥瘡(床ずれ)ケアとチーム医療 いい連携を生み出す工夫【森田智之先生】

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褥瘡チームの中でのPTOTの役割

 

ー 褥瘡ケアは多職種が関わってくる領域だと思いますが、医療チームの中で理学療法士、作業療法士の役割ってどんなとこにあると思いますか?

 

森田 まずうちは、理学療法士と作業療法士でも役割が少し違っていて、座位姿勢は理学療法士、ベッド上臥位は作業療法士がメインでみるようにしています。

 

触診で座圧を確認したり、車椅子座位は理学療法士の方が得意ですし、一方で作業療法士は、ベッドやマットレスについての知識が豊富だからです。

 

ー 他の医療職との連携について工夫している点はありますか?

 

森田 医師や看護師などを含めた医療チームの中で、僕がいつも意識しているのは、少しでも分からないことがあったら聞くようにしています。それこそ、なんの躊躇もすることなくです。

 

回診では、創の処置と合わせてみんなで傷を見たりしますが、例えば薬剤師の人に「あの軟膏はどういう効果があるんですか?」とか、管理栄養士さんに「この方、ご飯ちゃんと全部食べれていますか?」とか、理学療法士や作業療法士が「あんなことできます、こんなことできます」と言うよりはまず質問するようにしています。

 

そうやって、自分の専門以外の他分野のことについて興味を持って色々聞いていれば、他の職種からも僕らが得意とする領域、例えば車椅子のことであったりについて聞いてきてくれるようになりました。

 

僕らの役割は、創を治すためにやることですよね。チームで褥瘡に関わる目的は1つで、この創が良くなる、または再発しないっていうのが大きな目標になります。

 

理学療法士、作業療法士がやれることは”ちょっと”しかありませんが、その”ちょっと”は僕らにしかできないんことなんです。

 

他の職種もみんなそう。それが合わさって、創が良くなるんだと思うんです。だからこそ密にコミュニケーションを取って、情報共有していくことが大切だと思っています。

 

シーティングの科学

ー 先生は日本シーティング・コンサルタント協会の副理事長をされていますが、これはどういった活動をしているんですか?

 

森田 シーティング技術やシーティングの必要性広く、PTOTを中心に広めていこうという団体で、僕がいる学術局では、シーティングのエビデンスの構築などを目指した学術的活動をしています。

 

ISOに準拠した座位姿勢計測システムを当協会で検討し、埼玉県産業技術総合センターにソフト開発していただきました。

 

座位姿勢の評価は、これまで目視や専門家の経験と勘など定性的なものがほとんどでした。今回開発したソフトは国際規格である「ISO16840-1」に準拠した簡易計測でき、今後は座位姿勢がセラピストの介入によってどう変化したのかなど、定量的な評価測定が可能になっていくと考えています。

 

詳しくは:http://seating.web.fc2.com/tools/rysis/aboutrysis.html

 

ー シーティングに関してですと、僕らが色々評価してセッティングしても、なかなか病棟の職員やご家族がその通りにタオルやクッションを入れたりするのって難しいと思います。何か工夫している点はありますか?

 

森田 いかに高い再現性を実現するかっていうのは確かにとても大事ですね。

 

僕らも評価にはタオルを使います。タオルは柔らかいし、その人の身体の形になってくれて、的確な支持力もあるので適していると思います。しかし、それでは再現性に難がありますよね。誰がやっても、もしくは本人が座るだけで実現するには、どうすればいいんだろうかと考える必要があります。

 

今の車椅子はベルトで姿勢の調整ができるようになっているのはご存じですか?

 

 

今は、ベルトを締めたり、緩めたりすることで、身体にフィットさせることができます。折り畳み式の車椅子の場合、折り畳めるが故に、ベルトを締めすぎるとフレームがゆがむので気を付けていますね。

 

ロホクッションとかは、空気量の調整や確認の仕方が難しかったりするので、他の用事で通院してきた時にリハ科に立ち寄ってもらったりしています。

 

なので、教科書的にこうすればいいというのではなく、実際に座ってもらって骨盤の位置が適切か触診をしたりとか、コミュニケーションを取りながら最適なシーティングを探っていく必要があると思います。

 

研究をするのに遅すぎるなんてことはない

 

ー シーティングや褥瘡というと、理学療法士が関わる領域の中でもかなりニッチな領域だと思いますが、どういった自己研鑽を積んできたんですか?

 

森田 神奈リハは、脊髄損傷の方の車椅子作成の処方案は、理学療法士が作るんですよ。私が入職した頃は、オーダーメイドで作るというのが主流で、その人の能力や身体に合わせながら、1人1人に適合したものを提供すると、すごく生活の幅が広がるということを体験してやりがいを感じました。

 

あと、実は入って間もない頃は、まだ冨田昌夫先生が神奈リハに在籍していたので、「冨田さんのような臨床ができる理学療法士になりたい」と思い、動作分析研究会スタッフとして活動をお手伝いしていました。

 

それから、だいたい6~7年くらい経って、冨田さんが退職をするということになった時に、それまでの「冨田さんのとこの若い衆」という肩書きみたいになっていたものがなくなるとなって不安になったんですよ。

 

これからは「自分1人でこれから理学療法士として、歩んでいかないといけないんだ」と思って、ちょうど医師から症例報告をすることを勧められて、それから学術活動に取り組むようになりました。

 

僕は、一度社会人になってから理学療法士になっているので、人生初めての学会発表は、37歳のとき。それまでは学会発表とかいっさいしてきませんでした。

 

だから研究を始めるのに、遅すぎるなんて関係ないですよね。もし、年齢のせいで尻込みしている方がいるなら、それは勿体ないと思います。

 

ー 初めての学会発表のテーマは褥瘡だったんですか?

 

森田 いえ、それは嚥下障害の事例報告です。褥瘡はその次に発表しました。医師から「褥瘡をみるのに、そういう視点は理学療法士じゃなきゃ、中々みれないよ」みたいに、褒めていただいたんですよ。

 

褒めていただくと、調子に乗って「もっと頑張ろう」ってなるものじゃないですか(笑) そこから、どんどんのめり込んでいったっていう感じです。

 

ー 森田先生にとってプロフェッショナルとは何ですか?

 

森田 患者さんにとってより良いことは何なのかをディスカッションできるっていうことです。自分のやってることを信じ込まず、いつも疑ってかかること。

 

僕は、自分がやってることが本当に正しいのか、いつも心配です。結果が出ても、「あぁ良かった」っていう風にはなかなか思えなくて、「このあと大丈夫だろうか」とか「帰ってから大丈夫かな」とかよく考えてしまいます。

 

だからこそ、本当に正しかったのかとかというのを検証するために、学会発表もするし、論文も書く。自分がやっていることを皆さんにお伝えして、それに対してご意見を頂きたいと思っています。

【目次】

第一回:褥瘡ケア(床ずれ)に関わるPTOTにマストな「問診力」

第二回:褥瘡ケア(床ずれ)とチーム医療 いい連携を生み出す工夫

 

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