保険適応を目指して
POSTインタビュアー:先生の研究分野である「ウィメンズヘルス」の今後の理学療法における保険適応についてはどのようにお考えですか?
須永先生:やはりそこの部分では、個人で活動されている方が多くいらっしゃいますし、関わりたいと思っている方も凄く多いということは耳にしているため、重要な課題であると考えます。
ウィメンズヘルス理学療法研究会を立ち上げるきっかけになったのが、同じ領域の研究をしているもの同士が集まり、PT協会に働きかけて部門を作っていただきたいという想いでした。
保険適応というところを目指していきたいと思い、研究会を立ち上げたのですが、日本の中でガイドラインを作り、EBMを確立していかなければ適応にはならないと思うんです。先日、部門ができることが決まったようで、我々としてはまず一歩進んだかなと思います。
医療制度自体が苦しい現状で、妊婦さんは病気ではないですし、ただケアという意味では保険適用が難しいのも現実です。ただ、高齢者の地域で行う体操教室と同じように、この分野でも同じようなことが言えると思っています。
体操教室にいらっしゃる方でも、痛みなどの症状が重い方だったり、体力測定でも病院に行けば骨粗鬆症と診断を受けてしまうような値の方がいて、我々理学療法士の見解としては「医療機関を受診した方がいい」と勧めたりすると思います。
女性特有の更年期障害や妊婦さんに対しても予防的なプログラムも必要だと思いますし、医療的なアプローチが必要な人には、医療機関を勧められるような環境になったらいいなと思います。
ウィメンズヘルスを広めるために
インタビュアー:ウィメンズヘルス理学療法研究会を発足してからリハビリ業界が変わってきたなと感じるところはありますか?
須永先生:私たちがあえて”ウィメンズヘルス”という言葉をよく使うようにしました。
今までも全国学会に行って、女性特有の症例や研究に関する発表はあるのですが、ウィメンズヘルスという領域がないので、運動器分野や予防分野など演題を出す分野がまちまちです。演題として数多くありますが、分野ごとに分かれて発表されているので、ウィメンズヘルスの領域だと認識されずに過ごされてきました。
研究会に参加されている人にも呼びかけて、演題を出す際のキーワードに「”ウィメンズヘルス”を入れましょう」とすすめたりして、ここ2〜3年でウィメンズヘルスという言葉をよく聞くようになってきました。
研究会を立ち上げた世話人が5人いるのですが、全国学会などでもウィメンズヘルスに関する講演依頼を受けることが増えました。また”理学療法学”の執筆や”ウィメンズヘルス・リハビリテーション”という教科書を出版させて頂きまして、業界内でウィメンズヘルスに関する意識が変わってきているように思います。
インタビュアー:男性にも知っておいてほしいことだと思うのですが、なかなか興味・知識を持っている方が多いわけではないと思います。その点に関してのアプローチは何か考えていらっしゃいますか?
須永先生:私が私自身、女性が「こんなに大変なんです!」とヒステリックに言うのはあまり好きではないんです。あま女性というところで大変さだけをアピールするよりも「こういうことが出来ます」というアピールの方がいいのかなと思うところがあります。
男性にもどんどん入ってきてほしいなと思いますが、まずは学生のうちから耳にする機会を作った方がいいと考えています。働きかけはしていきたいですね。
須永先生ご登壇イベント
【目次】
第一回:ウィメンズヘルス理学療法学
第二回:保険適応を目指して
第三回:ママとしての強みを生かす
>須永康代先生経歴
埼玉県立大学保健医療福祉学部理学療法学科卒業
牛久愛和総合病院リハビリテーションセンター就職広島大学大学院保健学研究科修了 修士(保健学)
広島大学大学院保健学研究科博士課程後期 在学中現在、埼玉県立大学保健医療福祉学部理学療法学科 助教として勤務
<活動>ウィメンズヘルス理学療法研究会 世話人<著書>ウィメンズヘルスリハビリテーション ウィメンズヘルス理学療法研究会編集
<論文>Biomechanics of rising from a chair and walking in pregnant women. 2013 Applied Ergonomics 44 (5)
キーワード
♯大学教員 ♯理学療法士
♯ウィメンズヘルス ♯リハビリテーション