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なぜ、日本ではなくオーストラリアへ? 理学療法士(PT)大学院進学の動機   -連載第1弾-

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結果が伴わない症例を経験した  

私は現在、西オーストラリア州にあるカーティン大学の筋骨格系専門修士に通っています。2013年に同大学理学療法学科を卒業し、こちらで理学療法士の資格を取得しました。同年、西オーストラリア州のロッキンハムという所にある Grange Physiotherapyに就職し現在も 大学院に通う傍パートタイムで働かせて頂いている状況です。

  私が勤めているクリニックは主に筋骨格系疾患を有する患者さんがいらっしゃるのですが、大学院進学を決める前に感じていたことは、自分の持っている知識・技術では痛みや機能改善が望んでいる程認められない症例を経験することが少なからずあるということでした。写真は江戸さんが勤務しているクリニック。
 

クリニカルリーズニング(臨床推論)に沿って授業が進められている

 

学部では、オーストラリアでダイレクトアクセス(患者さんが自分の選択で理学療法士を医師の診断を介さずに受診することができること)が認められていることもあり、多くの時間がクリニカルリーズニング(臨床推論)に沿って授業が進められていきます。ここではクリニカルリーズニングの詳細については割愛させいただきますが、簡単に説明すると、主観的評価(問診)によっていくつか予測される診断名を出し、客観的評価(理学療法・身体的評価)によってそれらの予測される疾患を否定・確認し、それに沿って治療や再評価を行っていく一連の思考過程のことを言います。

 

  私が難しいなと感じている所は、特に慢性的な痛みを訴えられている方の治療・マネジメントに関しては、学部でも一通り習うにしろ、では実際にどういったことを行っていけばいいのかというところが自分でも欠けているなと感じていました。そのため、身体的な評価・治療のみでは回復が認められず、患者さんに対して自分の力不足を痛感すると同時に大変申し訳ないと思う日々を送っていました。写真は江戸さんが勤務しているクリニックだが、個別の診察室がPTには与えられている。

 

様々なことが学べることも魅力

そういった経緯もあり、大学院にて今の自分では未だに対応が最善でない分野(慢性痛のマネジメント)を学ぶため、またより深い部分での徒手的な治療や評価方法とその場にふさわしい適応、さらに今では医療職種の間で当然の知識として浸透しているEBP(Evidence Based Physiotherapy)の実際の応用などを学ぶために大学院進学を決めました。

 

大学院のカリキュラムについて(日本との比較)

カーティン大学の専門修士はMaster of Clinical Physiotherapy と呼ばれ、現在は スポーツ、ウーメンズヘルス、筋骨格系の専門修士に分かれています。今回は私が専攻している筋骨格系の専門修士について紹介させてもらいますが、それぞれのコースに興味のある方はカーティン大学のホームページまたは以下のリンクより検索してみて下さい(http://handbook.curtin.edu.au/courses/31/319879.html)。

 

 

学生の大半はオーストラリア以外の国から来ている

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筋骨格系専門修士、Manipulative Majorと呼ばれているこのコースですが、フルタイムの場合は一学期に5教科、二学期に4教科の計9教科となっています(以下、表参照)。一学期のA&Pでは、週3時間の講義にて筋骨格系疾患の病態理解(変形性関節症、腱鞘炎、椎間板ヘルニア、肩関節疾患、神経根障害など)やそれらの疾患と類似した疾患に対する鑑別診断などを学びます。

 

また、週2時間のLabも設けられており、実際の献体を用いての機能解剖学の学習が行われます。これらの授業はMSAの授業とも関連が深く、A&Pにて学んだ疾患に対して実際に徒手的・整形外科的な評価はどのように行うのかなどを学びます。MSAでの授業内容は、私が学部の時に教わった内容を再度復習するといった感じで、あまり学部との差は無いようですが、学生の大半がオーストラリア以外の国から来ている留学生ですので、復習を含めた意味での授業構成になっていると感じます。

 

これらの内容も、ダイレクトアクセスが基盤にあるため診断学を中心に学んでいきます。

 

臨床に対する疑問をみんなでディスカッション

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EBPでは文献の批判的吟味について教わり、エビデンスを実際にどういった形で臨床に活かしていくのかというところに重点が置かれています。

 

また、学期の中盤からはジャーナルクラブと呼ばれる、毎週2人1組のペアを組み、約10人前後のグループの前で自分らの臨床に対する疑問についての 論文吟味とディスカッションが行われます。

 

内容としてはPICO (ピコ)と呼ばれる方法にて臨床で面している疑問に対し、具体的にどういった患者らに対してどういった治療が最も効果があるとされているのか、システマティックレビューを行いながら最善の文献を見つけてその批判的吟味をグループとシェアしながら話し合っていくという内容です。

 

江戸英明先生経歴

経歴

2006年3月 帝京平成大学専門学校卒業

2006年4月 帝京平成大学医学部附属溝口病院入職

2008年12月 帝京平成大学医学部附属溝口病院退職

2009年2月 渡豪

2011年 Curtin university 理学療法科入学

2013年 Curtin university 理学療法科卒業

同年〜 Grange Physiotherapy 入職

2015年 Curtin university Master of Clinical Physiotherapy (Manipulative Major)入学

なぜ、日本ではなくオーストラリアへ?  理学療法士(PT)大学院進学の動機   -連載第1弾-

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