令和3年度介護報酬改定の主な事項について1月18日、第199回社会保障審議会介護給付費分科会にて発表された。シリーズ第2回目の記事となる今回は訪問看護(リハが関わる部分のみ)としていきたい。大枠は以下のとおり。
地域包括ケアシステムの推進部分から
看護体制強化加算の見直し
・算定日が属する月の前6月間において、利用者の総数のうち特別管理加算を算定した利用者の占める割合の見直し
・【介護予防】訪問看護の提供に当たる従業者の総数に占める看護師の割合が6割以上であること (新設)
制度の安定性・持続可能性の確保から
看護体制強化加算の見直し
看護体制強化加算:2015年の改定で新設された加算。算定要件を満たして、高度な医療の必要な方に対する訪問看護体制を整え、提供した場合に事業者に対して所定の単位数が加算されるもの
看護体制強化加算については、本来の目的である医療の必要性のある“”要介護“”状態あるいは頻回の訪問が必要とされるターミナル期の利用者を受け持っている事業所の加算が維持(減算)される改定となった。一方で取得の維持のための実績要件は緩和された。
訪問看護の リハの評価 ・提供回数等の見直し
訪問看護及び介護予防訪問看護について、機能強化を図る観点から、理学療法士・作業療法士 ・言語聴覚士 によるサービス提供に係る評価や提供回数等の見直しが行われた。
看護体制強化加算の見直し
【看護体制強化加算(I)】
600単位/月 → (改定後)550単位/月
加算取得要件
・算定月前6月間における「緊急時訪問看護加算」の算定割合が50%以上(変更なし)
・算定月前6月間における「特別管理加算」の算定割合が20%以上(緩和)
・算定月前12月間における「ターミナルケア加算」の算定利用者が5人以上(変更なし)
【看護体制強化加算(II)】
300単位/月 → (改定後)200単位/月
加算取得要件
・算定月前6月間における「緊急時訪問看護加算」の算定割合が50%以上(変更なし)
・算定月前6月間における「特別管理加算」の算定割合が20%以上(緩和)
・算定月前12か月間における「ターミナルケア加算」の算定利用者が1人以上(変更なし)
【介護予防訪問看護の場合の看護体制強化化加算】
300単位/月 → (改定後)100単位/月
加算取得要件
・訪問看護の提供に当たる従業者の総数に占める看護職員の割合が6割以上(新設)
(2年の経過措置期間を設ける。急な看護職員の退職等により看護職員6割以上の要件を満たせなくなった場合においては、指定権者に定期的に採用計画を提出することで、採用がなされるまでの間は同要件の適応を猶予する)
・算定月前6月間における「緊急時訪問看護加算」の算定割合が50%以上(変更なし)
・算定月前6月間における「特別管理加算」の算定割合が20%以上(緩和)
療法士の訪問の評価 ・提供回数等の見直し
訪問看護及び介護予防訪問看護については、“”本来の目的を再確認し機能強化をはかる“”ことが本改訂の一つの目的となっている点に注目したい。
訪問看護
【理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による訪問】
297単位/回 → (改定後)293単位/回
予防訪問看護
【理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による訪問】
287単位/回 → (改定後)283単位/回
【1日に3回以上、理学療法士等が指定介護予防訪問看護を行った場合】
1回につき100分の90(10%減算) → (改定後)1回につき100分の50(50%減算)
※具体的な計算方法については疑義解釈を待つ必要あり
【理学療法士等が利用開始日の属する月から12月超の利用者に指定介護予防訪問看護を行った場合】
1回に付き5単位を減算(新設)
共通部分
【算定要件】
「対象者の範囲は、訪問リハビリテーションと同様に、通所リハのみでは家屋内におけるADLの自立が困難である場合」(追加)
総括と今後の見通し
訪問看護における改定の主軸は“”機能強化と提供サービスの明確化“”であり、必要・不必要の仕分けが明確となった改定である。また、2020年度の診療報酬改定にむけた中医協総会資料を振り返るとよい。(2019年7月17日)
・療法士の割合が多い訪問看護事業所が増加する中、半数近くの訪問看護事業所には療法士自体が所属しておらず、偏りがある。
・療法士の所属割合が8割以上の事業所では、24時間対応体制加算の届出割合が看護師のみの事業所の半数以下となっている。
訪問看護が本来果たすべき
【疾病又は負傷により居宅において継続して療養を受ける状態にある者に対し、その者の居宅 において看護師等が行う療養上の世話又は必要な診療の補助】
について自事業所が行えているか考える必要がある。
療法士の所属が多い事業所は、事業所を分化して看護師の割合を増やすなど、今後迫られる事業所もあるかもしれない。“持続可能性の確保”と題されたように、非常時だからこそ、必要な訪問看護が提供できているか?立ち止まって考えてはいかがだろうか。
もっと視野を広げれば、リソースである人員を分配し、リスクを回避できるような別のサービス事業所を新たに作っていくなどの方策も考える必要があるかもしれない。
筆者は、保健所の指示等を待たずしてCOVID-19が疑わしいと判断し、訪問を打ち切られてしまった利用者等も経験しており、有事の際に訪問看護が提供できない環境を事業者側が作ってしまっていないか?
改めて事業所同士で協力関係を結び、支援を継続する方法はないのか?事業所の役割を考える必要があるといえる。
【目次】