数々の理学療法関連書籍を執筆、編集、監修してきた理学療法士協会元会長の奈良勲先生がこの度、初の小説作品を出版されました。奈良先生とは遡ること約3年前、POSTのインタビューに答えていただいたご縁でご献本いただきました。
来年には80歳になられる奈良勲先生は現在でも、理学療法業界の教育として執筆活動やこれまで出版された書籍の再編を行うほどのバイタリティをお持ちの先生です。
その、理学療法に対する愛情はPOSTのインタビューでも語られ、会長選の演説の際「私も皆様と同様、理学療法を愛しています」という言葉とともに当選されました。その後、14年間協会長として務められました。
その言葉通り、本書の冒頭でも「本書を人生に感謝して友人と理学療法界の同僚に捧げる」と書かれたページから始まります。非常に奈良先生らしいお言葉から始まり、信心深さを感じました。そんな、奈良先生はクリスチャンでもあります。詳しくは、インタビューにてお話しいただいておりますが、本書は小説ではあるものの回顧録でもあります。
そんな奈良先生らしい内容が本書では対話形式でしたためられています。
魔女とは何か?
本書では、若かりし頃の奈良先生をモチーフに、ご自身が経験されたことを元に魔女になりたくないと嘆く“エミリア”との対話が綴られています。見識広い奈良先生との対話は、宗教観だけではなく、社会・政治、文化人類学にまで話は及びます。
帯にも書かれている通り“今だからこそ問われる「歩むべき道」”の言葉通り、この2人の対話は全て自分自身の中での対話なのではないかと私自身感じました。
奈良先生は、渡米に伴い当時所属していたキリスト教会の奨学金を得て、日本人としてアメリカという地で最先端の理学療法を学びました。日本の協会が設立して間もない頃、アメリカの理学療法免許を書き換え日本の理学療法士となった第一号です。
理学療法の先端教育を受けた奈良先生が日本の現状をみて、当時は相当な葛藤があったことと思います。その後、協会長となり“マスタープラン”を作成。今の理学療法基盤を作られました。
会長時代には、国際学会を成功され、その後数々の賞を受賞されています。理学療法界にとって偉業の数々を成し遂げられた理由の一つが、自分自身との対話から導き出された「歩むべき道」であり、本書で綴られた“魔女との対話”だったのではないかと思います。
未来に不安を抱える若者に捧ぐ
今、新型コロナウイルスの猛威によって未来が昔以上に見えにくくなった今、本書は“今”自分自身との対話によって「歩むべき道」を見つけられる書籍になっています。
様々な情報に触れられる現代において、外部からの情報に踊らされ続ける今、未来への不安をぬぐい去るためにも、今一度自分自身との対話に時間をかけてほしいと思います。
まずは、その対話を本書から見出し、自分自身との対話のヒントにしていただければと思います。最後に、本書をご献本いただきました奈良先生にこの場を借りて、感謝申し上げます。
【奈良先生インタビュー】
第一回:理学療法50年史
第三回:“未発達”への挑戦
第四回:“小象”の理学療法
第五回:患者さんは教師である
最終回:僕は理学療法を愛しています
番外編:科学とアートの融合