会員は協会に何を期待すればいいのか?【日本理学療法士協会 第9代会長|斉藤秀之】後編

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今年6月会長候補者選挙で選出された斉藤秀之氏が、第9代会長として理事会で承認された。今年の介護報酬改定後も、22年の診療報酬改定、23年のWPT総会東京開催、24年の診療・介護・障害福祉サービス等報酬同時改定など気の抜けない日々が続く。

お世辞にも追い風とは言えない現在の理学療法士業界において、なぜ協会長として立候補したのか?その決断までの、心情を取材した。前編では、13万人弱の会員を有する組織のトップとなる新会長が考えるリーダー論を伺った。

後編では、インタビューアーである私(今井)が一会員としてもつ疑問「我々会員は協会に何を期待すればいいのか?」について伺った。回答を吟味しながら「今と昔では変わった」と会員の期待が時代によって変化していると語った後編、理学療法士協会の新リーダーが考える未来を共有したいと思う。

注)緊急事態宣言中のため取材はZOOMにて実施。

▶︎前編

ー ズバリお伺いします。我々会員は、今後協会にどのような期待を寄せればよいのでしょうか?協会が会員にとってどのような存在なのかを改めてお聞かせください。

斉藤:私が若い時に協会に求めていたものと、今現役で働いている方が求めているものは、恐らく違うでしょう。まさしく、協会が皆さんに求められる組織になるにはどうすればよいかが今の命題だと思っています。


なぜなら、今は(会員の)皆さんが協会に対して多種多様な意見をお持ちだからです。協会として多様な価値観を提供できなくては、所属するロイヤリティやメリットを感じていただけないでしょう。

 

今までの発想を変えないと厳しいことは協会全体が理解し始めているので、様々な方の意見や情報をまず汲み上げて、吸収できる組織になりたいと思っています。思い切った組織運営をすることで、協会員皆さんからサポートしていただける組織を作りたいです。


そして、これからはトップダウンのやり方のみではなく、会員の皆さんより批判や否定も含めたご意見を寄せていただき、それを事業に反映させていかないといけません。そうでないと、所属メリットを感じていただけず、誇りにも思ってもらえないでしょう。

 

これからは協会が世間にもっと露出して国民から支持されないと、会員の皆さんも社会の中で窮屈に感じてしまうと思います。学会や連盟、その他色々な理学療法関連団体の“ハブ”的な存在になって、一致団結する際にリーダーシップをとれることが組織的には大事だと感じています。

 

ー 若い会員の皆さんが懸念している点が、2040年問題にもあるような供給における「入学定員数削減」についてと「需要の拡大」についてだと思います。実際に今後拡大路線へ進んでいくとなった時の協会の役割とは何だとお考えですか? 

斉藤:協会は今まで現場から何かをこじ開けていくというのを規制していたように思います。本来はそうではなくて、世の中のニーズに志向していくと当然ながら新しい方法は現場から生まれるはずです。

 

需要の拡大においては、好事例を横展開し、利害関係が生まれればそれを調整するとことが、これからの協会の役目になるでしょう。業界全体が正々堂々と活動できるように、協会がマーケットをきちんと醸成させる必要があるでしょう。その成果が一つでも二つでも会員の皆さんに伝われば、皆さんの活力に繋がる気がします。

 

ー 斉藤会長がお考えになる理想の形にたどり着くためには、公益社団法人という組織形態が邪魔してしまうのかもしれませんが、その点はどうお考えでしょうか?

斉藤:その件について私は知恵があると思っています。ただ、その「壁」が今までの50年に渡る協会の歴史が関わってきてしまいます。歴史を守りつつも時代に合うスタイルに少しずつ変えていくのが私の役目でしょう。ですから、出口を見定め計画的に事業を進めていかなくてはいけません。そのためには、情報を入手するためのネットワークを張り巡らせなくてはいけないと思っています。


入学定員については、数が多いことが悪いのではなく、質が悪くなることが問題なだけです。ですから、これから人口が減っていく中で、今のままでの教育スタイルが未来永劫適切なのかというのは議論すべきでしょう。あと、需要拡大についてはできれば日本の免許でアジアやアフリカでも働けるようになればいいなと思います。

 

ー 斉藤会長が先ほどおっしゃった通り、資格が海外諸国で使えるとなれば流れが変わると思いますが、具体的にはどのような変化が期待できるとお感じでしょうか?

斉藤:恐らく、今の若い世代の人たちは私たちの世代よりもボーダーレスのような気がしていて、気軽に海外へ行ける感覚は若い人の強みだと思っています。(理学療法士の)平均年齢が若いことが悪いように言われがちですが、逆に言えば今の医療・介護業界における一番の強みになっているのではないでしょうか。この強みを活かして、もう一度業界に追い風を吹かせたいと考えています。

 

ー 需要の拡大に関して私たち理学療法士が介護士に置き換われば、介護士不足の問題を少しでも解決できるのでは?と考える方もいます。置き換わるとなると表現が大げさになりますが、この日本の課題に我々理学療法士が寄与できるのでは?とも思います。斉藤会長のご意見をお聞かせください。

斉藤:私は、理学療法士が介護現場の責任者的立場で、ボディメカニクスなどの知識を役立てられるのではないかと思っています。そのような立場で理学療法士が介護現場に参入することによって、腰痛問題や自立支援などは格段に進むことは容易にイメージできます。


一方で(自立支援において)理学療法士は時に心を鬼にしなくてはいけない立場ですが、優しくすぐに手を差し伸べてしまう人や、見ていると自身の心が病んでしまう人も増えているように感じています。そういう人にとっては介護分野で働いた方が、本人にとっても利用者にとっても組織にとってもいいなと思ったケースはあります。


多くの人が、理学療法士さんが介護分野でタスクシェアしていくことはあり得ると考えているでしょう。また、止むを得ず人事異動に伴って既に介護現場で働いている方もいます。正直、それを協会として「ダメ」とは言えません。つまり、これからは理学療法士さんの中でも多様性が出てくることも包含しなくてはいけなくなるでしょう。

 

介護業務に参入するということは、看護業務や医師業務など他の職種とのスキルミクスをする可能性もあると思うので、マイナスに取るよりもきっかけとして捉えればいいかなと思います。このきっかけは需要の拡大にも繋がりますし、優秀な人は職場のトップにもなり得るでしょう。

 

ー そういった時代の流れにおいて、職能団体としての役割もある協会は「やらない人」も救わなくてはいけないという考え方もできます。「仕事がなくなるかも」という不安を抱えている理学療法士もいると思いますが、今後そのような危機感は個人個人が持つべきなのでしょうか?

斉藤:世の中の構造上、雇用調整は労働環境において致し方ありません。つまり、飲食業界などで今起こっているようなことは決して人ごとではないということです。どのような人が雇用調整の対象になりにくいかということは、各個人が考えるべきでしょう。

 

ー 協会責任と個人責任の線引きが非常に難しく最初の質問に戻ると「我々会員は協会に何を期待すればいいのか?」という繰り返しの疑問になりますが、協会に過度な期待、個人の問題まで求めてしまっている方がいらっしゃるのも事実なのではないでしょうか。

斉藤:以前は、協会に対して全能・万能主義的なイメージを持っていた人が多かったのでしょう。しかし今はそうではない時代背景があります。医療行政は医師会や看護協会、議員の方々との調整があってこそ、私たちの大義を認めてもらえるというのが現実だからです。

 

つまり、「協会に言えばなんとかなる」というのは現実的ではないのです。雇用に対しても同じで、「協会員だから職を失わない」とはお約束できません。ですから、(医療業界において)影響力を持てるように私が頑張らなくてはいけないと思っています。社会の風潮において、協会が「すごい力を持っている」と思わせることが、今やるべきことかもしれません。


また、「登録理学療法士になるとどのくらいのメリットが得られるのか」と考える人が多い中で、どこまでを協会がサポートできるかという線引きをはっきりしなくてはいけないでしょう。協会はあくまでプラットフォームを提供する立場です。

 

現在の協会に対して「会費が高い」と感じる方にとっては、その分を回収できるようなサービスが十分ではないと思われているのかもしれません。協会が提供する講義などのサービスをフルに活用していただいくとありがたいです。

 

ー ずばり、斉藤会長がご覧になっている未来とはどのようなものでしょうか? 

斉藤:私は(未来は)明るいと思っています。高齢者が増える中でこの業界が暗くなるはずはないと思っていますし、それは我々以上に周りが気付き始めているでしょう。

 

ですから、現場の方がやっていることを必要以上に規制しないようにすべきだと思っています。世の中にポジティブな風潮がある今だからこそ、これを戦略的にうまく使わない手はありません。ですから、チャンスはいっぱいあるでしょう。未来は明るいですし楽しいはずなので、果敢にチャレンジしていきたいです。

 

ー(斉藤)先生のワクワク感に私たち会員も巻き込んでいただけると、大きく会員自身の生活も変わるのかなと思います。

斉藤:何事もなんとかなるものです。今までの経験を踏まえると、今会長として考えていることは「なんとかなる」気がしています。しっかりとやるべきことをやれば、時間はかかっても間違った方向には進まないと確信していますし、そのうち成し遂げられるイメージを持っています。みんなで一緒に一歩前に進みたいです。

 

ー 「何とかして欲しい」ではなく「なんとかなる」そして「なんとかする」。この言葉に我々会員も期待したいと思います。本日はありがとうございました。

斉藤:こちらこそありがとうございました。

 

あとがき…

前編と後編でお送りした今回。斉藤会長のリーダー論に迫った。トップダウンの運営からボトムアップへの変換期とも捉えられる新会長の就任。需要拡大へのいとぐちは、各会員の活動が肝になる。協会主導の拡大を待つのではなく、個々人の活動を協会に伝え、それに合わせた環境整備等を協会が担うことで好循環を生む。

 

前会長が日本理学療法士連盟会長となり、政治活動に拍車をかけ、学会連合により科学の独自性が構築された中、協会は何をすべきなのか、多様化された価値観に対してどんな価値を提供するのか。

 

激動の時代はまだ、入り口に差し掛かったばかりだろう。

 

ー完ー

【目次】

前編:組織はトップの器以上にならない

後編:会員は協会に何を期待すればいいのか?

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会員は協会に何を期待すればいいのか?【日本理学療法士協会 第9代会長|斉藤秀之】後編
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