自分の道を探っていたら自然と「起業」に繋がった
POSTインタビュアー:先生が、言語聴覚士を目指したきっかけは何ですか?
見目先生:正直に言うと、私が高校生の時に、言語聴覚士の国家資格が制度化される見通しが立って、新聞やニュースに出たんです。
当時こういう仕事があることを、理学療法士さんの存在以上に知らなかった。しかしそのニュースを見て、興味を惹かれましたね。
これから新たな分野で広がりがあるような仕事に感じましたし、元々リハビリという仕事には興味を持っていたので、これから始まる言語聴覚士のある学科に進んでみようかなと思ったのが最初のきっかけですね。
POSTインタビュアー:言語聴覚士さんは、養成校ではどのようなことを習っていくんですか?
見目先生:私の時のカリキュラムというのは、今でこそ地域リハや職能、参加・活動がキーワードとしてリハで取り上げられるようになりましたが、当時は全然そうではなかった。
医学モデル中心とした基礎を習うというカリキュラムだったと思いますね。嚥下であったり、失語であったり、精神機能であったりを学ぶというところだと思います。
POSTインタビュアー:養成校を卒業されてから、そのような道を進まれたんですか?
見目先生:私は、専門学校付属の総合病院に勤務しました。それから6年間勤務し、今会社を設立しています。
POSTインタビュアー:起業したきっかけは?
見目先生:私は起業しようとは思ってなかった。起業するというスタンスではなく、地域のコミュニケーションとか、今でこそキーワードになった参加系のところに、色んな活動が出来るような仕事がしたいと思った。
しかし当時は探してもなかなかそういうことが出来るフィールドがなかったので、小さなデイサービスから始めてみようかなと思ったのが、起業になってしまった。そこから色々あって、しっかりとした会社に育てなければいけないなと思いに切り替わっていった。
自分のやりたかったことをしたいなと思って、道を探っていたら自然とこうなった。
企業は「思いの実現化のツール」ではない
インタビュアー:起業したい方が多いですが、起業の大変さや、良かったことを教えてください。
見目先生:私は、若い子たちが起業したいという夢を、「だめだよ」というスタンスではないですし、かといって起業を推進するスタンスでもない。
臨床をベースにした教育を受けて、そういう仕事をしてきて、夢を追って出てきたわけですが、今思い返すと、自分がやりたかったことをやってきたという感じでは全然ないですね。全く違います。
どちらかと言うと、必要に迫られてと言いますか、顧客のニーズに合わせて対応するということもそうかもしれませんが、企業として始めたからには、従業員さんに対しての雇用に責任を持つだとか、色んな人と一緒に仕事をするということは、会社で活動すると言うことなので。
ただ皆で集まって、専門職同士で仕事しているというわけではなくって、社会なんです、ここって。色んな考えとか、思いとか、経緯を持っている人が集まってやっているので、スムーズに行かないことの方が多い。
そういうことが出るたびに対応したり、対応して上手くいったと思えば、また次の問題が生まれたり、それをクリアするうちに、少しづつ成長したりの積み重ねだったので、「起業」=「リハ専門職としてこういったことをしたいという思いの実現化のためのツール」とは思っていないです。
企業とは、自分のしたいことを抑えてでも、みんなのチームワークで何かを作ることだと思ってますので。
大変なことのほうが多かったので、起業については慎重であるべきだと思います。ただ夢を持って活動しようと思っている場合には、これから色んな活動のツールの選択肢が広がっていると思うので、色んなことを体験したりとか、感じたり勉強したりしてもらいたいなと思いますね。
そういった活病院の中での臨床だけでなく、色んな人とコミュニケーションを取ったり、対談したりすることは推奨したいなと思います。
<第2回は12月3日に配信します>