【作業療法士|佐藤良枝先生】認知症の障害と能力把握に必要なのは?

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認知症のある方には最初にコミュニケーションの評価をするべき

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佐藤先生:やっぱり知識は必要ですね。認知症という病気の症状や障害が分からないと、行動観察することができません。
 

身体障害のある方にはまず検査をする。CVAの方にはこの検査みたいのがある程度明確に教科書に載っているじゃないですか。 そのような検査一覧=評価とは考えてはいませんが、とりあえずのとっかかりにはなっている。
 

でも認知症ってそれがないんです。
 

だから、とっかかりがなくて、どうしたらよいのか困ってしまう人が少なくないように感じています。
 

認知症という状態像をきたしている方の中には、実は、言語障害がある方がたくさんいて、どこまで言葉の理解ができるかという一番最初にコミュニケーションの検査をしなきゃいけない。 でも、そういう認識が広まっていないので知らない人がたくさんいます。
 

だから、いきなりHDS-Rとかをしようとしたりして、当然相手は理解できないから。怒ったりするわけです。分からないから怒っているのに「易怒的」という判断になっちゃったり。 言葉でのやりとりができるかどうか確認が必要なんだと考えています。
 

ただモゴモゴしているわけではない。


知識の必要性に関して言うと、オーラルジスキネジアがある人もいっぱいいることを知っておいてほしいんです。口をモゴモゴしているのがオーラルジスキネジアだって分からないと「どうしたの?お腹減ったの?何かかゆいの?」ってなってしまう。


それなのに「これあげるわ、どうぞ食べて」って言われても困っちゃいますよね。
 

そして認知症のある方は困っていることを明確に言葉で伝えられないから、相手は困っていることがわからない…ということも起こりえます。


だからまず知識は絶対必要で、認知症は色んな状態像を引き起こすということを知ってほしい。障害は目に見やすく、行動観察しやすい。
障害を観察することができれば、障害の裏返しとしての能力が把握できる。能力の把握ができれば、対応の工夫が具体的に現実的にできるようになると思います。

 

全部できないわけではない

佐藤先生:認知症の周辺症状に対して(以下;BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia))昔はどうしたらいいんだろうって考えていたんです。でもその視点がいけなかったなって。能力があるからこそBPSDも起こるんだということがわかったんです。


例えば、うちの病院は20代や30代の方も入院しているので、お昼ご飯の献立にクリームパスタとコーヒーゼリーが出ることもあります。そうすると複数の方が必ずする行動があるんです。


なんだか分かりますか?


クリームパスタをお箸でとってコーヒーゼリーにつけて食べるんです。 あぁ、なるほど!って思いました。この場面には認知症のある方の能力もちゃんと現れています。 クリームパスタということは分からないけれども、白い麺類ということは分かっています。


同様にコーヒーゼリーということは分からないけど黒いものっていうのは分かるんです。コーヒーゼリーって、透明のプラスチックの器に入っていると液体ぽく見える。


何だろう?と判断しようとして過去の生活歴にある記憶が呼び起こされて「白い麺=うどん?そうめん?」「黒くて液体っぽいもの=麺つゆ?」って判断するんです。今この場で見えることはちゃんと見えている。


ただ判断が今ではなくて過去の記憶に照らして判断しているんです。だから結果として不合理な行動になってしまうだけなんです。認知症になって何もわからないから変なことをするわけじゃないんです。
 

わからないこともあるけれどわかることもある。わかることで何とかしようとしているけれど、現在目の前で起こっていることを過去の記憶に照合して判断するから結果として不合理な行動になってしまうんです。

 

認知症の人はなぜすぐ座れないのか


もうひとつ例を挙げるとすれば、椅子。


進行した認知症のある方と病院に行って診察室に入って「どうぞおかけください」って言われた時には「はいわかりました」って言ったのに、なかなか座ろうとしないこともあります。


即時記憶(今この場の記憶)が低下していると、椅子が視野から消えて後ろに椅子があることを忘れてしまうから、座るわけがない。座ってくださいと言われても、「後ろに何もないからひっくり返っちゃうじゃないか」と。


そこでこちらが、「ほら早く」とか動作介助しようとすると、本人からすると「転ばそうとするなよ」ってなっちゃいますよね。決して嘘つきとか頑固とかって言うわけじゃないんです。


そういう時はどう対応すればいいかというと例えば、背中に手を当ててあげるとか、膝裏の椅子の角をあててあげるとか、言葉ではなくて触覚という感覚入力をしてから「どうぞ座ってください」と声をかければ、「あぁ、後には何か硬いものがあるし、背中を支えてくれるから自分はひっくり返ることはない。大丈夫」と分かってもらえて座ってくれるんです。


一見、変に思える言動の中にその方の障害も能力も投影されているから、結果として起こっている不合理な言動だけを取り上げて、そこだけ切り取ってどう対応するか考えたり、話合うのは違うと思うんです。


残っている能力をより合理的な方向に発揮してもらうためにはどういう風にしたらいいのか考えるべきだと思うんです。
そのためには、まず障害と能力を観察できるように、私たちが知識を身につけることが最初だと考えています。

 

バックナンバー>>
〔1〕小児分野の経験が認知症ケアに活かされる。

〔2〕コミュニケーション障害に対し指差しが有効だったケース

〔3〕認知症の障害と能力把握に必要なのは?

 

インタビューいただいた佐藤良枝先生経歴

1986年 作業療法士免許取得

肢体不自由児施設、介護老人保健施設等勤務を経て2010年4月より現職

2006年 バリデーションワーカー資格取得


2015年より 一般社団法人神奈川県作業療法士会 財務担当理事
隔月誌「認知症ケア最前線」vol.38〜vol.49に食事介助に関する記事を連載

認知症のある方への対応や高齢者への生活支援に関する講演多数

一般社団法人神奈川県作業療法士会公式ウェブサイト「月刊よっしーワールド」連載中

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