キッザニアに医師や看護師、救急救命士、薬剤師の職業体験は既にあったが、リハビリテーションセンターで理学療法士の仕事ができるのはキッザニア福岡が全国初となる。今回、そのサービス立ち上げに携わった麻生グループ、株式会社麻生飯塚病院 企画管理課 仲吉さんに、その裏側や来場者の裏側について聞いた。
― 今回リハビリテーションの職業体験ができるパビリオンが全国で初めてできたということですが、どういった経緯でアクティビティを作ることになったのか教えていただけますか?
仲吉 今回出展するにあたり、急性期症状(救急や手術など)で入院した患者さんが、治療をしてから退院するまでの一連の流れをできるかぎり体験していただきたいと考えました。退院に向けてはリハビリが必要ですし、当院は急性期のリハビリテーションに力を入れていますので、ぜひ企画に取り入れようということで話が進みました。
当院の技師長をはじめ、現場の理学療法士たちの意見も聞きながら、リハビリテーションの仕事の魅力が伝わるように企画を具体化していきました。
― ゼロからサービスを作っていく上でどういった点で苦労しましたか?
仲吉 キッザニア福岡には、麻生グループ(飯塚病院)の「病院」パビリオンとして、新生児室、手術室、救命救急センター、リハビリテーションセンターの4つがあります。新生児室なら赤ちゃんの人形、手術なら麻酔器や人工心肺、救命救急センターならドクターカーといった具合に象徴的な「モノ」があるのに対して、リハビリはサービスであり分かりやすい「モノ」がありません。ですから、どのような体験をすれば職業が伝わるのか、分かりやすさという点で非常に苦労しましたね。
また、キッザニアのルール上、こども同士が触触する事ができないため、接触なしにリハビリテーションをどう伝えるかということで、相談したPTたちもかなり頭を抱えていました。
また、最初の企画案の段階は、介護に近いものだったのですが、リハビリはマッサージとは違って訓練ですし、ゴールがあって社会復帰に向けていくものだということを強く意識しました。
― 具体的にはどういった体験になるのでしょうか?
仲吉 概ね30分を1枠として、まずキッザニアのスタッフ(スーパーバイザー)が簡単に仕事の紹介をします。そのあと、患者さん役と理学療法士役に分かれて、理学療法士になったつもりで患者さんに声掛けをする体験をしてもらいます。先ほどもお伝えしましたが、直接こども同士が触れることはなく、リハビリを横で見守りながら声掛けをしていくような流れになっています。
― 身体が触れないとなると、どんな体験にすればリハビリテーションというものが伝わるか、確かに悩みますね。
仲吉 そうですね。ただ、当院の理学療法士たちに話を聞くと、皆、患者さんとのコミュニケ-ションをリハビリの技術と同じくらい大切にしていて、それが体験の中でうまく伝わるといいなと思っています。
「自分たちは治療ができるわけではなく、あくまで患者さん自身がリハビリしないと意味がない。だから目標値を決めるにも、患者さんと話しながら、患者さんが目指せる目標を定めることが大事。」
「毎日リハビリをしていく中で、今日はあまりやりたくないなという時も人間だから当然ある。その中でもリハビリをしてもらうために、毎日少しずつ声掛けの仕方も変えている。くだけた表現がいいのか、しっかりした表現がしたのか、リハビリの技術と同じくらいコミュニケーションの仕方が大事だ」
と話していました。
なのでアクティビティ内での声掛けの仕方はとても工夫していて、実際に体験しているこどもたちを見ていても、こういう声かけをするとこどもが楽しそうだなとか、ちょっと会話が盛り上がったなとか感じる部分もあります。
― 来場された方からの感想としてはどんなものが多いのでしょうか?
仲吉 「患者さん側の気持ちが分かって良かった」というお声をいただくことが多いですね。「ケガをした人ってこんなに大変なんだ」ということが分かるのはリハビリテーションセンターの職業体験ならではだと思います。
― 最後にPOSTの読者に向けてメッセージをいただけますか?
仲吉 こどもが、医療や理学療法士の仕事を楽しく体験ができる場を提供するのはもちろんなのですが、同時に、医療スタッフが現場で大事にしていること、考えていることが伝わるように、心がけています。こどもがいる方はぜひ体験しにきていただければと思います。
取材協力
株式会社麻生 飯塚病院
2022年度「デミング賞*」受賞(病院初受賞)
*デミング賞:は1951年に創設されて以降、日本製品に関する総合品質管理の進歩に功績のあった民間団体および個人に授与している経営学の賞(世界最高ランクの経営学賞)。
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