変形性膝関節症における痛みのメカニズムと理学療法

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軟骨には神経終末がない

変形性関節症における痛みは、軟骨の損傷だけに由来するものではありません。実際、軟骨自体には痛みを感じるための神経終末がないため、直接的な痛みを引き起こすことはありません。また、画像所見上明らかな変形や破壊があったとしても痛みの程度との関連性は見られないとされています。膝関節には複数の構造があり、それぞれが疼痛に寄与する可能性があります。軟骨の損傷や劣化が進行すると、以下のような状況が起こることがあります。

(1)骨への影響:軟骨が薄くなると、その下の骨が露出し、骨同士が直接摩擦することがあります。これにより、骨の下の骨髄が刺激され、痛みを引き起こすことがあります。

(2)炎症:軟骨が劣化すると、軟骨の小片が関節腔に分散し、炎症反応を引き起こすことがあります。これにより、関節液が増え(これを滑液包腫と言います)痛みを引き起こします。

(3)軟骨と骨の周囲の組織:軟骨と骨の周囲には、神経終末が豊富に存在する組織があります。これらの組織(例えば、関節包、靱帯、骨膜など)は、膝関節が過度に使用されたり、炎症が生じたりすると、刺激を受けて痛みを引き起こすことがあります。

(4)二次的な筋肉の緊張: 痛みを避けるために、人々はしばしば異常な歩行パターンを採用します。これにより、一部の筋肉が過度に使用され、他の筋肉が適切に使用されない可能性があります。これは筋肉の緊張や痛みを引き起こす可能性があります。

したがって、変形性膝関節症に伴う痛みは、複数の要素が複雑に絡み合って生じるものであり、それぞれが疼痛の感じ方に影響を与える可能性があります。今回の記事ではさらに詳細な問題として「侵害受容性疼痛」「神経障害性疼痛」「侵害可逆性疼痛、感作」の3つに分けて解説してみます。

侵害受容性疼痛

侵害受容性疼痛(nociceptive pain)は、組織の損傷や炎症から生じる痛みの形態であり、変形性膝関節症の痛みメカニズムにおいても重要な要素です。以下にその具体的な概念を説明します。侵害受容性疼痛は、組織損傷や炎症により生じる化学物質(例えば、プロスタグランジン、ブラジキニン、セロトニン、成長因子、サイトカインなど)が、特殊な感覚神経末梢である侵害受容器(nociceptors)を刺激することで発生します。

膝関節では、侵害受容器が関節包、靭帯、骨膜、軟骨下骨に分布しています。変形性膝関節症においては、関節軟骨の破壊に伴い骨が露出し、また炎症反応によりこれらの侵害受容器が刺激され、脳への痛みの信号が増加します。その結果、患者は痛みを感じます。また、変形性膝関節症の進行に伴い、炎症と痛みの連鎖反応が生じ、侵害受容器の感受性が高まる「感作」現象が起こることがあります。これにより、同じ刺激に対してより強く反応し、痛みが慢性化することがあります。

したがって、変形性膝関節症の治療においては、侵害受容性疼痛のメカニズムを理解し、それに対する対策(例えば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や物理療法など)を適切に組み合わせることが重要となります。

神経障害性疼痛

神経障害性疼痛(neuropathic pain)は、末梢神経、脊髄、または脳内の神経経路に損傷が生じた場合に発生する特殊な疼痛形態です。このタイプの痛みは、神経系が正常に機能していないときに起こるため、しばしば非常に強い、そして慢性的な痛みとなります。神経障害性疼痛は、通常、神経が物理的に損傷された場合、例えば手術、外傷、あるいは病気(例えば、糖尿病や帯状疱疹)によって神経が傷ついた場合に発生します。

これらの損傷は、神経の信号伝達を乱し、一部の神経が過敏になったり、正常な刺激を痛みとして解釈したりすることがあります。変形性膝関節症においても、痛みの一部は神経障害性疼痛に起因する可能性があります。病状が進行すると、関節周辺の神経が炎症や圧迫により傷つくことがあります。これが神経の過敏性を引き起こし、膝に対する正常な刺激(例えば、立ち上がる、座るなど)が痛みとして感じられるようになることがあります。

神経障害性疼痛は、他のタイプの痛みと比べて治療が難しいことがあります。NSAIDsや鎮痛剤が必ずしも効果的でない場合があり、代わりに抗てんかん薬や抗うつ薬が用いられることがあります。これらの薬は神経の痛み信号の伝達を調節し、痛みを軽減することができます。

侵害可逆性疼痛・感作

疼痛の閾値が低下する現象を指します。これは特定の組織の損傷や炎症が長期化した結果、痛みの感知システムが過敏になる状態です。この状態では、通常は痛みを感じないような軽度の刺激でも痛みを感じたり、通常の痛みよりも強く痛みを感じることがあります。この感作現象は、二つのレベルで発生することが知られています:末梢感作と中枢感作です。

(1)末梢感作:これは、疼痛受容神経終末(nociceptors)が損傷組織から放出される化学物質によって活性化され、その結果として過敏になる現象です。これらの化学物質(例えばプロスタグランジンやブラジキニンなど)は、神経終末の反応性を増大させ、より低い刺激で活性化されるようになります。

(2)中枢感作:これは、長期の痛みの存在下で脊髄や脳内の疼痛伝達路が変化し、より強く疼痛信号を伝えるようになる現象です。これにより、痛みが長期化し、治療が難しくなることがあります。

変形性膝関節症においても、これらの感作現象が起こりうることが知られています。関節の慢性的な炎症や損傷は、末梢感作を引き起こす可能性があります。また、長期間にわたる痛みの存在は、中枢神経系の変化を引き起こし、中枢感作を誘発する可能性があります。これらの現象は、痛みの慢性化や治療の困難さを引き起こす要因となります。

理学療法における疼痛管理

変形性膝関節症における疼痛管理のための理学療法は、患者の特定の痛みタイプと症状に応じて調整されるべきです。以下に、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、および感作に対する一般的な理学療法のアプローチを説明します。

侵害受容性疼痛に対する理学療法:

疼痛管理:冷却療法や温熱療法などが利用されることがあります。これらは疼痛を和らげ、関節の腫れや炎症を減少させることができます。

運動療法:筋力トレーニングや身体的活動は、筋肉の力を増やし、関節のサポートを改善し、関節の可動性を維持するために重要です。それにより、関節への負荷が減少し、侵害受容性疼痛も減少します。

神経障害性疼痛に対する理学療法:

筋神経物理療法:神経をゆっくりと引き伸ばすことで、神経の流動性を改善し、疼痛を軽減することが可能です。

電気刺激療法:TENS(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation)などの電気刺激療法は、神経に対する電気的な刺激を通じて疼痛信号を中断し、疼痛を軽減します。

感作に対する理学療法:

認知行動療法:慢性痛の管理には、物理的な治療だけでなく、心理的なアプローチも重要です。患者が疼痛に対する思考や感情を理解し、それに対処する方法を学ぶことは、感作の影響を和らげるのに有効です。

ペイン・エデュケーション:疼痛のメカニズムと疼痛と生活の関係についての教育は、患者が自分の状態を理解し、より良い疼痛管理戦略を作るために重要です。患者が疼痛のメカニズムを理解することで、恐怖や不安を軽減し、疼痛の経験自体を変えることが可能になります。

グレーデッド運動療法(段階的運動療法):疼痛による動作制限を克服するための手法として、運動療法の強度や持続時間を徐々に上げていくグレーデッド運動療法(Graded exercise therapy)があります。これは疼痛閾値を上げ、運動に対する恐怖を減少させ、慢性疼痛の影響を減らします。

以上の理学療法のアプローチは、患者の痛みの性質と生活の状況により、カスタマイズされ適応されます。

【目次】

第一回:変形性膝関節症の分類とリハビリテーションプロトコール

第二回:変形性膝関節症患者における運動療法の重要性

第三回:変形性膝関節症における痛みのメカニズムと理学療法

参考文献

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26405113/

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18067562/

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17082465/

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27058216/

【全4回シリーズ】変形性膝関節症 〜慢性期における屈曲制限の解剖と運動療法〜

膝痛専門のパーソナルトレーニングジムSOUND BODYは東京都羽村市という立地ながら、予約現在3ヶ月待ちの状態が続いています。今回のセミナーでは、このジムの代表であり理学療法士の福山先生をお呼びし、予約3ヶ月待ちの大人気パーソナルトレーニングで行われている膝関節に対する系統的アプローチ方法を全4回シリーズでお送りします。

※今回の募集は第3回目の単発受講と全4回シリーズのまとめチケットのみを販売しています。各回の単発受講は、遅くても開催月の1ヶ月前には募集を開始いたします。

第1回 6月29日(木)21時~終了しました

第2回 8月31日 21時~終了しました

*これ以降のまとめ払いの場合、第1、2回目はアーカイブ配信のみとなります。

第3回 10月26日 21時~

【変形性膝関節症〜慢性期における屈曲制限の解剖と運動療法〜】

<学べること>
この講座では膝関節屈曲制限に対する因子、解剖学、評価と治療を学びます。膝関節の屈曲は日常生活に多々ある動作です。
階段昇降、正座、しゃがみ動作こららの動作を制限されるということは生活そのものが制限されるということになります。

<プログラム>
・屈曲制限因子と姿勢制御
・エコー診断
・解剖学
・評価と治療

お申し込み▶︎https://knee-oa3.peatix.com/

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変形性膝関節症における痛みのメカニズムと理学療法
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