働く人のウェルビーイング 仕事とプライベート どちらも仕事満足度向上には重要

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ポイント

  • 仕事の裁量度が低く、睡眠の質が低い人ほど、5年後の仕事満足度が低かった。
  • ワークライフバランス※1が悪化した場合や悪い状態が持続する場合に満足度が低かった。
  • 仕事満足度は職場環境やライフワークバランスを整えることで改善する可能性がある。

概要

富山大学医学部医学科5年生の西岡龍一朗と富山大学学術研究部医学系 疫学・健康政策学講座の立瀬剛志助教、関根道和教授らの研究グループは、日本の地方公務員を対象に仕事満足の背景要因を明らかにするために、2014 年から 2019 年までの5年間の追跡研究を行いました。

追跡研究を行った結果、5年後の仕事不満足の要因は、男女ともに仕事の裁量度が低い場合や睡眠の質が低い場合、仕事中心のライフスタイルにより日常生活に支障が出ていることが関連しました。男女の違いとしては、男性では仕事の生産性と高い仕事の要求度が、女性では長時間労働と仕事のサポートの低さが仕事不満足と関連していました。

論文は米医学誌 Journal of Occupational and Environmental Medicine に 2024 年 2 月27 日に掲載されました。

研究の背景

職場のウェルビーイングとして、仕事満足度に注目が集まっています。日本人の仕事に対する満足度は世界的に低く、2015 年の世界的調査(ISSP:International Social SurveyProgramme)においても調査した 37 カ国中 35 位と先進国・発展途上国問わず悪い状況です。

これまで、仕事満足度について横断的に調査した研究や国際比較を行った研究はありますが、仕事のストレスやワークライフバランス、個人の健康といった多因子がどのように仕事満足度に長期的に影響するかについての研究はありません。そこで、本研究では将来の仕事満足度と関連する因子を包括的に評価し、5年間でのそれら変化と仕事満足度の関連について追跡研究を行いました。

研究の内容・成果

対象者は日本公務員研究※2の参加者 1429 名(男性 957 名、女性 472 名)の追跡データを用いました。要因として、年齢、仕事の要因(職位、労働時間、生産性、仕事のストレス)、ワークライフバランス、睡眠の質の項目を使用しました。

分析においては、まず、ベースライン時(2014 年)の要因の追跡時(2019 年)の仕事満足度への影響を評価し(例:2014 年時点のワークライフバランスの 2019 年の仕事不満足への影響)、次にそれら要因の5年間での変化がどう追跡時の仕事不満足に影響しているか(例:2014 年から 2019 年にワークライフバランスが変化した場合の 2019 年の仕事不満足に与える影響)を評価しました。

統計解析の結果、男女ともベースライン時の仕事の裁量度が低く睡眠の質が低い場合に、追跡時の仕事不満足に関連していました。次に、要因の5年間での変化については、男女ともに5年間で仕事の裁量度が低下した場合、睡眠の質が低下した場合、ワークライフバランス(仕事から家庭への影響)が悪化した場合に仕事不満足と関連していました。性別ごとで見ると、男性では仕事の生産性が低い場合や仕事の要求度が高い場合が、女性では長時間労働や仕事のサポートの低さが仕事不満足と関連していました。

今後の展開

公務員を対象にした仕事満足度に関する研究について、今回の結果を踏まえ今後は、企業は従業員の仕事満足度向上に向けて、具体的な取り組みを積極的に推進していくことが重要と考えられます。

・管理職講習や健康教育で、仕事の裁量度や睡眠の質の改善の重要性の啓発

・多様なワークライフバランスを支援し、過度な仕事中心生活の見直し

・男女での違う要因に着目した仕事満足度影響因子の改善

また、本研究では、過去の要因より最近の要因が仕事の満足度、つまり、働く人のウェルビーイングに関連していたことが明確になりました。このことは、蓄積されたストレスや睡眠状態の悪さだけでなく、直近の要因の改善によって仕事満足を改善することにつながるという知見として、積極的に現場に取り入れていくことが可能です。

用語解説

※1 ワークライフバランス

本研究で用いたワークライフバランスの指標として、Work-to-Family Conflict(仕事が原因で家庭に影響がある状態)、Family-to-Work Conflict(家庭が原因で仕事に影響がある状態)の二つを用いた。これらのスコアが高い場合はワークライフバランスが崩れている可能性がある。

※2 日本公務員研究(Japanese Civil Servants Study: JACS Study)

イギリスのロンドン大学(Whitehall Ⅱ Study)とフィンランドのヘルシンキ大学(Helsinki Health Survey)との国際共同研究であり、公務員を対象としたストレスと健康に関する悉皆調査。1998 年より、5年ごとに 4000 人規模の調査を実施(今回は第4回目と第5回目の調査を分析)。

論文詳細

論文名:Work and lifestyle factors influencing job satisfaction of Japanese civil servants:a 5-year longitudinal study.

著者:Ryuichiro Nishioka, Takashi Tatsuse, Masaaki Yamada, Michikazu Sekine,

掲載誌:Journal of Occupational and Environmental Medicine(2024)

DOI:https://doi.org/10.1097/JOM.0000000000003079

詳細︎▶︎https://www.u-toyama.ac.jp/wp/wp-content/uploads/20240312.pdf

注)プレスリリースで紹介している論文の多くは、単純論文による最新の実験や分析等の成果報告に過ぎました。 さらに研究や実験を進める必要があります。十分に配慮するようにしてください。

働く人のウェルビーイング 仕事とプライベート どちらも仕事満足度向上には重要

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