参議院の厚生労働委員会が開かれ、新委員長に自民党の小川克巳氏が選任された。小川氏は理学療法士の資格を持ち、医療・福祉分野に精通する専門職出身の国会議員。上野賢一郎厚生労働大臣が所信表明を行い、医療・介護分野の賃上げや全世代型社会保障の構築に向けた決意を表明した。
医療専門職出身の委員長が就任
小川克巳新委員長は就任挨拶で「本委員会は年金、医療、社会福祉、雇用、労働問題など国民生活に密接に関わる重要事項を幅広く所管する委員会」とし、その責任の重大さを痛感していると述べた。理学療法士としての専門知識と現場経験を持つ委員長の選任は、医療・福祉分野の課題に対する実効性のある審議が期待される。
医療・介護職員の賃上げを最優先課題に
上野大臣は、医療・介護・障害福祉分野の現場が厳しい現状にあることを踏まえ、経営の安定と人材確保を重点課題に掲げた。春季労使交渉での賃上げ実現や物価上昇を受け、次期報酬改定での的確な対応とともに、報酬改定を待たずに経営改善と処遇改善につながる支援を速やかに届けると表明した。
また、日本成長戦略本部において物価上昇を上回る賃上げが継続する環境整備に向けた戦略を策定し、最低賃金を含めた具体的な検討を進める方針を示した。
全世代型社会保障の構築へ
少子高齢化と人口減少が進む中、持続可能な社会保障制度の確立に向け、全ての世代が能力に応じて負担し支え合う「全世代型社会保障」の構築を目指すとした。給付と負担のあり方について国民的議論を踏まえ、給付付き税額控除の制度設計や、OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しなどに取り組む。
医療DXとマイナ保険証の普及推進
医療DXの推進では、電子カルテ情報の医療機関間での共有や医療等情報の二次利用を進める。マイナ保険証については、2025年12月1日で従来の健康保険証の使用可能期限が終了することから、円滑な切り替えに向けた利用促進と医療機関の環境整備支援を強化する。
創薬支援と医薬品の安定供給
日本成長戦略本部の戦略分野に位置づけられた創薬について、スタートアップの創出を促進する新たな基金を創設する。また、未承認薬・適用外薬のドラッグロス解消や、少量多品目生産という非効率な構造の改善による医薬品の安定供給にも取り組む。
その他の主要施策
地域医療では、2040年頃を見据えた新たな地域医療構想の策定、医師偏在対策、救急・災害医療体制の充実を推進。介護分野では、2040年に向けた地域の実情に応じた提供体制の確保や、ICT活用による生産性向上、人材の確保・育成・定着を図る。
働き方改革では、職場におけるハラスメント対策の強化、非正規雇用労働者の処遇改善、70歳までの就業機会確保などに取り組むとしている。
また、戦後80年の節目の年として、戦没者遺族への特別弔慰金支給の継続や遺骨収容の集中的な取り組みについても言及した。
長坂康正副大臣(労働・福祉・年金担当)、仁木博文副大臣(医療担当)、神山誠一・栗原渉両政務官も就任の挨拶を行い、上野大臣を支えて各分野の施策に取り組む決意を示した。






