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「産後の不調は9割」母子手帳への身体ケア項目追加を要望──産前産後ケア議連 第2回総会開催

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12月11日、「産前産後の母体に対するケアを通じて包括的に女性支援を考える議員連盟」(会長:加藤勝信 事務局長:小川克己)の第2回総会が参議院議員会館で開催された。厚生労働省、こども家庭庁、経済産業省、内閣府、文部科学省の関係省庁担当者に加え、国立成育医療研究センター、日本産婦人科医会、日本看護協会、日本理学療法士協会など医療関係団体が出席し、産前産後の女性の身体ケアについて議論が行われた。

1万人ママアンケートが示す深刻な実態

総会では、NPO法人ReMind代表理事の吉井麻美氏が「妊娠中・出産後の母体の身体トラブル実態調査〜1万人ママの声を聞かせて〜」の結果を発表した。この調査は2022年に一般財団法人日本女性財団が主催し、6,505名(出産回数11,570回)から回答を得た大規模なWEBアンケートである。

調査結果によると、妊娠中・産後の女性の91%が腰痛や尿漏れなどの身体的トラブルを経験していることが明らかになった。妊娠中に現れた症状は腰痛(70.6%)、尿漏れ(44.7%)、骨盤痛(35.4%)の順に多く、70%以上の女性が腰痛を抱えながら妊娠生活を送っていた。出産後も腰痛(63.6%)、尿漏れ(53.2%)、肩の痛み(44.4%)など、多くの女性が身体症状に悩まされている。

特に注目すべきは、これらの症状があっても受診したのはわずか15%に留まり、85%の女性が我慢を強いられている実態だ。「お産は病気じゃない」という社会の認識や、妊娠出産時の身体トラブルが保険適用外であることが、受診を躊躇させる要因となっている。

身体トラブルが育児・就労・少子化に影響

身体トラブルがあった女性の約7割が育児・家事・復職・2人目妊娠に何らかの影響があったと回答。具体的には、育児への支障(46.6%)、家事への支障(43.0%)、職場復帰への不安(17.5%)、妊娠躊躇(16.1%)という結果が示された。さらに、復職を諦めた女性が2.9%(252人)、2人目を諦めた女性が4.9%(425人)存在し、女性活躍推進や少子化対策の観点からも看過できない問題となっている。

精神面への影響も深刻で、身体トラブルがあった女性の52.2%が「意味もなく不安になった」、44.1%が「社会から離れるようで孤独に感じた」と回答。「自分自身を傷つけるという考えが浮かんだ」という自傷念慮も8.8%に見られた。また、職場復帰時の仕事パフォーマンスは妊娠前と比較して平均62.9%に低下しているという結果も報告された。

理学療法士による産前産後ケアの重要性

続いて、Women's Body Labo代表の山崎愛美氏(理学療法士)が「産前産後の母体トラブル事例と改善へのアプローチ法」について講演した。山崎氏は産婦人科で理学療法を実施している立場から、妊娠中の腰痛で整形外科を受診しても「妊娠中だから何もできない」と言われ休職を余儀なくされたケースや、産後の腹直筋離開で日常生活に支障をきたしているケースなど、具体的な事例を紹介した。

山崎氏は「イギリスでは助産師が最初に話を聞いた際、痛みや骨盤底筋の問題がある場合にシステマティックに理学療法士にケアを依頼する仕組みがある」と海外事例を紹介。また、産後3年までの女性を対象とした移動能力テストでは、65%が高齢者で問題となる「ロコモ度1以上」に該当するという驚くべき結果も報告された。

母子手帳への身体トラブル項目追加を提言

吉井氏は、現在の母子手帳では産後の母体について母乳と心の問題は確認するが、身体については聞く項目がないと指摘。「腰痛がありますか」「尿漏れはありますか」といった項目を追加することで、母親自身が問題を認識し、必要なケアにつながる仕組みが必要と提言した。

議員からは「気分が沈んだり涙もろくなったりという産後うつの項目が追記された時と同様に、身体トラブルの項目も明示すべき」との意見が出された。こども家庭庁からは「健康状態の確認で腰痛等を聞くことは妨げていないが、明示的な記載はない。任意様式として自治体が採用できるよう検討は可能」との回答があった。

医療関係者からも積極的な意見

日本産婦人科医会の石渡会長は「妊娠中から産後まで産婦人科医が患者に寄り添っている中で、2割程度の方がマイナートラブルを含む様々な訴えをしている。チェック項目を設けて漏れなく確認することが重要」と述べた。また、国立成育医療研究センターからは、2027年度に女性の健康総合センター内に産後ケアセンターを設置する準備が進んでいることが報告された。

加藤会長は「産後1ヶ月検診で終了ではなく、1年の中で捉えるケアが必要。ネットを見れば出産のリスクは誰でも知ることができる時代だからこそ、どこまでケアが受けられるのかというメッセージが重要」と総括し、今後も議論を継続していく方針を示した。

同議連は、出産のダメージが「全治2ヶ月の交通事故に匹敵する」と言われる中、女性が妊娠・出産・育児・就労の意欲を失わないよう、産前産後の母体ケア充実に向けた制度・仕組みの構築を目指して活動を続けていく。

「産後の不調は9割」母子手帳への身体ケア項目追加を要望──産前産後ケア議連 第2回総会開催

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