――多職種配置の柔軟化、人口少ない地域への配慮も議論【中医協総会】
中央社会保険医療協議会(中医協)は12月12日の第635回総会で、急性期入院医療の見直しについて議論しました。総合入院体制加算と急性期充実体制加算の統合、急性期病棟における多職種配置の柔軟化、人口の少ない地域における拠点的病院の評価などが主な論点となりました。
2つの加算を「総合性」と「集積性」で再編へ
事務局は、総合入院体制加算(1~3)と急性期充実体制加算(1・2)を統合し、「総合性」(診療科の幅広さ)と「集積性」(手術件数等の実績)の2軸で病院を分類するイメージを提示しました。

現行の総合入院体制加算1(14日間計3,640点)と急性期充実体制加算1(14日間計4,240点)は、救命救急センター等の救急体制や全身麻酔手術件数2,000件以上などで共通する基準がある一方、総合入院体制加算1では7診療科(内科・外科・整形外科・脳神経外科・精神科・小児科・産科または産婦人科)の標榜と入院医療の提供が求められ、急性期充実体制加算1では消化管内視鏡手術600件以上、心臓カテーテル法手術200件以上など、より詳細な手術実績が要件となっています。

診療側:現行加算算定病院の「脱落」回避を強く要望
江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、「両加算を統合する方向に異論はないが、現在両加算を算定している病院の評価が次回の改定によって急激に変動しないようにすることが何よりも大切」と強調しました。「これらの加算を算定している病院は現在、地域の急性期医療の拠点あるいは地域医療の最後の砦として機能しており、その維持にはこの加算が非常に大きな役割を果たしている」と述べ、地域医療提供体制への混乱を懸念しました。
太田圭洋委員(日本病院会副会長)も、「これらの加算を算定している病院は地域ですでに基幹的な医療機能を果たしている病院であり、要件の設定においては加算が取れなくなるようなことがあると地域の医療体制に大きな影響が出る」と指摘し、「現在これらの加算を算定している医療機関にマイナスの影響が出ないよう制度設計上配慮を行うことがこの見直しの前提」と主張しました。
支払側:集約化に向けた「レベルアップ」求める
松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、統合後の類型について「21ページの整理に違和感はない」としつつ、「今まで加算を取れていた病院側を単に今後も継続させるだけでなく、診療領域を広げて総合性をより高めていただくことが必要」と述べました。
鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)も、「総合的な診療体制を有しておりかつ高度な手術の実績が高い病院を他の病院とメリハリをつけて評価していく方針」として理解を示し、「そうした機能を持つ病院が地域の救急医療を支える拠点となることが効率的な救急医療提供体制の構築につながる」と述べました。
急性期病棟の多職種配置、柔軟化を検討
事務局は、急性期一般入院料について、高齢の救急患者の多い病棟でADL低下を防ぐ観点から、看護職員7対1配置の一部を多職種(リハビリ職、管理栄養士、臨床検査技師等)で代替可能とする案を提示しました。

具体的には、看護職員配置10対1を基本としつつ、多職種を加えてトータルで7対1相当とする仕組みが想定されています。
看護協会:「付加的評価」を求める
木澤晃代専門委員(日本看護協会常任理事)は、「急性期一般入院医療の中でも特に高齢の救急患者の多い病棟においては、急性期の治療と並行してADL低下を防ぎ、入院早期から退院を見据えた支援を強化することが重要」と述べました。「看護職員10対1配置に加えて多職種協働連携を推進することも方策として有効であり、こうした取り組みを行う病院に対しては付加的に評価をするべき」と主張しました。
支払側:「7対1と同じ評価」には慎重姿勢
松本委員は、「リハビリ職や管理栄養士、臨床検査技師が病棟でそれぞれの専門性を発揮することは患者にメリットがあり、医師や看護職の負担を軽減できることも理解はできる」としながらも、「仮に見直し後のイメージが7対1の看護配置と10対1の看護配置の差分を他の職種で埋めた場合に7対1の看護配置と同じ評価にすることを意味しているのであれば、慎重に判断する必要がある」と述べました。
薬剤師は今回の対象外
高町晃司委員(日本薬剤師会副会長)からの質問に対し、厚生労働省保険局医療課長は「薬剤師については病棟業務に関する配置加算があることを踏まえ、既に多職種配置に対する評価がある。今回の提案は薬剤師以外の職種を主に念頭に置いている」と説明しました。
人口の少ない地域、へき地病院への配慮
人口20万人未満の二次医療圏では、救急搬送件数が2,000件未満でも地域の救急医療を支える砦となっている病院があることが示されました。人口20万人未満医療圏のへき地医療拠点病院164施設のうち、総合入院体制加算・急性期充実体制加算のいずれも算定できていない状況が報告されています。

江澤委員は、「人口の少ない医療圏については、手術等の実績要件等を満たせない場合であっても、へき地事業や救急搬送受入れの実施等により地域を支えている場合は相応の評価が必要」と述べました。
新たな地域医療構想との整合性を求める声
複数の委員から、現在医政局で検討中の「新たな地域医療構想」との整合性を図るべきとの意見が出されました。
江澤委員は「次回改定で新たな地域医療構想を先取りすることは制度の趣旨からしても不適切ではないか」と指摘。太田委員も「病院機能に関して何をもって地域の拠点的な急性期機能とするか、また何をもって地域急性期機能とするかの詳細は決まっていない状況」と述べ、慎重な見直しを求めました。






