サイエンス?それともアート? ~ エビデンスと実際の臨床を繋ぐ ~(株)メドレー -理学療法士(PT) 藤本 修平先生 - episode2

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前回の内容>>本来のEvidence Based Medicine (EBM)というのは

ガイドラインに書いてあるからOKではない

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Shared decision making(以下SDM)は、医療者と患者さんがそのプロセスについて、段階を踏んで共有しようという概念です。

これまでは、患者さんとのやり取りはInformed Consent(IC)が主体でしたが、世界的にはこのSDMが主流になってきています(もちろん、ICとSDMは場面によって使い分けが必要です)。

この話をすると、必ず言われるのが「そんなの当たり前じゃん」「すでにやってます」ということです(笑)。たしかに、当たり前に行われるべきなので、すでに行われているかもしれません。

ただ、先行研究で「療法士は共有したつもりでいて、患者さんはそう思っていない」という結果も出ていますので、一度振り返ってみる必要があると思っています。

有用な情報源になる診療ガイドライン


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そのSDMで、有用な情報源のひとつになりうるのが、診療ガイドラインです。診療ガイドラインにも質を評価する方法(AGREE IIと言います)があって、患者さんの価値観について記載されていることが望ましいです。

さらに、その方法には、診療ガイドラインをどのように使えば良いか、といった臨床への意思決定を支援するツールとしての位置付けも明記されています。

診療ガイドラインは、エビデンス集とは違い、推奨度を付けています。皆さんがよく使うエビデンスという言葉はおそらく個々の論文などを指すのではないかと思うのですが、治療上ではそのエビデンスの総体として、診療ガイドラインを参照するということも大事です。

もちろん、「診療ガイドラインに書いてあるからOK」ではなく、「情報を読み解く力」が必要になります。

このように考えた場合に、SDMを行う上で、患者さんの価値観や適用方法が記載されている診療ガイドラインの位置付けを提言するために、研究を進めています。

患者さんにも選択肢を!


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先輩の話や、自分の経験をもとにして治療するというのは決して悪いことではないし、むしろそれが正しいことも多々あります。

ただ情報があるにも関わらずそれを患者さんに伝えずに一方通行で「あれやります、これやりますよ」って治療を提供するのは医療ルールからしても不適切かなと思っています。

患者さんには色んな方法を示したうえで、選択してもらう。これがShared decision makingのステップのひとつです。本当は色んな選択肢があるのに、それを知らないから言えないというのは、医療者の罪だと思います。自分は十分な情報を適切に提供しているか、そんな視点も必要です。

次回>>「研究している多くの人が、密かに持つある"悩み"とは?」

藤本修平先生経歴

理学療法士 7年目
弘前大学医学部保健学科、弘前大学大学院修了(保健学修士)
東京湾岸リハビリテーション病院
京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 博士後期課程(〜現在)
株式会社メドレー(〜現在)

■研究テーマ/専門分野 診療ガイドラインの質評価、Shared decision makingの方法論、臨床倫理、健康情報学 研究方法論 (代表論文などはコチラ

■著書 行動医学テキスト(分担執筆)、中外医学社、2015年

■お問い合わせ 診療ガイドライン、Shared decision making、研究方法論などに関するお問い合わせは、shuheifujimototbr*gmail.comへ(*を@に変換してください)
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