「個性」から「病気」へ
山田先生:患者さんや、障害を持っている人独特のネガティブな部分って本当に体験した人じゃないと分からない。フィーリングで「こういうタイミングって辛いだろうな」というのが、触らなくてもなんか分かるんです。
自分の障害を『個性』として受け入れるために、自分の障害に「価値・役割」を与えたいと思っていました。1回目の障害受容と言えるかもしれない。学生の頃は、障害を持っていないセラピストよりも僕の方が患者さんの気持ちが分かると思ってうぬぼれていた。
でも、逆に足かせになっていて、共感性が武器だと思っていたはずなのに、それができない。(※前回の記事参照)OTをやめようとも思いました。ちょうどその頃に、『シャルコー・マリー・トゥース病』という確定診断が付きました。
それまで生まれつきの個性だとおもっていたものが病気と分かり、しかも進行性で。19年間を否定された感じですよね、今までの山田は嘘でした。 価値観を180度クルっと変えなきゃいけなかった。
2回目の障害受容はそこから始まりました。
チョロQコミュニケーション
知識としての障害受容とか、抑うつはをみんな勉強していると思うんですけど、それを経験として持っている方って中々いないですよね。そういうのを僕らが発信できたらなと思うですよね。
一つ例に出すと、チョロQってオモチャあるじゃないですか。後ろに引っ張って手を離すと前に進むやつ。他のセラピストがある脳梗塞の方のリハビリをしていたんです。その方が「先生の期待に応えられなくてごめんね」って話をしていました。
患者サイドとして「せっかくリハビリをしてもらっているので、治らなきゃ申し訳ない」ていうのがあったんだと思います。
そしたらそのセラピストが「大丈夫ですよ、頑張りましょうね」って返事をしていました。多分、その患者さん的には「焦らないでほしい」とか、「辛いという気持ちを汲んでもらえればいい」と思っていたんじゃないかなと思うんです。
チョロQだと、後ろに下がっていく状態。それで後ろに下がってエネルギーが溜まったら、自分で前に進む。でもそのセラピストの子は、後ろに下がっていくのを止めて、背中を押して前に進ませようとしてる状態だと思うんですよね。でもそれって、結局いつまでも人の力を借りないと進めなくなってしまいます。
例えば、「今日はちょっとリハビリをやめて、おしゃべりでもしましょうか」でもいいと思うんですよね。人ってそういうときありますよね。ネガティブになっている感覚を認めてあげることって大事、結果を出すためのワンステップです。
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山田隆司先生経歴
名古屋市内の精神科病院に勤務する36歳。4歳頃から足部の内反尖足変形が現れ、手術や入院・リハビリを繰り返す。 疾病や障害とともに幼少期~思春期を過ごし、次第に『自身の体験をリハビリに生かせないだろうか』と考えるようになる。
作業療法士を目指す20歳の頃、神経難病Charcot-Marie-Tooth病(CMT)の確定診断を受け一度は目標を見失うものの、CMT患者会『CMT友の会』の立ち上げや当事者運動に携わる中で『当事者×セラピスト』という自身の存在をもう一度肯定的に受け入れるようになっていく。
【執筆書籍(分担執筆)】
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