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【諸橋勇先生|理学療法士】臨床は考えないほうがいい?

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諸橋1

考えない臨床

ーー 課題指向型アプローチに関してはどうお考えですか?

 

諸橋先生 その患者さんが何をやりたいか、つまりその人が指向していることを知ることって大事ですよね。患者さんに意味や価値がある事をできるだけ提供するように心がけています。

 

例えば、患者さんの姿勢制御も意識的にやるのではなくて、無意識に出来るように刷り込まないといけない。意識した練習中は出来るけど、日常の中で注意が他にいってしまうとできなくなります。

 

同じように理学療法技術を学んでいる若い人はたいていは皮質レベルで考えがちですが、もっと感じて、体感しながら身体で理解した方がいいと思います。

 

頭を真っ白にして自分の感覚のなすがままに動くっていう人は少ないかもしれません。でも、その方が治療がうまくいくことが少なくありません。

 

ーー 今は、教科書とか勉強会が充実してきたので、知識を増やそうとしているセラピストも多いと思います。

 

諸橋先生 知識を増やすことは悪いことではありませんが、それを皮質レベルだけではなく、身体認知レベルまで落とし込むことが技術だと思います。感じない、集中していない療法士の態度が、患者さんにうつってしまうんですよ。

 

なので、私はあまり治療中は考えないようにしています。言語化しないので、学生さんには説明できなくなりますけどね(笑)

 

いいか悪いかはわからないですけど、患者さんの身体を自分が感じて動かしています。それはコミュニケーションと同じだと思います。

 

口でコミュニケーションをとるか身体でコミュニケーションをとるかの違いだけで、インプットしてアウトプットを感じて、またインプットしてという無意識にやることは同じだと思います。

 

 

自分の元気が患者にも影響する

ーー 患者さんとのコミュニケーションで気をつけていることはありますか?

 

諸橋先生 場づくりですね。

 

スタッフに指導しているのは、「我々の仕事は患者さんに元気を出してもらう仕事だから、自分が元気じゃないと患者さんも元気にさせられないよ」ということで以前は朝礼の時にみんなでハイタッチしたりとか、少人数グループで一人の人を褒めたり(承認シャワー)とかを通じて、みんなが元気になるようにやっていました。

 

それと 「~しないように」っていう禁止の言葉を言わないようにしています。

 

例えば、「転ばないように」っていうと、「転ぶ」っていう言葉が患者さんの気持ちの中にインプットされてしまいますよね。

 

そうすると、必要以上に転ぶことを意識させて、身体がガチガチになります。同じように、「失敗」という言葉もそうですね。

 

片麻痺がある人に、歩行時に麻痺側下肢でしっかり支えるように指示すると、どんどん非麻痺側に力が入ってしまいます。

 

私は「いい方の脚を楽に出しましょう」と言っています。そうすると無意識に麻痺側下肢にしっかり荷重し、他の身体の無駄な力が抜けやすいのかなと思います。

 

それと、思い込みやトラウマなどの気持ちのコンディショニングも大事です。

 

例えば、怖いという気持ちを払拭していかないと、いくら身体的な治療をしても、情動反応によるちょっとしたことで身体が硬くなったりしますからね。

 

私が最近よく思うのは、患者さんが自分でいい姿勢を作ろうと思って、過剰に緊張した姿勢を保持しているのに(特にPTの前では)、一方PTはその姿勢が過緊張で悪い姿勢と考え、リラクセーションさせようとしてけいる事があります。

 

これは患者さんと、PTの意識が真逆だということです。そういうことですらぶつかり合っているんだって思いました。

 

いい意味で理学療法を受けやすいような気持ちと身体のコンディションを整えてあげられるのが一流のPTだと思います。

 

そうやって身体が動きやすくなった時に意味のある適切な課題が出来るんじゃないですかね。そういうことを疑問に思わないPTが多いなと感じます。

 

犬に散歩させてもらっている

諸橋先生 なぜ私がこう考えるかというと、私がそうだったからです。意味のないことをやれって言われてもね。

 

犬を散歩させるって言いますけど、あれって犬に散歩させてもらっているんですよね。だって、犬がいなかったら散歩しないわけじゃないですか?認識が逆ですよね。

 

自分が患者さんだったらっていうことをもっと考えるべきだと思います。患者さんと話さずにひたすら手技をする人がいるじゃないですか?

 

あれってどうなのかなって思います。何日か前に新人さんに「手技もコミュニケーションも起承転結があるんだよ」っていう話をしました。

 

例えば、ずーっと意味のないROM-exをやっている人は、その対象とした組織の正常なコンディションがわかっているんだろうか?

 

そして、その先にある課題や運動学習へつながるコンディショニングを意識しているのだろうか?

 

コンディションがわからないと、いつまでも同じことやっていて、時間になったからやめる?なんて事をやっていたら、いつになっても先に進めませんよね。

 

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諸橋 勇先生経歴

 

昭和59年理学療法士免許

国立病院、労災病院、東北大学病院を経て、現在いわてリハセンター勤務

東北大学大学院医学系研究科障害科学専攻 修士課程修了

【その他】

日本神経理学療法学会 運営幹事

青森県立保健大学臨地教授

   

山形県保健医療大学臨床教授

専門理学療法士 (神経)

認定理学療法士(脳卒中)


 

【著書 分担執筆】

 

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