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特集Ⅱ:認知症を理解するー全3回ー第1章:認知症をもつ人のこころとは?

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“認知症”これまで様々な場面で、問題とされてきた。その多くは、問題行動をピックアップされ、あたかもその人自身を否定してしまいかねない情報にまでなる。全3回を通して、認知症をもつその人の、その先にある“こころ”について考えていく。

 

「認知症をもつ人のこころとは」

 

リハビリテーション(以下、リハ)病院に入院された患者さん。入院時評価で「HDS-R:5点」という結果に。その点数を見た医療スタッフは、「センサーマットと拘束帯が必要やな」と判断し、すぐさま自室の環境を変更していました。その後の病棟生活は目に見えていました。

 

 患者さん:「なんでこれ(拘束帯)付けとるの?」

      「なんでベッドから降りたら音が鳴って、看護師さんが来るの?」

 看護師 :「危ないからでしょ!?」

 患者さん:「なんでなの?」

 看護師 :「転けるのに動くからでしょ」

 患者さん:「外してよ!」

       「お願いだから、外して下さい…」

 

 この患者さんは、入院生活が長くなるにつれ、不安が増え、認知症が進行していました。

リハビリをするために入院された患者さん。確かに大腿骨頸部骨折の影響で起こった下肢筋力の低下や歩行能力の低下は、療法士とのリハビリで改善していきました。しかし、認知症の症状は出現し、不安は募るばかりです。

 

身体が良くなれば良くなるほど、病棟生活で活動的になる患者さん。しかし、「危ない」からと活動に制限が掛かり、さらに拘束帯が増える状況。

 

 このような場面はしばしば見られるのではないでしょうか?

 

 なぜ、「HDS-R:5点=拘束帯が必要」となるのか?HDS-Rは認知機能をスクリーニングする評価であり、その人の「危険度」を表すものではないはず。いつからこのような捉え方になってしまったのか。

 

 「認知症をもつ人のこころとは?」

 

そのような葛藤が毎日のように続いた新人1年目

「何が正しいのか? どのようにしていけば良いのか? 何を望んでいるのか?」

拘束帯をつけ、確かに転倒というリスクを回避することはできた。しかし、こころは不安に満ちていた。結果、そのような病棟生活を見て家族さんは、自宅では一緒に暮らせないと判断し、施設退院となった。

 

 「HDS-R:5点」=「拘束帯」=「安全」=「職員本位」

 

 認知症をもつ人のこころを大切にした関わりをしたい。そう強く感じた日々でした。

 

認知症の症状と評価

 ○認知症の症状

 

 

 中核症状:概ね「脳の影響」で出現する症状

    例:記憶障害、見当識障害、遂行機能障害etc.

 

 BPSD(行動・心理症状):概ね「周囲の環境」の影響で出現する症状

            例:不安、妄想、幻覚、不潔行為、暴言・暴力etc.

 

 

 ○認知症の評価

 質問評価と行動観察評価があり、併用して認知機能を評価することが重要である。

 

 

1.質問評価

  HDS-R(改訂 長谷川式簡易知能評価スケール)

  ・1991年、改訂版を長谷川和夫らによって開発

  ・9項目の設問で構成された簡易知能評価スケール

  ・30点満点中、20点以下だと“認知症の疑い”となる

   ※注意:認知症の診断はできない

 

  MMSE(Mini Mental State Examination)

  ・1975年、米国のフォルスタインが開発

  ・11項目の設問で構成された簡易知能評価スケール

   ※HDS-Rとの違い:動作性の質問(図形模写)がある

  ・30点満点中、23点以下だと“認知症の疑い”となる

   ※注意:認知症の診断はできない

 

2.行動観察評価

 NMスケール(N式老年者用精神状態尺度)

  ・1988年、小林敏子らによって開発

  ・日常生活の様子から、「家事・身辺整理」、「関心・意欲・交流」、「会話」、「記憶・記

名」、「見当識」の5項目を評価する

  ・各項目10点の50点満点

  ・合計点数で重症度(正常、境界、軽度、中等度、重度)を判別できる

 

【目次】

第1章:認知症をもつ人のこころとは?

第2章:認知症をもつ人を理解する手がかりとは

最終章:認知症をもつ人のこころの中には、閉じ込めている思いがある

 

執筆者紹介

○学歴

 2011年:藤田保健衛生大学 医療科学部 リハビリテーション学科

      作業療法専攻 卒業

 2014年:藤田保健衛生大学大学院 保健学研究科 リハビリテーション学領域

      作業療法科学分野 卒業

 

○職歴

 2011年:医療法人松徳会 花の丘病院 リハビリテーション科 作業療法士

 2016年:有限会社ホワイト介護 長太の寄合所「くじら」 作業療法士・管理者

 現在、長太の寄合所「くじら」というデイサービスで勤務。月に一度、認知症をもつ人と家族の支援及び、地域における横の繋がりを構築することを目的に「D-カフェ・健康測定会」を開催中。また、認知症多職種協働勉強会、認知症予防教室(回想法教室)認知症サポーター養成講座を定期的に実施している。

 

○資格

 作業療法士

 認知症ケア専門士

 DCM基礎ユーザー

 認知症ケア指導管理士

 

○所属団体

 公益社団法人 認知症の人と家族の会 若年性認知症の人と家族のつどい 世話人

 日本作業療法士協会 認知症作業療法推進委員(三重県担当)

 

○論文掲載

 1)佐野佑樹,澤俊二,杉浦徹・他:回復期リハビリテーション病棟における

   認知症の評価−認知尺度と行動観察尺度を併用して用いる有用性−.理学

   療法科学,2015,30(6):955-959.

特集Ⅱ:認知症を理解するー全3回ー第1章:認知症をもつ人のこころとは?

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