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Vol.3 理学療法士が行政と共有すべき介護予防事業のイメージ【3つの働き方を兼務する理学療法士】

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職業が異なれば、介護予防事業のイメージも当然異なる

 

私は、理学療法士です。

妻は、作業療法士です。

 

以前、私たち夫婦は、介護予防事業のイメージについて話し合う機会がありました。

しかし、いざ話をすると、大枠は同じでも、その詳細は違うことに気が付きました。

 

職種の違いがすべての要因とは言えませんが、間違いなく重要な因子の一つとなるでしょう。

 

では、私たち療法士は、市町村で介護予防事業を展開するとき、行政の方々とイメージを共有しているでしょうか?

 

行政の方々にもリハビリテーション、理学療法、作業療法、言語療法を深く理解して下さる方は多くいます。しかし、イメージ・認識に関しては、我々夫婦と同様、少なからず違いがある様に思います。

 

ただ、違いがあること自体は、決して悪いことではありません。

しかし、この違いを理解・共有せずに進めば、いつか、「療法士には任せられない」と言われる日が来るかもしれません。

 

専門性は大事だが、根底には人間力が必要

 

では、何を心掛けるべきか?

 

相手を敬い、相手の話を聞きながら、話し合うことです。

言うなれば、専門性よりも、まずは「人間力」です。

 

病院とか、施設とか、療法士の建前は関係なく、まずは、各市町村の介護予防事業をどうしていくべきかを話し合うことです。

 

そして、この実現のために、行政が困っていることは何か、求めていることは何かの「情報」をまず集め、療法士が持つ専門性と照らし合わせながら情報を編集し、提案する過程が重要となります。

 

この過程で、イメージを共有することなく、委託された事業をただ受託し、実施しているだけなのであれば、なんちゃって介護予防事業?となっている可能性もあるのかもしれません。

 

三重県鳥羽市の介護予防事業が大切にする評価

では、行政の方々が我々療法士に期待するものは何か。

 

様々な課題が挙げられますが、私が行政の立場になって感じることは、「介護予防事業では何をすれば効果的なのか?」、「その効果はどのように測るべきか?」が中心にあるように思います。

 

「何をすれば?」の部分は、Vol2.にて、少しお話しましたので、今回は私が行政の方々と共有した「評価」について、ご紹介します。

 

療法士が評価と聞けば、運動機能を評価するアウトカム指標が幾つか思い浮かびます。

もちろん、行政の方々も介護予防事業に用いられる運動指標はご存知です。しかし、「その結果が何を示し、どう扱うべきか」が難しいのです。

 

言い方を変えれば、運動機能評価の結果は、ただの数値でしかありません。

その数値が向上しても、効果があったとは直接結びつきません。

 

療法士も同じであるはずです。数値だけでなく、姿勢や動作、日常生活も評価します。この過程を行政の方々とも共有する必要があります。

 

このため、鳥羽市では、評価時の動画を撮影し、目に見えるかたちで、参加者、行政、療法士が介護予防の効果を共有できる方法を採用しています。

 

ここでも大事なことは、「共有する」という「人間力」なのです。

今後、どんなに働き方が多様化しても、私たちの療法士としての専門性や人間力は嘘をつきません。

 

療法士として、熱く謙虚にこれらのスキルを磨いていけば、必ず地域の役に立つ職業が我々であると信じています。

 

さて、今回で合計3回の連載が終了となります。

 

最後に、今に至る恵まれた理学療法士人生を私に与え、支援して下さった皆様に対し、深い感謝を表して謝辞と致します。

 

*目次

 

Vol.1. ショッピングセンターでの働き方

Vol.2. 鳥羽市地域リハビリテーション活動支援専門員という仕事

Vol.3 理学療法士が行政と共有すべき介護予防事業のイメージ

 

 

杉浦徹先生経歴

<学歴>

2010年  藤田保健衛生大学 医療科学部 リハビリテーション学科 卒業

2012年  藤田保健衛生大学大学院 保健学研究科 修士課程 修了

 

<職歴>

三重県松阪市にある医療法人松徳会 花の丘病院にて、回復期リハビリテーション、訪問リハビリテーションに5年間従事する。同県鳥羽市にある医療法人豊和会 訪問看護ステーション豊和 鳥羽サテライトに転職。訪問リハビリテーション業務に加え、所属法人が運営する介護と福祉のお店ほうわ 鳥羽ハロー店の店長を兼任。

 

同じく、同法人の地域連携室も兼任し、鳥羽市行政とも連携しながら、現在は、鳥羽市地域リハビリテーション活動支援専門員としても活動。以上、3つの仕事を兼務しながら、新しい働き方の実現を目指している。

 

<資格>

・認定理学療法士(地域理学療法)

・介護支援専門員

・地域包括ケア推進リーダー

・介護予防推進リーダー

 

<所属団体>

・一般社団法人 三重県理学療法士会 学術局研修部

・一般社団法人 日本訪問リハビリテーション協会 広報部

 

<受賞歴>

・第28回三重県理学療法学会 大会長賞

 

<著書>

  • 杉浦 徹,杉浦令人:神経症候障害学.1.脳血管障害<各論>/回復期 B 理学療法/①回復期リハ病棟.文光堂, 2016:pp123-144
  • 杉浦令人,杉浦 徹:B 生活動作別の転倒・転落予防の実際 3.移乗.リハビリナース(3),メディカ出版, 2015:pp26-30.

<論文>

  • HIROAKI SAKURAI, YOSHITO SUGIURA, TORU SUGIURA,et al:Determinants of Return to Home After Stroke : An Analysis Based on Familys’ Views. J.Phys.Ther.Sci. 23 : 673-677 , 2011.
  • 杉浦 徹, 櫻井宏明, 杉浦令人, 岩田研二, 木村圭佑, 坂本己津恵, 松本隆史, 金田嘉清:超高齢脳卒中患者(85歳以上)の自宅退院に必要なADL条件の検討.理学療法科学28(5).2013:623-626.
  • 杉浦 徹,倉田昌幸,木村圭佑,櫻井宏明,岩田研二,松本隆史, 金田嘉清:訪問療法士(PT・OT)に求められる役割-医師による訪問リハビリテーション指示実態からの検討-.日本訪問リハビリテーション協会機関誌 第2号.2014:18-20.
  • 杉浦 徹, 櫻井宏明, 杉浦令人, 岩田研二, 木村圭佑, 坂本己津恵,松本隆史, 金田嘉清:回復期退院時の移動手段が車椅子となった脳卒中患者に求められる自宅復帰条件.理学療法科学29(5).2014:779-783.
  • 佐野佑樹,澤  俊二,杉浦  徹,木村圭佑, 松本隆史, 櫻井宏明,金田嘉清:回復期リハビリテーション病棟における認知症の評価 -認知尺度と行動観察尺度を併用して用いる有用性-.理学療法科学30(6).2015:955-959.
  •  

<連絡先>

Facebook:Tohru Sugiura  気軽にご連絡ください。

Vol.3 理学療法士が行政と共有すべき介護予防事業のイメージ【3つの働き方を兼務する理学療法士】

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