メンタルヘルスケアに運動プログラムがない
ー 社内でも体操などの取り組みを行っていると伺いました。
山口先生 やっています。というより、弊社では現在、健康経営ソリューション事業を展開しておりますので、自社内の従業員向けに取り組んでいないと示しがつきません。そこで、理学療法士が中心となって、エアロビクスやダンスなどいろいろやっています。
健康経営の視点では腰痛予防と同じく、肩こり、活動量の低下も問題です。最近では、メンタルヘルスケアとして、精神的な不調から休職したときの復職支援プログラムというものがあります。
私も最近知ったのですが、臨床心理士と産業医が関わって、カウンセリングを行っていくようなのですが、運動に関するアセスメントが全く含まれていないんです。運動に関する評価もなしに復職するのは難しいのではと思い、現在試験的に関わらせていただいている病院の看護師長さんにお願いして、同職場の看護師の一日の歩数を計測していただいたら、平均5000~6000歩でした。
しかし、復職支援プログラムを受けている休職者の方の歩数は多くても2000歩程度であり、これではいくらメンタルが改善してきたとしても、いきなり復職は難しいのではないかとご提案しました。この経験から、メンタルヘルスケアの一環として、運動に関するアセスメントやプログラム立案なども取り入れることができるのではないかと考えています。
また、コミュニティケアに関しては大きな事業になりつつあります。弊社では現在タブレットを使って運動プログラムを立案したり、体力測定の結果をフィードバックするアプリケーションを開発しており、これを使用すれば理学療法士が常にいない環境でも健康づくりを実践できます。
色々お伝えしましたが、色々な取り組みを行っています。
― 健康系は神戸市が力を入れている印象があります。
山口先生 神戸は医療産業都市を推進しており、ポートアイランドという島が拠点となっています。小保方さんがいた理研があったり、スーパーコンピューターの「京」というのがあり、その他にも病院や研究機関がポートアイランドに集約しています。
先端医療としてはいろいろやろうとしているのですが、健康経営に関しては未だに単純な体操だけが先走りしている感があります。体操の種類はいろいろあっても良いとは思うのですが、理学療法士である私たちがアセスメントしていくことで、より効果的な健康経営への取り組みになるのではないかなと思っています。
フィジカルアセスメントに加えて、会社環境のアセスメントも行う必要がありますから、前出のアプリケーションを導入することで環境の整備を図れればと思っています。
集いの場としてのデイサービス
― 絶対に理学療法士が触っていかなくてはいけないという状況ではなくなってきていますね。
山口先生 そうですね。デイサービスや総合事業も少しずつ形が変わっている印象です。この間、スポルテックというイベントで面白いことがありました。豊明市という長寿医療センター(大府市)の隣の市になるのですが、市の担当者がセミナーで言っていたことが印象的でした。
デイサービスに来ている方の中で、「ずっと来たい」「辞めたくない」という人がたまにいるのですが、現行制度では介護度が良くなれば、卒業しなければならなくなります。
しかし、そうではなく「そこにおろうよ」と、デイサービスのような場所を使って、「集いの場にしてもいいではないか」ということを言っていました。
最初の期間だけ集中的に専門性の高いサービスを受け、期間が過ぎたらオプションで同様のサービスを受けることが出来るようにすればいいのではないかと。そういった自由選択のできるサービスを提供すればいいのではないかということでした。
― 東京都のある区に問い合わせした際、「総合事業で摂食嚥下や入浴をオプションでとってもいい」となったので、「機能訓練もオプションで取っていいですか」と尋ねたら、「それはだめだ」と断られたことがあります。
山口先生 なぜでしょうね?それが出来ないと総合事業が成り立たないと思います。市区町村に依存してしまいますね。この分野は、独自性を出してこそ魅力があるのに、行政に左右されるのは辛いですね。
さきほどの話に戻ってしまいますが、卒業率が悪い=悪いデイサービスという図式ができてしまっていますが、「この風潮はやめよう」という方向に舵を切ることも考えています。
事業者である私が理事になったことで、行政側にもさまざまな提案ができるようになると思うので、今後も新しい提案を色々と試みたいと思っています。
― 先生にとってプロフェッショナルとは?
山口先生 何かトライするとき覚悟をもって取り組めることだと思います。
ー完。
【目次】
第一回:素晴らしい論文をエンドユーザーへ
第二回:兵庫県士会の理事へ
第三回:地域の”かかりつけ理学療法士“
最終回:アールイーコンセプトのコンセプト
山口先生のオススメ書籍
山口良太先生のプロフィール
■ 資格等
博士(保健学)・専門理学療法士(運動器)・呼吸療法認定士
作業管理士、腰痛予防労働衛生教育インストラクター(介護・福祉分野)
■ 経 歴
神戸大学医学部保健学科 卒業・神戸大学大学院保健学研究科 修了・
神戸大学医学部附属病院 勤務・神戸大学医学部保健学科 非常勤講師
株式会社アールイーコンセプト 代表取締役
一般社団法人兵庫県理学療法士会 理事
【Dr.Ryo-Tのカラダデザインラジオ】