評価の極意
ーー 先生にとっての評価とはどういったものですか?
山嵜勉先生 私自身の評価の仕方というのは、自分の治療方法に必要な情報を集めるのが、評価なんです。
今の学生さんがやっている評価というのは「リハビリ評価」なんです。リハビリテーションの評価なんです。
あの評価によって得られるのは何が出来て何が出来ないか。評価によってどこに障害があるかと、診断がつく。
でもそれでは治療にならないのです。診断は医者がいるんだから、障害の事実がわかればいいんです。
どういう障害なのか?障害をどう捉えるかがPTの感性なんです。例えば、片麻痺というのがありますね。
片麻痺というのは麻痺してない側が、麻痺している側を最大限にカバーしている障害なんです。
だったらどうするのか?もっとカバーできるように健側から始めるんです。
今やっているのは健側をアプローチすることで、患側の支持性を高めているのです。患側を使えるようにするには、健側がフルに働かなければいけないんです。
フルに働くというのは、単に機能にして働く必要があるので、力源として働いているだけじゃ機能として働けないんです。
健側で引っ張り上げていて、だから動作にならないのです。
評価における”距離”という視点
ーー 評価に対して先生が「まずいな」と思ったことのあるエピソードはありますか?
山嵜勉先生 セラピストにこの人どうなってんの?って聞いたら、今日は担当が休みで代わりなのでわからないって言うんです。
見たらわかるだろって。何が問題なのか。だって見えるだろって。
寝てるんだから、立っているんだから。
でもそれは思考過程の問題で、診断名がわからないと見えない。
診断名は参考になります。参考資料ですね。
PTにとって、脳梗塞による片麻痺も脳出血による片麻痺も変わらないんですよ。
ーー はい。
山嵜勉先生 そういう目で見ないと。まあ立位というものをベースにしていますから、立位が見えない。
見えないって言うなら教えられない。
「最初に振り出す側の骨盤が前方回旋してんでしょ」といって、手で触ってみてもわからない。
3m離れて見ろよって。そしたらわかるから。
ーー 評価において最適な距離とはどう決定すればいいのでしょうか?
山嵜勉先生 近くじゃ見えない。遠くから見たら他の対象物が見えますから。
周りのものと見比べてというのも評価基準になりますね。
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