コンプライアンスとアドヒアランス

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『あの患者コンプライアンスが悪いな』という言葉を聞いたことはありますか?患者の治療行動を評価する概念ですが、あまりいい意味で使われないことがあります。慢性疼痛リハビリテーションでも注目されている、『アドヒアランス』とともに考えて、患者の治療行動の把握に役立てましょう。成果にも関わります。

 Buenos noces!terapeuta!(スペイン語でこんばんは療法士のみなさん)、週の真ん中水曜日の江原です。本日は慢性疼痛のリハビリテーションでも重要な治療への取り組み方についてのお話です。

 

慢性疼痛の治療は生物心理社会的モデルをベースに、疾患を治療するのではなく機能改善を行っていきます。その時に重要なのが人、患者というよりも一人の人間の理解が必要です。

 

本日は、患者の治療行動に重要な概念を通じて、痛みのリハビリテーションにどのように役立てていくかをまとめます。

 

慢性疾患患者とコンプライアンス

 痛みだけでなく、慢性疾患を持つ患者は病状をコントロールするために治療方針や方法を守る必要があります。それには食事や服薬や運動習慣などを維持する必要がありますが、自覚症状が強い場合には患者は指示に従うことが多いです。

 

しかし慢性疾患の場合、ゆっくりした症状の変化の中ではそのようにならない場合があります。それまでの自分の価値観に従ってしまい、抵抗や拒否が起こりえます。

 

リハビリでもそのようなことを多く経験します。特に慢性疼痛のリハビリテーションにおいては、『痛みがあっても運動療法を行う』という概念が受け入れにくく、『痛かったら休む』という急性痛に対する固定観念をうち崩すような行動が必要になります。

 

そのため、運動療法をかたくなに拒否する方もいれば、運動療法を行っていくことが重要と頭では分かっていながらできない方もいます。ここが慢性疼痛治療の大きな障壁となるため、慢性疼痛においては治療者は患者の行動を支援するがことが重要な役割となります。

 

患者が治療者が指示した治療法に従って行動したかどうかを示すものとして、『コンプライアンス』が用いられます。元々は『法令遵守』という意味であって、古典的な治療者-患者関係を示します。この観点から見ると治療者と患者の関係は一方通行であり、治療者からの指示を守る患者がよい患者ということになります。

 

反対にコンプライアンスが守れないのは患者側の責任ということにもなるため、患者に依存した関係のままでは治療継続のために限界が生じます。

 

例えば『喫煙は害だとわかっているが、やめられない』患者をコンプライアンスの概念のみで対応すれば、守れなかった場合に起こるリスクを強い口調で伝えるなど、強迫的な対応になりやすいという弊害もあります。

 

コンプライアンスとアドヒアランス

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