令和3年度介護報酬改定の主な事項について1月18日、第199回社会保障審議会介護給付費分科会にて発表された。シリーズ第5回目の記事となる今回は通所介護の中盤で、内容は昨年中までの課題や改定の目的の整理としていきたい。
【本日の目次】
・昨年までの課題を把握する
① 通所介護の経営実態等について
② 新型コロナウイルス感染症拡大防止に係る取り組みに関する影響
・各加算・サービス実態と改定による変化を把握する
① 個別機能訓練加算
② その他加算(次回)
・まとめ
昨年までの課題を把握する
① 通所介護の経営実態等について
少々気難しいお話に思えるかもしれませんが、少し昨年までの経営実態等について整理したい。
【新型コロナウイルス感染症による通所介護の収入への影響】
2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | |
通所介護 | 8.2% | 1.3% | -4.6% | -7.7% | 4.3% | 1.4% | 0.2% |
2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | |
通所介護 | 1.4% | -2.8% | -6.6% | -10.9% | -5.0% | -3.9% | -4.4% |
単純に利用者は継続して前年比を割っている事実があり、昨年6月より実施された新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等 の臨時的な取扱いについて(第12報)による影響もあってか、保険給付額については利用者減少に反発して前年比を超えた値となっている実態が確認できる。
また、コロナウイルスの影響の関係がなかったと考えられる令和2年度の介護事業経営実態調査結果も確認しておきたい。
通所介護については、サービス一回あたりの管理的経費が述べ人数に反比例する形で下がっており、収支差率を見ると通常規模型で利用者が少ない事業所ほど、経営が難しくなっている実態があきらかとなっている。
② 新型コロナウイルス感染症拡大防止に係る取り組みに関する影響
新型コロナウイルスの拡大防止に係る取組は上記の図が理解しやすい。確認しておきたいところを抜粋すると以下の通り、
・訪問によるサービス提供を行った事業所は8.4%(うち報酬請求を行ったのは、82.1%)
・電話等による安否確認を行った事業所は、37.2%。(このうち報酬請求を行ったのは、15.8%)
・2区分上位特例を適用した事業所は50.6%。適用事業所利用登録者のうち特例適用者は平均79.3%。
データのみ見れば、サービス提供の方法を切り替えても報酬請求等を行えなかった(行わなかった)事実が明らかとなっている。
上記のデータと今回の改定をみて、皆さんはどのような対応が必要と考えられるだろうか?
各加算・サービス実態と改定による変化を把握する
① 個別機能訓練加算
個別機能訓練加算については、
・人員配置と個別機能訓練実施者の基準が比例した要件でない状況
・算定率は規模の小さい事業所ほど低い
・人員配置が難しく取得困難
・加算の違いによる訓練内容の差がなく生活機能に関する訓練が実施されていなかった
実態がわかっている。
今回の改定では上記課題の人員配置と加算の統合が行われ、データ提出をすることでさらに上乗せの加算が加えられている。
<改定後>
個別機能訓練加算(Ⅰ)イ56単位/日
個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ85単位/日※イとロは併算定不可
個別機能訓練加算(Ⅱ) 20単位/月(新設)※加算(Ⅰ)に上乗せして算定
【算定要件】
では、個別機能訓練加算の本来の設定理由と、生活機能に関する訓練が実施されていなかった実態をどう捉えるべきなのだろうか?
個別機能訓練加算が設定された理由については、
【住み慣れた地域での在宅生活を継続することができるよう、身体機能・生活機能の維持又は向上を目指すため】
とされており、改定前の単位数や要件を考えると、
生活機能に関わる訓練項目については、専従要件がゆるく、かつ単位数が高い設定がなされていたのである。
とすると、、国としては、
より生活機能に資する取り組みを評価し、居宅での自立生活を支援する通所介護の機能の一部をより強化したかった。
と読み取ることはできないだろうか?
自事業所が、この数年取り組んできた内容はどうだっただろうか、改めて振り返る必要があるといえる。
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本日はココまで、、
通所介護の経営実態としては、
・小規模事業所の経営は厳しい実態があること
・コロナにおける利用者減については課題を残していること
・有事の際の対応については、対応が十分行えなかった事業所も一定数あった
等の課題があることが想像できたのではないかと思う。
個別の加算については、以後も加算毎に分析等行いながらまとめていくが、
小規模事業所ほど、どのような加算を取得するかよりシビアに判断が必要になることは明白で、
どのような取組に特化するか?
固定費削減のため、どのような取組が行えるか?
・事業所内での経費削減全般の見直し
・営業範囲の狭小化、地域の連携強化で効率アップ
・利用者に提供するサービス時間がベースの売上につながる点を整理(超過勤務の削減)
など、単にリハ提供のみならず、広く事業所の課題を把握していくスタッフが重宝されるのではないだろうか?
【目次】