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MSIアプローチ―Upper quarter―肩甲骨・上腕骨・頸椎の運動機能障害に対する評価と治療

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Physical Stress Theory(フィジカルストレスセオリー)

フィジカルストレスセオリー1)に関して組織適応という言葉について説明したいと思います。直訳すると物理的ストレス理論といえます。身体組織には様々なメカニカルストレスが加わりますが、強いストレスを受ければ組織が損傷・死滅し弱いストレスだと逆に萎縮してしまうというものです。

適切なストレスが変わっていれば、ストレス耐性が増加し例えば筋肉が肥大します。日常的なレベルのストレスが加わっていれば、その組織は維持されていくなど6段階の生物学的な応答を引き起こします。例えばオーバーロード(過負荷の原則)のストレスといって、適切なストレスが身体に加わっていくとそれまで損傷を起こしていたようなレベルのストレスが、ストレス耐性の増加すなわちよりその人にとって適切なストレスになっていきます。これは閾値が増加した結果です。

逆にストレスが不十分である場合、それが持続的に加わっている場合、損傷をしやすい状態になってしまいます。それまでは適切なストレスであった状態が、閾値が低下してしまったために損傷を引き起こしてしまうといった状態になります。例えば以前はランニングが全く何でもなかった方が、久々に走ったすると、翌日に非常に強い筋の痛みを訴えたという。それは閾値が低下した。すなわちストレス耐性が減衰してしまったという状態になります。

 

このようなメカニカルストレスというのはさまざまな要素があります。ストレスの量、時間、反復回数あるいは速度といった要素、こういったものは運動療法の分野でも常に調節するべきものです。そしてもう一つ重要なのが、ストレスの要素の中で方向です。この方向というのは、身体の各分節がどういう方向に動くか、引っ張られたり、圧迫されたり、せん断力が加わったり、ねじれが加わったり。さまざまな要素があります。

そういったものに目を向けるところも非常に重要で、特にMSIはこの点を重視しております。こういったメカニカルストレスのさまざまな要素が、身体組織の適用様式に対して非常に大きな影響を与えます。それでは実際にどういう評価項目が運動系診断にあるかについて述べます。

 

先ほどのように問診をする情報収集をする病期分類をするこれが最初の段階です。次に系統的運動検査を行います。これは様々なポジションで行います。立位・座位・背臥位・側臥位・腹臥位・四つ這いといったポジションです。この中で、患者さんの動きを評価していきます。姿勢の評価も行います。必要であれば2次検査を行います。そしてDSM(=Directional Susceptibility to Movement[特定方向への運動の起こりやすさ])を見出していきます。

さらにそれぞれのポジションで可能なROMテスト、筋の検査をしていきます。もう一つの方法は、愁訴のある機能的な活動評価です。例えば、患者からリーチ動作「腕をこの方向へ伸ばすと言いたいんだ」という訴えがあります。実際にその動作そのものを評価することもとても大事です。あるいは職業上こんな姿勢をして普段座っているこんな姿勢で立って仕事をしているといったことも大事です。

 

実際どういう場面で、何をどのように行なっているのか?聞いたり実際に行ってもらうことも大事です。ただし、③の評価は①②の評価の上に成り立つものであるということを前提に理解するべきです。

 

実際に行う検査は、かなり沢山あります。肩甲骨・上腕骨・頸椎の系統的運動検査の項目を以下に挙げています。以下の検査で重要なものを、実技でやっていきます。

それでは実際に、前鋸筋のMMTを実施してみたいと思います。まず上肢を挙上して、肩甲骨を最大限に上方回旋にします。このポジションで保持してもらいます。問題なければ抵抗をかけます。

抵抗をかけることによって十分保持ができる。しかも肩甲骨のぐらつきがないのであれば問題はありません。ところがこの位置で抵抗をかけたときに、肩甲骨が下方回旋位に戻ってしまった、そういった患者さんの場合には前鋸筋の若干が考えれます。ただし、上方回旋位に少し戻してみると、最大筋力を発揮することができる方もいます。

こういった患者さんは「前鋸筋が弱化しているのではなく延長しているのだ」という風に考えることができます。今のようにして、肩甲骨の位置を戻した状態でも、最大筋力が発揮できない、弱くなってしまう方の場合は、前鋸筋が弱化していると判断することができます。

参考文献

1)Michael J Mueller, Katrina S Maluf. . Tissue Adaptation to Physical Stress: A Proposed “Physical Stress Theory” to Guide Physical Therapist Practice, Education, and Research.Physical Therapy, Volume 82, Issue 4, 1 April 2002, 383–403

参考:MSIアプローチ―Upper quarter(セラピスTV)

【目次】

【MSIアプローチの概念】
はじめに/運動系(movement system)という運動の捉え方
Physical stress theoryと組織適応①
Physical stress theoryと組織適応②
評価の流れ①
評価の流れ②
マネジメント“いかにDSMを制御するか”/まとめ

【評価<肩甲骨・上腕骨編>(1)】
はじめに/問診
立位検査①
立位検査②
立位検査③
座位検査

【評価<肩甲骨・上腕骨編>(2)とマネジメント】
背臥位検査
腹臥位検査
四つ這い検査
マネジメントの組み立て①
マネジメントの組み立て②

【評価<頸椎編>とマネジメント】
座位検査①
座位検査②
背臥位検査/腹臥位検査
マネジメントの組み立て/おわりに

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MSIアプローチ―Upper quarter―肩甲骨・上腕骨・頸椎の運動機能障害に対する評価と治療

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