週の真ん中の江原です。
日常の臨床では腰痛下肢痛が、7割を占める職場では腰下肢痛のメカニズムの鑑別の作業が重要になります。その過程で気づいてしまったことについて書きます。
腰椎疾患に潜む多様な疼痛メカニズム
腰椎疾患に伴う腰下肢痛は一様ではなく、複数の疼痛メカニズムが関与することが知られています。従来、腰痛といえば「骨関節・筋・靭帯の炎症や姿勢の偏りによる侵害受容性疼痛」として捉えられていましたが、近年はそれにとどまらない複雑な疼痛像が明らかになってきています。
例えば、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などでは、神経根の圧迫や炎症によって神経障害性疼痛が発生する可能性が高いです1)。
また、症状が長期化した患者においては、中枢性感作を背景とした痛覚変調性疼痛の関与も疑われます2)。
これらの疼痛メカニズムは、単独で存在するのではなく、重層的・混合性に現れる点が臨床上の大きな特徴です。
したがって、腰椎疾患における疼痛を適切に理解し治療するためには、これらの疼痛メカニズムの分類とそのオーバーラップについて深い理解が求められると考えています。
侵害受容性疼痛から神経障害性疼痛への変容
腰椎疾患においては、急性期には侵害受容性疼痛として始まった痛みが、病態の進行とともに神経障害性疼痛へと変容するケースがあります。
腰椎椎間板の膨隆が周囲の靭帯や筋膜を刺激し侵害受容器が活動する段階では、疼痛は局所的で動作時にのみ増悪する「侵害受容性疼痛」の特徴を持っています。