2026年度(令和8年度)診療報酬改定に向けた議論が、2025年秋から中央社会保険医療協議会(中医協)で本格化しています。リハビリテーション分野では、回復期リハ病棟の実績指数・重症患者割合の見直し、急性期における「発症3日以内・休日含む介入」の要件化、リハ職の賃上げなど、現場に直結する論点が次々と俎上に載りました。本稿では、2025年中に行われた議論を整理し、2026年度改定で何が検討されているのかを読み解きます。
なお、改定率や賃上げを含む2026年度改定全体の整理については、以下の記事で詳しく解説しています。
▶ 26年度診療報酬改定、本体+3.09%で決着──リハ職含む賃上げ
急性期リハ|「発症3日以内・休日介入」は要件化されるのか
中医協総会では、急性期リハビリテーションの介入タイミングに関する実態が議論されました。
発症早期にリハを開始できていない患者が一定数存在すること、休日を挟むことで初回介入が遅れやすい傾向があることなどが論点として示されています。
こうした実態を踏まえ、事務局からは「急性期リハビリテーション加算・早期リハビリテーション加算について、休日も含め発症から3日以内に介入する体制を評価要件として検討してはどうか」との整理が示されたと報じられています。
注目すべきは、これが単なる調査報告ではなく、加算の算定要件そのものを見直す方向での検討に言及した点です。人員配置、休日対応、賃上げ原資と不可分なこの論点は、2026年度改定における急性期リハの主要な争点の一つになると見られます。
▶ 院外リハビリの拡充や早期リハビリ開始要件の見直しが焦点に
一般病棟と回復期の「単位数」問題|6単位と9単位の不整合
2024年度改定で、回復期リハ病棟における運動器リハビリテーションの算定上限は原則「1日6単位」に整理されました。一方、一般病棟等では条件次第で「1日9単位」が可能な仕組みが残っています。
中医協ではこの点について、「病棟が異なるだけで患者が受けられるリハ量が違うのは適切か」「回復期のほうが制度上リハを提供しにくくなっていないか」といった制度の不整合が問題視されました。
現時点で単位数の統一が決まったわけではありません。ただし、公式な論点として整理されたこと自体が重要であり、2026年度改定で何らかの見直しが検討される可能性があります。
▶ 2025年度診療報酬調査の焦点|リハビリ職の夜間配置など変化
回復期リハの核心|実績指数と重症患者割合はどう見直されるか
2025年の議論で踏み込んだ整理が行われたのが、回復期リハビリテーション病棟の評価指標です。
実績指数の除外基準
現行制度では、「80歳以上」「FIM認知項目24点以下」といった要件に該当する患者が実績指数の計算から除外される仕組みになっています。中医協に示されたデータでは、除外該当患者が4割を超える実態が報告されました。
高齢者や認知症患者であってもADL改善は十分に可能です。「除外基準そのものが患者受け入れの歪みを生んでいるのではないか」という認識が、診療側・支払側双方から示されています。
重症患者割合(FIM20点以下)
2025年12月の中医協総会では、FIM総得点20点以下の患者を重症基準から除外した場合のシミュレーションが提示されました。
診療側は「一概に改善しないと決めつけるべきではない」と慎重姿勢を示す一方、支払側は「下限設定は妥当」との見解を示し、評価設計の考え方そのものが問われる展開となっています。
これらを踏まえると、回復期リハの評価指標──実績指数・重症基準──は2026年度改定での見直しが検討される方向にあります。
▶ リハ職の活用拡大も論点に|26年度診療報酬改定に向けて医療提供体制の課題を整理
リハ×栄養×口腔連携|理念は共有、課題は「実装」
2024年度改定で新設された「リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算」。2025年の検証では、届出率が約9%にとどまっていることが明らかになりました。
届出が進まない主な理由として、常勤専従リハ職2名以上の確保、土日祝の提供体制といった人材・休日対応の壁が指摘されています。
連携の重要性自体は中医協で広く共有されています。2026年度改定では、要件緩和か評価(点数)強化か、いずれかの方向で検討が進む可能性があります。
▶︎リハ・栄養・口腔連携加算、回復期・慢性期への対応拡大を議論
賃上げとリハ職|職能3団体が「10%以上引き上げ」を要望
2025年12月24日、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の職能3団体は厚生労働省記者クラブで共同記者会見を開催。疾患別リハビリテーション料の総合的な10%以上引き上げ、今後10年間での給与倍増を要望しました。
急性期一般病棟への多職種配置については、早期介入の重要性を認めつつも「療養上の世話との混同は不適切」として、法令に基づく役割整理を求めています。
この主張は、賃上げ議論と急性期リハ要件化の関係を理解する上で押さえておくべき視点です。
▶ リハ3団体が緊急記者会見──疾患別リハ料10%以上引き上げを要望
【番外編①】オンライン心大血管リハ|制度上の課題が整理される
2025年12月24日の中医協総会では、情報通信機器を用いた心大血管疾患リハビリテーションの保険適用も議題に上りました。
薬事承認を受けた遠隔心リハ支援プログラム医療機器「リモハブ CR U」の登場で期待が高まる一方、中医協資料では「情報通信機器を用いた場合の安全管理の規定は現時点で示されていない」と整理されています。診療側・支払側の双方から安全な運用体制についての懸念が示され、慎重な検討が続いています。
▶ オンライン心大血管リハビリ、2026年度改定での保険適用は「時期尚早」
【番外編②】介護報酬側で進む訪問リハの賃上げ
診療報酬とは別軸で、介護報酬側では処遇改善加算の対象拡大が進んでいます。
厚生労働省の「令和8年度介護報酬改定に関する審議報告(案)」によると、訪問リハビリテーションおよび介護予防訪問リハビリテーションが新たに処遇改善加算の対象となり、2026年6月施行が予定されています。これにより、訪問リハに従事するリハ職にも月額賃上げの道が開かれます。
まとめ|2026年度改定に向けた論点整理
見直しの方向で検討が進む論点
- 回復期リハの実績指数・重症基準の見直し
- 高齢者・認知症患者を不利に扱わない評価設計への転換
引き続き議論が続く論点
- 急性期リハの「発症3日以内・休日含む」要件化
- リハ提供単位数(6単位・9単位)の整理
- オンライン心大血管リハの保険適用
現場が今から意識すべきこと
- 休日対応を含めたリハ提供体制の構築
- 栄養・口腔との実装レベルの連携強化
- データ提出・アウトカム評価への備え
2026年度改定の詳細は、個別改定項目(いわゆる「短冊」)で明らかになります。本稿で整理した論点がどのような形で制度化されるか、引き続き注視が必要です。






