日本病院協議会(日病協)は第254回代表者会議の終了後に記者会見を開き、令和8年度(2026年度)診療報酬改定への総括と課題認識を示しました。急性期病院一般入院基本料A・Bの新設によって入院医療の機能分化が加速する中、地域包括医療病棟が制度上「包括期」として明確に位置づけられたことへの受け止めと、365日リハビリ提供体制におけるリハ職確保の困難さへの懸念が議論の核心となりました。PT・OT・STが働く包括期・慢性期の病棟を取り巻く環境が、今まさに動いています。
急性期病院A・Bの新設で入院医療が再編——包括医療病棟は「包括期」として確立
今回の改定で新設された急性期病院一般入院基本料A・Bと地域包括医療病棟の関係について、全日本病院協会会長の神野正博副議長は次のように総括しました。
「地域包括医療病棟は、いわゆる急性期の病棟ではなく、高齢者救急を中心とした包括期の病棟だということが、今回の改定でいよいよ明確になったのではないかと思います」
今回の改定では急性期病院一般入院基本料A(1,930点/日・看護7対1)とB(1,643点/日・同10対1)が正式に新設され、救急搬送件数や手術実績という病院単位の機能評価が施設基準に組み込まれました。従来の急性期一般入院料1〜6は廃止されず増点のうえ存続していますが、A・Bという上位区分の誕生により、入院料体系の役割分化は一段と明確になっています。
神野副議長は個人的見解として「将来的にDPC必須化によりA区分への収れんが進む可能性がある」との見方も示しました。なお、A・BともにDPC対象病院であることが施設基準として必須であり、令和10年度以降にA・B届出病院をDPC標準病院群1へ位置づける方向性が答申資料にも示されています。
看護必要度は「7ポイント引き上げ」でも実質は現状維持 地方では救急車取り合いの懸念も
重症度・医療看護必要度については、急性期一般入院料1の必要度Ⅱ基準が割合①で20%→27%(+7ポイント)、割合②で27%→34%(+7ポイント)へ引き上げられています。ただしこれはC項目への内科系評価の大幅追加や救急患者応需係数の新設によって患者該当割合が同程度上昇することを織り込んだ調整であり、実質的には現状維持に近い設計です。
一方で、救急搬送台数が評価指標に加わったことへの懸念が会議の中で議論を呼びました。全国自治体病院協議会会長の望月泉議長(ウェブ参加)は次のように語りました。
「地域では大体どの病院が急性期かわかっている。そこに救急車の台数という競争の仕組みを持ち込むと、不要な競争につながりかねない」
地方の代表者からは「救急車の取り合いが実際に始まっている」との報告も出たとされ、望月議長は「個人的には懸念している」と明言。都市部と地方の格差拡大への危機感が共有されました。
慢性期の評価は増点と基準引き上げの二面性 365日リハのスタッフ確保にも限界感
慢性期病院の現状について、会議では複数の代表者から厳しい声が上がりました。神野副議長によると、「医療区分2・3の加算が不十分だ」という意見が複数の団体から出たと言います。
実際の改定内容を見ると、療養病棟入院料1は1,964点→2,035点(+71点)と増点されており、医療区分の対象患者も拡大されています。その一方で、療養病棟入院基本料2の該当患者割合基準が5割→6割に引き上げられ、賃上げ未実施施設への減算規定も新設されました。増収が見込まれる施設がある一方、体制整備が追いつかない施設には確かに厳しい改定内容であり、現場の受け止めに差が生じています。
リハビリに関しては、回復期リハビリテーション病棟1〜4のすべてで土日・祝日を含む全日提供体制が施設基準として要件化された中、「今後リハ職の確保が非常に厳しい」という意見が出たことが報告されました。今回の改定ではSTの専従→専任要件緩和や「みなし単位」の導入など人員配置の柔軟化も講じられていますが、PT・OT・STの採用・定着が経営上の課題として認識されつつあることが改めて浮き彫りとなりました。
電子カルテ標準化は「段階的プロセス」 2028年度は完成ではなく本格フェーズの入り口
厚生労働省から電子カルテ標準化・クラウド化の普及促進についての説明がありました。神野副議長は「本当に2028年にできるのかという確証は得られなかった。正直なところ、様子眺めの状況」と率直に語りました。
政府の公式スケジュールとしては、2025年度中に標準仕様を策定し、2026年度以降に民間ベンダーが準拠製品を開発、大病院のシステム更改が集中する2028年度以降が本格的な実施フェーズとなる段階的なプロセスが想定されています。「2028年度に標準化が完了する」ものではなく、今まさにその土台づくりが進む段階にあります。生成AIや医療DXとの連携を先行すべきとの要望も会議内から出ており、リハビリ記録のデジタル化を検討する現場にとっても今後の動向が注目されます。
医師の裁量労働制は持ち帰り議論へ
政府内で検討が進む裁量労働制についても議題に上がりました。現時点では各病院団体で意見が割れているとして、「一度持ち帰り、各団体内で議論した上で次回以降に再協議する」という方針で一致しました。
裁量労働制を導入した場合、一般労働者に適用される年間720時間の上限規制の枠組みに入ることとなり、医師のA水準(960時間)より厳しくなるケースも想定されます。神野副議長は「現状では960時間の枠内で運用している病院が多く、裁量労働制の導入は現場にとって必ずしも有利ではない」との認識を示しました。
まとめ・今後の展望
第254回日病協代表者会議では、令和8年度診療報酬改定への各病棟区分の反応が出そろい、地域包括医療病棟の「包括期」としての制度的確立という方向性が改めて確認されました。急性期病院A・Bの新設による急性期機能の集約化が進む一方、リハ職の確保難という現場の実態も公式の場で言及されており、今後の人材政策論議との連動が注目されます。
次回代表者会議の日程・議題については現時点で公表されていません。医師の裁量労働制については、各病院団体の持ち帰り検討を経て次回以降に議論される予定です。令和8年度改定の正式な告示・通知は3月上旬に公布予定で、施行は2026年6月1日となっています。
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