これまで、転職に関わる情報として人材紹介システムや離職率などお伝えしてきました。この他、15年間の年収推移では非常に多くの反響をいただきました。
また、以前POSTにて行なった転職に関する意識調査として、「転職において決め手となるポイントは?」という設問では、全体の7割も給与が決め手であると回答していました。
ということで今回は「そもそも転職で年収って上がるの?」という部分に関してデータをみていきましょう。結論から申し上げると、転職者の約6割は「年収が変化しない、または減収となっている」ということが結果から読み取れます。具体的にみていきましょう。
*今回のデータは、PTOTSTに絞った内容ではありません。分野別ではなく、年代別のデータになります。
令和元年転職入職者の賃金変動状況別割合
以下は、令和元年度(上半期:令和元年7月9日から8月 26 日、下半期:令和2年1月8日から2月 26 日)の入職者および離職者の調査結果となります。
結果から、前職の賃金に比べ「増加」した割合は34.2%、 「減少」した割合は 35.9%、「変わらない」割合は 27.9%となっています。つまり、転職者の約6割は「年収が変化しない、または減収となっている」という結果です。
*増加と減少のそれぞれの基準は、前職と比べて1割以上増加した場合は、「増加」とし、1割以上減少した場合を「減少」とする。「変わらない」場合は、増加現象ともに1割未満の場合をいう。
この調査では、「前職を辞めた理由」も調査されており、男性は「その他の理由(出向等を含む)」 27.4%を除くと「定年・契約期間の満了」16.6%が最も多い結果となり、次いで「労働時間、休日等の労働条件 が悪かった」11.2%となっています。
女性の場合では「その他の理由(出向等を含む)」26.6%を除くと「職場の人間関係が好ましくなかった」14.8%が最も多く、次いで「労働時間、休日等の労働条件が悪かっ た」12.5%となっています。
男性における離職理由として、「定年・契約期間の満了」はなかなか時代を感じさせる結果となり、男女ともに共通として「労働時間、休日等の労働条件 が悪かった」という負の理由が全体の10%になっています。
それでは、昨年と比較してどう変わったのかを見ていきましょう。
平成30年転職入職者の賃金変動状況別割合
以下が平成30年度の結果となります。令和元年度と比べると、「増加」した割合は2.8ポイント減少し、「減少」した割合は1.7 ポイント上昇していることがわかります。
大きく変化している点として、20-29歳の「増加」した割合は平均して12.1ポイントも減少している点にあります。この辺りは、負の憶測もよぎりますが、「年収を下げてもチャレンジした人口」が増えたと仮説を立てることもできます。
この調査ではあくまでも、前職に比べての変動状況であり、その後の賃金が前職よりも減少し続けるというわけでもありません。事実、転職の時点では評価がないため前職を考慮した結果変わらない、ということは多いと思いますが、その後の評価によって大きく伸ばすことができることもあります。
転職は、転職当初の年収で見るよりも、その後の伸び率も考慮した上で、選択する必要がありそうです。
転職後の年収伸び率を見極める方法は?
決まったフォーマットがあるわけではありませんので、確認すべき事項に関して列挙しておきたいと思います。当然、これらの結果が間接的に昇給へ結びつくので、総合判断するしかありません。
昇給:基本給に対する増加ですので、賞与にも関わります。
賞与:3ヶ月と4ヶ月では大きく賞与が変わります。
人事評価制度:人事評価が四半期ごと、1年に一度など時期も含め確認しましょう。同時にキャリアラダーの確認も。
離職率:これと同時に、年代割合も知っておきましょう。
店舗開拓:これはデイサービスや訪問看護ステーションに限りますが、店舗が増えればそれだけ役職が増えるので、キャリアアップのチャンスは多いです。
上記が全てではありませんが、参考程度に知っておきたいところです。しかし、これらの内容を面接の段階で聞くのはあまりオススメいたしません。また、職場に聞くタイミングは非常に難しいので、転職サポートをしてくれるキャリアコンサルタントがいると年収の交渉含めメリットが多いと思います。
まとめ
今回「転職で年収は上がるのか?」について、データを交えた結果をお伝えしました。結論からいうと、増加するのは全体の4割程度ということです。これはあくまでも、現時点の増減が結果として上記結果なのであって、これから先、前職に比べて年収が下がったのか?というのは別問題となります。
しかし、今回の結果から言えることは、以前POSTで行なった「転職意識調査」の結果と合わせると、「求めること」と「現実の行動」には差がある可能性があります。
POSTのアンケートでは、「給与」項目が転職において7割もの人が重要視しているにも関わらず、転職によって年収が上がる割合は、4割程度となっています。
アンケートの内容として、「給与」項目があれば当然のように選択してしまうという、構造にも問題があったかと思います。しかし、転職本来の目的とそれに伴う行動の乖離は非常に問題となります。
ぜひ今一度、「自分が仕事に求める条件」を具体的に考えてみる時間を設けてみてはいかがでしょうか。もし自分だけでは考えが及ばない場合、POSTのキャリアコンサルタントがサポートしますので、一度お問い合わせください。
次回以降も、私個人の転職経験、転職相談経験を踏まえて「PTOTSTの転職」についてお伝えしていきたいと思います。私個人へのご質問等は、プロフィール欄にあります、TwitterよりDMでご相談ください。
参考資料
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/9-23-1c.html
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