骨盤底筋群は3層構造
骨盤底筋群は表層・中間層・深層の3層構造となっています。以下の図をごらんください。ビジュアルで確認していきましょう。
■表層:括約筋群、勃起筋
■中間層:尿生殖隔膜
■深層:骨盤隔膜(肛門挙筋、尾骨筋)
深層にある肛門挙筋はさらに、 ・恥骨直腸筋(画像 ①)、恥骨尾骨筋(画像②) 、腸骨尾骨筋(画像③) の3つの筋群から構成されています。以下に起始停止、支配神経をあげます。
①恥骨直腸筋
起始:恥骨結合の両側の恥骨上枝 停止:肛門直腸結合をぐるりと取り巻き、外肛門括約筋の深部と絡み合っている 神経支配:陰部神経S2-S4
②恥骨尾骨筋
起始:恥骨(恥骨直腸筋の起始の外側) 停止:肛門尾骨靭帯、尾骨 神経支配:陰部神経S2-S4
③腸骨尾骨筋
起始:内閉鎖筋筋膜(および肛門挙筋)の腱様弓 停止:腸骨尾骨筋縫線、尾骨 骨盤隔膜の作用:骨盤内臓の位置の保持 神経支配:陰部神経S2-S4
肛門挙筋の働きと役割
深層にある肛門挙筋について詳しく解説していきたいと思います。 肛門挙筋全体の持続的な緊張保持により尿生殖裂孔が閉鎖し、骨場内臓器支持・排泄の禁制維持を行います。 恥骨尾骨筋と腸骨尾骨筋は、肛門の後方で癒合して挙筋板を形成します。
恥骨尾骨筋と腸骨尾骨筋の正常な走行はほぼ水平で、直腸と膣の上方2/3を挙筋板状に保持し、腹圧が直接筋膜や靭帯などの支持組織にかからないように保っています。
恥骨直腸筋は排便の抑制に働き、外肛門括約筋を助けて、肛門を閉じた状態に保ちます。 この筋は、恥骨結節の両側の恥骨上枝から起こり、後方に向かい尿生殖器と消化器の管を過ぎて、直腸をぐるりと取り巻くように走り、そこで筋線維が外肛門括約筋の深部と絡み合います。
肛門は漏斗状の肛門挙筋の収縮によって引き上げられ、恥骨直腸筋の収縮によって直腸壁は前方、つまり恥骨方向に引っ張られ、それにより肛門直腸角(直腸と肛門の間の屈曲)が鋭角になるため、肛門管が閉鎖されます。
腸骨尾骨筋は、内閉鎖筋筋膜や尾骨に付着しています。尾骨筋の力を借りて、尾骨を身体の中にしまい込む(動物が尻尾を脚の間に入れるような動作)ことが可能です。 内閉鎖筋筋膜と連結していることから、股関節と骨盤底筋群の働きは密接であることがわかります。
腸骨尾骨筋などの筋緊張が高い状態では、股関節の動きも円滑に出ないように感じることもあります。 肛門挙筋だけに限りませんが、筋肉は収縮と弛緩があって初めて本来の機能を発揮することができます。
肛門挙筋においては、弛緩しすぎていた場合、肛門管が十分に閉鎖されずに失禁をしてしまう可能性があります。 反対に、常に収縮していて緊張が高くなっている場合は、筋肉がゆるめられずに便秘になってしまったり、排便の際の過度な息みにつながります。
また、股関節の動きに制限がかかってしまうことや、妊婦さんであれば尾骨が身体の中心方向にしまい込まれている状態では、十分な産道を確保することが出来ません。 そのため、緩ませることと、収縮させること両方が必要なのです。
呼吸を利用した調整法
・楽な姿勢で息を吸った際に、骨盤底にある扇形の筋肉(肛門挙筋)を意識し、その扇が広がるところをイメージします。(緩ませる) ・息を吐く際には、その扇が上に引きあがりながら閉じていくのをイメージします。(収縮させる)
※この時、頭のてっぺんに向かって息を吐くようにしましょう。 ※一生懸命行いすぎると、他の大きな筋肉が働いてしまうため、あまり力を込めすぎずに行うことが大切です。 イメージしにくければ…
四つ這いの姿勢から、股関節の位置は変えずに肘を床に着きます。
その状態で上記の呼吸運動を行ってみてください。内臓が頭部方向へ移動するため、骨盤底への圧が減少し、動きがイメージしやすくなると思います。 正しく行えていたら、呼吸に伴って尾骨が動くのが感じられるはずです。
ぜひ試してみてくださいね。
PTOTが学ぶ筋肉まとめ【イラスト付き】
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下肢
頸部
体幹
参考文献
病気がみえる 〈vol.9〉 婦人科・乳腺外科 (編)医療情報科学研究所