体幹と骨盤の評価と運動療法
体幹と骨盤は、あらゆる運動機能の基盤となる部位であり、リハビリテーション職も関心の高い部位であろう。本著では端座位でのリーチ動作における股関節周囲筋や腹部の筋肉の活動を、筋電図積分値や組織硬度を測定しアカデミックに解説されている。
著者である鈴木俊明先生は、関西医療大学の教授で神経疾患の理学療法や、経穴刺激理学療法を専門にされている。
以前、鈴木先生の講習会を受けた際に「座位を取るだけなら、腹筋はほとんど不要。背筋だけが必要である。」と話していたのがとても印象に残っている。これは、最長筋・多裂筋などの背面の筋がうまく働いていれば、安定した座位が取れるということである。
本著には、研究だけではなく臨床を積み重ねてきた先生だからこその知見が多く示されている。
神経難病リハビリテーション100の叡智
パーキンソン病・脊髄小脳変性症・筋萎縮性側索硬化症・多系統萎縮症・多発性硬化症…
神経難病は根治困難なケースが多く、病気が進むにつれて、様々な症状を呈する為、常に変化していく状態に合わせて、介入する必要がある。
「パーキンソン病の筋力増強訓練の負荷量の目安は?」、「脊髄小脳変性症の住宅環境調整のポイントは?」、「筋萎縮性硬化症の排痰ケアのコツは?」といった神経難病リハの「なぜ」「どうして」が解決でき、明日の臨床から使える実践的な内容になっている。
疾患の進行状況に合わせた介入方法や、科学的根拠を臨床に応用する方法、また科学的根拠が確立されていない状況で、どのような創意工夫をしながら治療展開を行っているのかが示されている。
疾患別リハビリテーションリスク管理マニュアル
看護士や医師はどちらかと言うと「守りの医療」であるが、理学療法士や作業療法士は「攻めの医療」であると思う。状態が悪い人を良くするために、常に何らかのリスクと隣り合わせにある。
評価や治療にどうしても興味が行きがちだと思うが、そのベースとして担当患者さんがどういったリスクがあるか頭に入れておくことが、とても大切だと思う。知っていてなお攻めるのかと、知らないで攻めるのかは大きく意味が違ってくるし、何か起きてしまった時にも対処のスピードが変わってくる。
今回の聖マリの新著は、脳血管障害や呼吸器疾患、循環器疾患といった高齢者リハビリに携わっている専門職が知っておきたい疾患別のリスク管理が書かれている。
林典雄の運動器疾患の機能運動解剖学に基づく評価と解釈
整形外科リハビリテーション学会の名誉会員である林典雄先生の新著。林先生が執筆している関節機能解剖学に基づく 整形外科運動療法ナビゲーションや、運動療法のための 機能解剖学的触診技術 下肢・体幹といったベストセラー書籍は、一度は手にした方があるのではないだろうか。
林先生は触診技術、画像診断、整形外科テストを駆使しながら明確に病態を解釈し臨床を展開していくため、その臨床推論は若手療法士にとっても納得できる理解しやすいものだ。
また今回の書籍は、可愛いイラストが特徴的でコミカルに分かりやすく解説されている。
コミュニケーションを学ぶ -ひとの共生の生物学-
リハビリテーション脳科学の研究・教育の第一人者として知られている畿央大学の森岡周先生の新著。"ヒト"を理解するのが好きなリハビリテーション職にはたまらないシリーズの最新作。
人間は、なぜこんなにおしゃべりなのか!
脳の進化、人と社会、、、
これからのコミュニケーション理解に必要な、新しい知識と視点をコンパクトに解説。
(中略)
本書は、人間とその社会との成り立ちをコミュニケーションという観点から解説。さらに従来のコミュニケーション理解から一歩進み、人間の脳機能の進化が飛躍的に発達させた人間行動の特徴としてコミュニケーションを捉え直し、そのオートポイエティックな働きとして人間の意識や社会づくりについても解説しています。
6月11日発売予定。すでにAmazonでは予約受付開始している。
肩関節痛・頚部痛のリハビリテーション
著者の村木孝行先生は東北大学病院の理学療法士で、屍体(亡くなられた人の体)の肩を用いた研究やバイオメカニクスの研究などをされている。
目次を見ると、肩関節痛・頸部痛のケーススタディとして、「回旋可動域制限は軽度だが上肢挙上が著しく制限される腱板断裂例」や「重度な可動域制限を伴う拘縮完成期の肩関節周囲炎例」といった臨床で遭遇しそうな方への「こんなときどうする?」といった疑問に対する方法が示されている。
こちらもまだ発売前の書籍で、5月31日に発売予定だ。
臨床動作分析ーPT・OTの実践に役立つ理論と技術
POSTの歴代インタビューの中でも、多くの方に読まれている冨田先生や玉垣先生が編集に携わっている書籍。
本著の序文には、冨田先生のこの本にかける想いが書かれている。
基本概念は、〝治す“ではなく、〝運動学習"。
1生態心理学の知見、2動作や神経系の階層構造、3臨床を融合させた、最新のリハ技術生態心理学的な考え方の導入で、われわれのアプローチは患者を〝セラピストが治す″という考えから、患者が能動的に活動して自分の身体を知り、環境を探索して知覚することで環境に適応した動作の仕方を見つけ出すことを誘導・援助する、つまり、〝動作の学習を支援する"という方向に大きく転換した。しかも、生態心理学的な考えの導入により、意識した認知的な動作の学習だけではなく、意識できない無自覚なレベルでの運動や動作の学習の必要性も明確に捉えることができた(略)。
臨床における動作分析で悩む逆手療法士に読んでいただきたい一冊だ。
脳卒中の動作分析:臨床推論から治療アプローチまで
動作分析関連でもう一冊。こちらは作業療法士の資格を持ちながら、ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」を運営している金子唯史先生の書籍。特に上肢の動作全般に関して分かりやすく書籍はなかなか少ないのではないかと思う。
金子さん @thinkable77 渾身の書籍。動作分析について、豊富なイラストと、膨大な参考文献の情報が詰まってます。僕は運動学と運動学実習のサブテキストとして指定しようかなと思います。PTの方にもオススメですね。あ、学生が考察書いたりするのにもいいかも pic.twitter.com/TtcFF99m4w
— 友利幸之介 (@miyakosoba) 2018年5月17日
なお、現在、Amazonの医学・薬学・看護学・歯科学ランキングでも15位とランクインされている。